新しく整備された日本のダート三冠競走ですが、そのトップを争うはずだった有力な中央馬・地方馬の多くが、サウジダービーやUAEダービーといった中東のレースへと流出している状況が報告されています。これにより、今年のダート三冠は主要な勝ち馬のほとんどが不在となる見込みです。
全日本2歳優駿、兵庫ジュニアG、カトレアS、ポインセチアS、オキザリス賞、もちの木賞といった重賞・特別レースの勝ち馬が中東遠征を表明しています。特に、1800mでの勝利実績を持つパイロパンサーやロックターミガンが国内三冠に出ないことは、深刻な問題と指摘されています。
| 馬名 | 主な実績 | 表明された遠征先 |
|---|---|---|
| サトノボヤージュ | 重賞勝ち馬 | サウジダービー |
| トウカイマシェリ | 重賞勝ち馬 | サウジダービー |
| ベストグリーン | 地方の有力馬 | サウジダービー |
| ワンダーディーン | 重賞勝ち馬 | サウジダービー |
| パイロパンサー | 1800m勝利実績 | UAEダービー |
| ロックターミガン | 1800m勝利実績 | UAEダービー |
現時点でダート三冠路線に残る有力馬は、JBC2歳優駿1着、全日本2歳優駿2着のタマモフリージアくらいではないか、という声が上がっています。プラタナス賞勝ち馬のテイエムキハクは骨折により離脱しており、テイエムサンレーヴも怪我で三冠には間に合わない状況です。また、ナチュラルライズはダート三冠ではなくフェブラリーステークスを目標にすると表明しています。
新設されたダート三冠を避けてまでトップ層が海外を目指す背景には、賞金や国際的な評価が深く関わっています。これは、もはやケンタッキーダービーを勝たないと日本のダート馬は評価されないという風潮があるためかもしれません。
サウジダービーやUAEダービーの賞金は、羽田盃などの国内のレースよりも高額です。また、地方馬であっても海外の重賞を勝った上でダート三冠で4着以内に入ると3,000万円の報奨金が出る制度も、海外遠征を促す要因の一つと見られます。
中央所属馬が国内ダート三冠に出走するためには、出走条件をクリアするのが簡単ではないという構造的な問題があります。この条件の厳しさが、むしろ有力馬に「出走さえできれば重要な賞金加算を楽に狙える」(国内三冠)というよりも、より高額な海外レースを選択させる動機になっています。
トップ層のダート馬にとって、大井の利権が絡む国内三冠よりも、ケンタッキーダービーを目指す海外路線の方が建設的であり健全な動きだと評価する意見もあります。2歳までに頭角を現した馬は、まず中東路線で結果を出し、その後ケンタッキーダービーへ向かうのが「当たり前」のルートになりつつあります。
国内のトップ馬が海外に流出する一方で、ダート三冠路線をどのように位置づけるべきかという議論も生まれています。一つの見解として、三冠全てではなく、最後のJDC(ジャパンダートクラシック)を世代の最強決定戦とすることが望ましいという意見が支持されています。
国内・地方・海外の異なる路線を走ってきた同期たちが、最後はJDCで合流し最強を決めるという流れは、最も盛り上がる最高の構図だという期待があります。この場合、最初の二冠(羽田盃・東京ダービー)は「空き巣」となる可能性はありますが、海外組が合流するJDCで三冠達成が阻まれるケースもあり、難易度は高いと見られています。
フォーエバーヤング(エバヤン)のような怪物級の馬が、国内路線を経由せず海外で実績を積んだことで、日本の若手ダート馬の海外遠征への意識を大きく変えたとの見方があります。厳しいペースを経験し、強くなっていくという育成の観点からも、地方馬が混じる緩いペースの国内戦よりも海外へ行く方が良いという意見も存在します。
ダート三冠がその権威を確立するためには、中央馬の参加を促す施策や、レースそのものの環境改善が課題となります。
羽田盃などへの出走条件が厳しいため、中央馬の出走枠を増やすべきという意見があります。実際、今年からブルーバードカップの中央枠は3頭から4頭に増加しており、東京ダービーまでの三冠レースで中央馬がさらに優位になる可能性も指摘されています。しかし、有力馬が海外にいるため、名ばかりの「空き巣」三冠馬が量産されかねないという懸念も出ています。
日本のダートコースの砂質(パッサパサな砂)を変えることができれば、国内路線の魅力が向上し、海外を目指す方向性にも影響が出るかもしれない、という意見も提唱されています。
最終的に、ダート三冠が全て大井競馬場で行われるという現状が、中央馬がケンタッキーダービーを目指す国際的な方向性を維持する上で、むしろ良かったと評価するファンもいます。