2025年6月6日、国際競馬カレンダーにおいて特筆すべき一日となりました。英国と米国で、格式高いG1レースが立て続けに開催され、世界中の競馬ファンを魅了しました。3歳クラシック戦線から古馬のチャンピオン決定戦、そして牝馬限定の専門レースに至るまで、芝・ダートを問わず、多岐にわたる挑戦が繰り広げられました。エプソム競馬場の「Good to Soft(やや重)」の芝、そしてサラトガ競馬場のにわか雨に見舞われた「Yielding(稍重)」の芝と「Sloppy(不良)」のダートという馬場状態は、各レースに更なる複雑さをもたらし、ドラマを演出しました。この日、圧巻のパフォーマンスを見せた馬、その血統背景に注目が集まる馬、そして輝かしい未来を予感させる馬たちがターフを駆け抜けました。特に、ライアン・ムーア騎手とエイダン・オブライエン調教師のコンビによるエプソムでのダブルG1制覇、ジョン・ヴェラスケス騎手とディラン・デービス騎手がそれぞれサラトガで複数のG1を制すなど、特定の騎手や調教師の卓越した手腕が光る一日ともなりました。天候と馬場状態がレース結果に影響を与える場面も見られ、実力馬の苦戦や、馬場巧者の台頭など、見応えのある展開が多く見られました。
オークス(G1)エプソム:ミニーホーク、牝馬クラシックの頂点に輝く
レース概要
オークスステークスは、エプソムダウンズ競馬場の1マイル4ハロン6ヤード(約2420メートル)という過酷なコースで3歳牝馬の能力を試す、英国競馬における最高峰のクラシックレースの一つです 。1779年に創設され、英国クラシックレースの中で2番目に古い歴史を持ち、「オークスの館」というダービー伯爵の所有した地所にその名が由来します 。2025年6月6日に行われたレースは9頭立て、1着賞金32万5033ポンド、馬場状態は「Good to Soft」でした。
優勝馬:ミニーホーク (Minnie Hauk)
- 血統背景 ミニーホーク(Minnie Hauk IRE)は、2022年4月13日生まれの鹿毛の牝馬です 。父は歴史的名馬であり、種牡馬としても絶大な成功を収めているフランケル (Frankel GB)。その父ガリレオ譲りの競走能力とスタミナを産駒に伝えることで知られています 。母はマルティリンガル (Multilingual GB)、その父は一流種牡馬でありブルードメアサイアーとしても実績の高い**ダンシリ (Dansili GB)**です 。フランケルとダンシリ牝馬の配合は、クラシックディスタンスでの活躍が期待される強力な組み合わせと言えるでしょう。生産者はB Vサングスター氏 、馬主はデリック・スミス氏、ジョン・マグニア夫人、マイケル・テイバー氏というクールモアグループの主要メンバーであり 、管理するのは名伯楽エイダン・オブライエン調教師です 。この勝利は、クールモアの長年にわたる成功した生産・競馬事業の証であり、フランケルという卓越した血統の価値を改めて示すものとなりました。
- レース展開 ライアン・ムーア騎手騎乗のミニーホークは、2分38秒91のタイムで優勝。単勝オッズは5.5倍でした。同じエイダン・オブライエン厩舎のワール (Whirl) をクビ差で抑え、単勝2.1倍の1番人気に支持されたデザートフラワー (Desert Flower) はさらに4馬身遅れた3着でした。レース後のレーシングポスト紙の評価では、本馬の公式レーティング100に対し、この勝利で118のレーシングポストレーティング(RPR)を獲得しています 。ムーア騎手はレース後、「ワールを楽にかわせたが、先頭に立ってからは少し若さを見せて内にモタれた」とコメントしており、経験を積むことで更なる成長が見込めることを示唆しています 。オブライエン調教師も、チェスターオークスからの著しい成長を称賛しました 。オブライエン厩舎のワンツーフィニッシュという結果、そしてワールがレースのペースを作ったことは 、強力な厩舎ならではの戦術的な深みを感じさせます。確実なペースでレースが進んだことが、スタミナ豊富なミニーホークのような馬にとって有利に働いた可能性があります。
- 今後の展望 ミニーホークの今後のローテーションには、非常に意欲的なプランが組まれています 。
- 6月13日:コーク競馬場、ダーレームンスターオークスステークス (G3)、1マイル4ハロン
- 6月28日:カラ競馬場、パディパワープリティポリーステークス (G1)、1マイル2ハロン
- 7月18日:カラ競馬場、ジャドモントアイリッシュオークス (G1)、1マイル4ハロン(エプソムオークス馬にとって最も有力な次走)
- 9月13日:レパーズタウン競馬場、ロイヤルバーレーンアイリッシュチャンピオンステークス (G1)、1マイル2ハロン
- 9月14日:カラ競馬場、カマーグループインターナショナルアイリッシュセントレジャー (G1)、1マイル6ハロン オブライエン調教師は「ゴール前でもよく伸びていたし、古馬と対戦する時が来ても問題なく対応できるだろう」と語っており 、これらのビッグレースへの挑戦を後押ししています。
オークス(G1)- 上位3頭
着順 | 馬名 | 騎手 | 着差(馬身) | 単勝倍率 |
---|---|---|---|---|
1着 | Minnie Hauk | R・ムーア | 5.5 | |
2着 | Whirl | W・ローダン | クビ | 8.5 |
3着 | Desert Flower | W・ビュイック | 4 | 2.1 |
コロネーションカップ(G1)エプソム:ヤンブリューゲル、激戦を制す
レース概要
コロネーションカップは、エプソムダービーと同じ1マイル4ハロン6ヤードのコースで行われる4歳以上の古馬にとって重要なG1レースです 。1902年にエドワード7世国王の戴冠を記念して創設された歴史ある一戦です 。2025年6月6日のレースは7頭立て、1着賞金25万5195ポンド、馬場状態は「Good to Soft」でした。
優勝馬:ヤンブリューゲル (Jan Brueghel)
- 血統背景 ヤンブリューゲル(Jan Brueghel IRE)は、2021年5月7日生まれの4歳牡馬です 。父は近代競馬における最も影響力のある種牡馬の一頭で、スタミナとクラスを伝えるガリレオ (Galileo IRE)。その父はサドラーズウェルズです 。母はデヴォーテッドトゥユー (Devoted To You IRE)、その父は種牡馬・ブルードメアサイアーとして大成功を収めているデインヒルダンサー (Danehill Dancer IRE) です 。ガリレオとデインヒルダンサー牝馬の配合は、数々の成功例があるニックスとして知られています。馬主はウェスターバーグ、マグニア夫人、テイバー氏、スミス氏の共同所有で 、エイダン・オブライエン調教師が管理しています 。この勝利は、ガリレオ産駒が中長距離G1で依然として支配的な力を持つことを改めて証明しました。
- レース展開 ヤンブリューゲルもライアン・ムーア騎手が手綱を取り、2分36秒13のタイムで優勝。単勝オッズは4.3倍でした。1.6倍の圧倒的1番人気カランダガン (Calandagan) を半馬身差で退け、ジャヴェロット (Giavellotto) がさらに7馬身離れた3着に入りました。この勝利は、高く評価されていたライバルに対する大きな勝利と言えるでしょう。昨年のセントレジャーステークス(G1)の覇者であり、本レースでは同厩舎のコンティニュアス (Continuous) が作った確実なペースの恩恵も受けました 。ヤンブリューゲルはコンティニュアスとエインシャントウィズダム (Ancient Wisdom) を残り2ハロン地点で交わして先頭に立ち、最終ハロンでカランダガンの猛追を受け、一時は前に出られましたが、ゴール前で差し返しました 。ムーア騎手の騎乗はオブライエン調教師から称賛され 、調教師は前走について「レースを使う必要があった」と述べ、ヤンブリューゲルを「非常に良い馬」と評価しています 。2024年のメルボルンカップ(G1)では獣医検査不合格で無念の除外となった経緯がありましたが 、このコロネーションカップ制覇は、その失望を乗り越え、彼が欧州のトップクラス中長距離馬であることを再確認させるものでした。オブライエン調教師は「昨年のメルボルンカップでは、彼が一番の確実な馬だと考えていた。斤量も軽く、未知の魅力があった」と当時を振り返っています 。
- 今後の展望 ヤンブリューゲルの次走としては、ロイヤルアスコット開催の同距離G2ハードウィックステークスが有力視されています 。さらに、アイリッシュセントレジャー (G1) や凱旋門賞 (G1) にも登録があり 、彼の能力に見合う最高峰のレースが目標となるでしょう。
コロネーションカップ(G1)- 上位3頭
着順 | 馬名 | 騎手 | 着差(馬身) | 単勝倍率 |
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1着 | Jan Brueghel(ヤンブリューゲル) | R・ムーア | 4.3 | |
2着 | Calandagan(カランダガン) | M・バルザローナ | 0.5 | 1.6 |
3着 | Giavellotto(ジャヴェロット) | O・マーフィー | 7 | 6.5 |
ニューヨークステークス(G1)サラトガ:シーフィールズプリティ、稍重馬場を克服
レース概要
ニューヨークステークスは、サラトガ競馬場の芝9.5ハロン(約1900メートル)で行われる古馬牝馬限定のG1レースです 。1940年に創設され、その歴史の中で様々な距離や馬場で施行されてきました 。2025年6月6日のレースは7頭立て、1着賞金41万2500ドル、馬場状態はにわか雨の影響で「Yielding(稍重)」でした。
優勝馬:シーフィールズプリティ (She Feels Pretty)
- 血統背景 シーフィールズプリティ(She Feels Pretty USA)は、2021年3月12日生まれの4歳栗毛の牝馬です 。父は芝G1ブリーダーズカップマイルの勝ち馬であるカラコンティ (Karakontie JPN)(父バーンスタイン) 。母はサマースウィート (Summer Sweet USA)、その父は国際的に活躍馬を輩出するモアザンレディ (More Than Ready USA) です 。生産者はペイソンスタッド社(ケンタッキー州)、馬主はラエルステーブルズ、管理するのはシェリー・ドゥヴォー調教師です 。
- レース展開 ジョン・ヴェラスケス騎手騎乗のシーフィールズプリティは、2分0秒76のタイムで優勝。単勝1.5倍の圧倒的な支持に応えました。エディクト (Edict) が作ったペースを追走し、第2コーナーで外から進出、直線ではビーチボム (Beach Bomb) との叩き合いを半馬身差で制しました 。これで4連勝、G1は4勝目となります。特筆すべきは、ブリンカー着用後4戦無敗という点です 。ドゥヴォー調教師は、レイクプラシッドSでの僅差負けの後にブリンカーを装着し、それ以来負け知らずだと述べています 。5.5ハロンから1マイル1/4まで幅広い距離での勝利実績があり、その万能性も際立っています 。ヴェラスケス騎手はこの日4勝を挙げる活躍を見せました 。ドゥヴォー調教師は、稍重の馬場は本馬にとってベストではなかったものの、プロフェッショナルな走りで克服したと語っています 。
- 今後の展望 シェリー・ドゥヴォー調教師は、次走として7月12日にサラトガ競馬場で行われるG1レース、賞金50万ドルのダンキンダイアナステークス(9ハロン)を目標にしていると明言しています 。「それが常に彼女の計画でした。このレース後も状態が良ければ、それが次のターゲットになるでしょう」と述べています。
ニューヨークステークス(G1)- 上位3頭
着順 | 馬名 | 騎手 | 着差(馬身) | 単勝倍率 |
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1着 | She Feels Pretty(シーフィールズプリティ) | J・ヴェラスケス | 1.5 | |
2着 | Beach Bomb(ビーチボム) | L・サエス | 0.5 | 18.1 |
3着 | Bellezza(ベレーザ) | F・プラ | 4 | 7.5 |
ジャストアゲームステークス(G1)サラトガ:ダイナミックプライシング、チャド・ブラウン厩舎に栄冠
レース概要
ジャストアゲームステークスは、1980年のアメリカ最優秀芝牝馬に選ばれたジャストアゲームの名を冠した、サラトガ競馬場の芝1マイルで行われる古馬牝馬限定のG1レースです 。1992年に創設され、2008年にG1へ昇格しました 。2025年6月6日のレースは9頭立て、1着賞金27万5000ドル、馬場状態はにわか雨により「Yielding(稍重)」でした。
優勝馬:ダイナミックプライシング (Dynamic Pricing)
- 血統背景 ダイナミックプライシング(Dynamic Pricing IRE)は、2021年3月28日生まれの4歳鹿毛の牝馬です 。父はクラシックウィナー(英2000ギニー)で種牡馬としても成功しているナイトオブサンダー (Night of Thunder IRE)(父ドバウィ) 。母はシェムダ (Shemda IRE)、その父は堅実な種牡馬ダッチアート (Dutch Art GB) です 。アイルランドのエポナブラッドストック社の生産馬で、馬主はクララヴィッチステーブルズ社、管理するのはチャド・ブラウン調教師です 。
- レース展開 ディラン・デービス騎手騎乗のダイナミックプライシングは、1分38秒77のタイムで優勝。単勝11.0倍と、比較的評価の低い中での勝利でした。2.6倍の人気を集めたエクセレントトゥルース (Excellent Truth) を3/4馬身差で抑え、スペシャルワン (Special Wan) がさらに1馬身遅れて3着に入りました。この勝利は、チャド・ブラウン調教師にとってジャストアゲームステークス通算8勝目(過去9回で8勝、あるいは過去8回で7勝という驚異的な記録)という、特定のレースにおける類稀なる強さを示すものとなりました 。本馬は前走のG3ボーゲイステークスを5月4日に勝利しており 、そのレースでは10頭立ての外枠から柔軟なレース運びを見せていました 。このレースには、ジェニーワイリーステークスでショワシャ(本レース9着)に敗れたエクセレントトゥルースや、同レースに出走していたケホービーチ(本レース4着)も顔を揃えており 、ダイナミックプライシングは評価の高い馬たちを相手に雪辱を果たした形となりました。
- 今後の展望 チャド・ブラウン調教師は、ダイナミックプライシングもまた、7月12日にサラトガ競馬場で行われる9ハロンのG1レース、賞金50万ドルのダンキンダイアナステークスを目標にする可能性があることを示唆しています 。実現すれば、同厩舎のシーフィールズプリティとの対決、あるいはニューヨークステークス組の有力馬との顔合わせとなるかもしれません。ブラウン調教師は「それは更なる大きなステップになるだろう」と述べています。
ジャストアゲームステークス(G1)- 上位3頭
着順 | 馬名 | 騎手 | 着差(馬身) | 単勝倍率 |
---|---|---|---|---|
1着 | Dynamic Pricing(ダイナミックプライシング) | D・デーヴィス | 11.0 | |
2着 | Excellent Truth(エクセレントトゥルース) | F・プラ | 0.75 | 2.6 |
3着 | Special Wan(スペシャルワン) | J・ロザリオ | 1 | 6.6 |
エイコーンステークス(G1)サラトガ:ラカーラ、不良馬場を逃げ切り圧勝
レース概要
エイコーンステークスは、3歳牝馬にとって歴史あるG1レースで、伝統的に1マイルのダート戦として知られていますが、2025年はサラトガ競馬場の9ハロン(約1800メートル)で施行されました。「トリプルティアラ」の初戦としても位置づけられています 。1931年に創設され、近年距離変更が見られます 。2025年6月6日のレースは6頭立て、1着賞金27万5000ドル、馬場状態はにわか雨の影響で「Sloppy(不良)」でした。
優勝馬:ラカーラ (La Cara)
- 血統背景 ラカーラ(La Cara USA)は、2022年2月13日生まれの3歳鹿毛の牝馬です 。父はケンタッキーダービー馬で種牡馬としても成功しているストリートセンス (Street Sense USA)(父ストリートクライ) 。母はカーラカテリーナ (Cara Caterina USA)、その父はプリークネスステークス勝ち馬で最優秀3歳牡馬にも輝いたトップサイアーのバナディーニ (Bernardini USA) です 。母カーラカテリーナはG1馬トゥーオナーアンドサーヴやアンジェラルネの全妹であり 、アメリカのクラシックダート血統が色濃く出ています。生産者兼馬主はトレイシー・ファーマー氏、管理するのはマーク・キャス調教師です 。ファーマー氏が自家生産馬でG1を制覇し、さらに本馬の全弟(1歳)への期待を語るなど 、自身の生産プログラムの成功を示す勝利となりました。
- レース展開 ディラン・デービス騎手騎乗のラカーラは、1分49秒20のタイムで優勝。単勝オッズは8.7倍でした。ルックフォワード (Look Forward) に3馬身差をつけ、スコティッシュラッシー (Scottish Lassie) がさらにクビ差の3着。ケンタッキーオークス馬で単勝1.3倍の断然人気だったグッドチア (Good Cheer) は5着に敗れました。レースは、ラカーラが持ち前の「圧倒的な先行力」を活かし、3番枠から先手を取ると、前半4ハロンを47秒08、6ハロンを1分10秒74というラップを刻み、直線で後続を突き放しました 。これはアッシュランドステークス(G1)に続く、春2度目のG1制覇となりました 。キャス調教師とデービス騎手は、先行策がプラン通りだったことを認めています 。不良馬場が大きく影響し、グッドチアのブラッド・コックス調教師は「馬場に苦しんだのかもしれない」とコメントしています 。この結果は、ケンタッキーオークス(ラカーラ9着、グッドチア1着)とは大きく異なるもので、馬場状態が着順を左右したことを示唆しています 。不良馬場での逃げ切りは、しばしば見られるように、先頭を行く馬がキックバックを避けられ、馬場を味方につける典型的な例となりました。
- 今後の展望 エイコーンステークス後の具体的な次走は明言されていませんが、ダートG1を2勝している3歳牝馬として、サラトガで開催されるコーチングクラブアメリカンオークス(G1)やアラバマステークス(G1)といった、「トリプルティアラ」を構成する伝統的な路線が有力な目標となるでしょう 。
エイコーンステークス(G1)- 上位3頭
着順 | 馬名 | 騎手 | 着差(馬身) | 単勝倍率 |
---|---|---|---|---|
1着 | La Cara(ラカーラ) | D・デーヴィス | 8.7 | |
2着 | Look Forward(ルックフォワード) | U・リスポリ | 3 | 13.9 |
3着 | Scottish Lassie(スコティッシュラッシー) | I・オルティスJr | クビ | 10.4 |
オグデンフィップスステークス(G1)サラトガ:ドースヴェイダー、不良馬場で復活のV
レース概要
オグデンフィップスステークスは、著名な馬主兼生産者であったオグデン・フィップス氏の名を冠した、古馬牝馬限定のダートG1レースです。2025年はサラトガ競馬場の9ハロン(約1800メートル)で施行されました 。元々はヘンプステッドハンデキャップとして知られ、2002年に改名、1984年からはG1に格付けされています 。以前はベルモントパークで1マイル1/16の距離で行われていました。2025年6月6日のレースは6頭立て、1着賞金27万5000ドル、馬場状態はにわか雨により「Sloppy(不良)」でした。
優勝馬:ドースヴェイダー (Dorth Vader)
- 血統背景 ドースヴェイダー(Dorth Vader USA)は、2020年3月23日生まれの5歳黒鹿毛(または青鹿毛)の牝馬です 。父はG1勝ち馬のガーヴィン (Girvin USA)(父テイルオブエカティ) 。母はハードコアキャンディ (Hardcore Candy USA)、その父はヨナグスカ (Yonaguska USA) です 。生産者兼馬主はジョン・ロープス氏、管理するのはジョージウィーヴァー調教師です 。本馬の勝利は、比較的若い種牡馬であるガーヴィンにとって、産駒のG1制覇という重要な実績となりました。
- レース展開 ジョン・ヴェラスケス騎手騎乗のドースヴェイダーは、1分49秒10のタイムで優勝。単勝9.8倍の伏兵評価を覆しました。ダズリングムーヴ (Dazzling Move) を4.75馬身差で圧倒し、2.1倍の1番人気レイジングシー (Raging Sea) はさらに1.75馬身遅れた3着でした。レスリーズローズ (Leslie’s Rose) は競走を中止しました。レースは、ダズリングムーヴが前半4ハロンを46秒41、6ハロンを1分10秒14で逃げる展開を、ドースヴェイダーは追走。ヴェラスケス騎手は直線入り口で外に持ち出すと、不良馬場をものともしない力強い末脚を披露しました 。これは2023年3月のG2ダヴォナデールステークス以来、8戦ぶりの勝利となりました 。ウィーヴァー調教師は「歳を重ねるごとに良くなっている」と述べ、今年ブリンカーを外したことが好結果に繋がったと分析しています 。ヴェラスケス騎手も「(不良馬場を)非常によくこなしていた」とコメントしており 、道悪適性の高さを示しました。この長いトンネルを抜けた勝利は、陣営の忍耐と的確な調整の賜物と言えるでしょう。
- 今後の展望 ジョージウィーヴァー調教師は、次走については時間をかけて検討するとしています 。サラトガでのローカルオプションとしては、7月18日のG2シュヴィーハンデキャップ(賞金20万ドル)や、8月23日のG1パーソナルエンスンステークス(賞金50万ドル、ブリーダーズカップディスタフの「Win and You’re In」対象レース)が挙げられています 。
オグデンフィップスステークス(G1)- 上位3頭
着順 | 馬名 | 騎手 | 着差(馬身) | 単勝倍率 |
---|---|---|---|---|
1着 | Dorth Vader(ドースヴェイダー) | J・ヴェラスケス | 9.8 | |
2着 | Dazzling Move(ダズリングムーヴ) | J・オルティス | 4.75 | 13.5 |
3着 | Raging Sea(レイジングシー) | F・プラ | 1.75 | 2.1 |
結論:記憶に残るパフォーマンスと注目すべきスターホースたち
2025年6月6日は、国際競馬界にとって記憶に残る一日となりました。エプソムとサラトガを舞台に繰り広げられたG1レースは、エイダン・オブライエン調教師とライアン・ムーア騎手のコンビによるエプソムでのG1ダブル制覇、ジョン・ヴェラスケス騎手とディラン・デービス騎手がそれぞれサラトガで複数のG1タイトルを獲得、そしてチャド・ブラウン調教師のジャストアゲームステークスにおける圧倒的な強さなど、特定のホースマンたちの卓越した手腕が際立ちました。
馬場状態もレース結果に大きな影響を与え、いくつかのレースでは人気馬が敗れる波乱も見られましたが、一方で悪条件を克服してその実力を証明した馬もいました。フランケル、ガリレオ、カラコンティ、ナイトオブサンダー、ストリートセンス、ガーヴィンといった一流種牡馬たちの産駒がG1を制覇し、その血統の質の高さが改めて示されました。
この日勝利を収めた馬たちの今後の活躍から目が離せません。ミニーホークはアイリッシュオークス、シーフィールズプリティとダイナミックプライシングはダイアナステークス、ドースヴェイダーはパーソナルエンスンステークス、そしてヤンブリューゲルはハードウィックステークスや凱旋門賞といった大舞台での活躍が期待されます。特にパーソナルエンスンステークスのような「Win and You’re In」対象レースは、年末のブリーダーズカップへの道を切り開く重要な一戦となり、各馬のローテーションに大きな影響を与えるでしょう。
この一日の出来事は、ヨーロッパ血統の馬がアメリカで活躍し(ダイナミックプライシング)、アメリカ血統の馬がその強さを示すなど、トップクラスの競馬がいかにグローバルなスポーツであるかを浮き彫りにしました。クールモア、ゴドルフィン、クララヴィッチステーブルズといった国際的な馬主組織が世界の舞台で競い合う姿は、競馬の醍醐味の一つと言えるでしょう。今後も続く国際競馬シーズンにおいて、この日誕生した、あるいはその地位を再確認したスターホースたちの走りに注目が集まります。
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