2025年11月海外競馬結果分析:デルマー・ターフフェスティバルとウィンターボトムSの勝敗要因

海外競馬 週末分析レポート 2025

✨エグゼクティブサマリー:2025年11月最終週のレース概観

2025年11月最終週、世界の競馬界は二つの対照的な出来事を記録しました。北米西海岸のデルマー競馬場では、チャド・ブラウン厩舎とジャドモントファームが「ターフフェスティバル」を席巻し、圧倒的な支配力を見せつけました。一方、オーストラリアのアスコット競馬場では、ウィンターボトムステークスで王者オーバーパスが敗れる波乱が起こり、スプリント戦線の勢力図に変化が生じました。本レポートは、以下の主要4レースの結果に基づき、勝敗を分けた戦術的要因、血統的背景、および今後の国際競馬シーンへの影響を分析します。

  • メイトリアークステークス(G1): セジェスタが勝利し、チャド・ブラウン厩舎が支配。
  • ハリウッドダービー(G1): サラミスが勝利し、兄弟G1制覇の偉業を達成。
  • ウィンターボトムステークス(G1): リベルタドが王者オーバーパスを撃破。
  • ハリウッドターフカップ(G2): トゥルーリークオリティが連覇を達成し、ステイヤーの戦術が光る。

特に、ジャドモントファーム所有・生産の半姉弟(セジェスタとサラミス)が同週末に同競馬場のG1競走を連勝したことは、母アントノエの繁殖能力を証明する歴史的な快挙となりました。オーストラリアでは、過去2年の覇者が新興勢力に敗れ、世代交代の兆候が見られました。

🇺🇸デルマー・ターフフェスティバル:ブラウン厩舎とジャドモントの「黄金週間」

米国西海岸の秋競馬を締めくくるデルマー・ターフフェスティバルにおいて、ニューヨーク拠点のチャド・ブラウン厩舎が顕著な強さを示し、「支配」と呼ぶにふさわしい結果を残しました。

👑メイトリアークステークス(G1):セジェスタの戴冠と戦術的完勝

レース概要: 11月30日、賞金30万ドルのメイトリアークステークス(芝1マイル)で、4歳牝馬セジェスタ(Segesta)が待望のG1初制覇を飾りました。

競走前の背景: ゴーストザッパー産駒のセジェスタは、重賞戦線で安定した成績を残しながらも、ビッグタイトルを逃し続けていました。直近2戦連続2着という結果は、G1級の実力を示しつつも、勝ち切るための決定的な要素の欠如を示唆していました。しかし、調教師のチャド・ブラウンは彼女の能力を信じていました。

レース展開: 鞍上のフラヴィアン・プラは、デルマーのマイル戦で後方待機が不利になり得ることを考慮し、スタートから先行策を選択しました。セジェスタは前に馬を置くことで集中力を保ち、絶好のポジションで脚を溜めることに成功しました。

勝負の瞬間: セジェスタは他馬を追い抜くと気を抜く癖があり、騎手には追い出すタイミングを遅らせる繊細な操作が求められました。直線でプラの合図に応じたセジェスタはスマートに加速し、後続を突き放しました。

結果: 2着のインアワタイムに2馬身1/4差をつける完勝。勝ち時計は1分35秒60でした。チャド・ブラウン調教師は過去9回のメイトリアークステークスのうち7回を制する記録を打ち立て、セジェスタの獲得賞金は119万275ドルに達しました。

キーポイント

  • セジェスタ初のG1制覇
  • 先行策が奏功
  • チャド・ブラウン調教師、驚異の7勝目
  • 獲得賞金119万ドル超

表1:メイトリアークステークス(G1)上位結果

着順馬名騎手調教師着差オッズ
1SegestaF. PratC. Brown$5.40
2In Our Time2 1/4馬身
3Ag Bullet3/4馬身
4Breath Away

🌟ハリウッドダービー(G1):サラミスの末脚とスローペースの罠

レース概要: メイトリアークステークスの前日、11月29日に行われた3歳限定のG1、ハリウッドダービー(芝1 1/8マイル)で、セジェスタの半弟であるサラミス(Salamis)が勝利しました。

レースの力学: G1競走としては異例の「緩んだペース」で進行しました。スローペースは逃げ・先行馬に有利に働く一方、馬群が凝縮し後方待機の馬は進路を失うリスクが高まります。1番人気のテストスコアはこの展開で脚を余しました。

ウンベルト・リスポリの「クリアな視界」: 騎手のウンベルト・リスポリは、調教師の指示通り「外側をクリアにして回る」戦術を取り、道中は6番手で待機。直線入り口でスムーズに外へ持ち出すことに成功しました。

決着: 直線でサラミスは卓越した瞬発力を発揮し、粘るトムズマジックと追い込んできたテストスコアをクビ差で退けました。チャド・ブラウン調教師はハリウッドダービー通算5勝目を挙げ、単独最多勝記録を樹立しました。

血統の奇跡: サラミスの勝利により、母アントノエ(Antonoe)は「同一週末に同一競馬場のG1を制した姉弟の母」という歴史的快挙を達成しました。

  • 姉:セジェスタ(父 Ghostzapper):スピードと持続力に優れる。
  • 弟:サラミス(父 Speightstown):父譲りの筋肉量と瞬発力を持ち、マイルから中距離に対応。

ジャドモントの生産プログラムが北米芝競馬に適応した血統を確立したことが証明されました。

勝利の要因

  • スローペースを打破する末脚
  • リスポリ騎手の完璧な進路取り
  • 姉弟G1制覇の偉業
  • チャド・ブラウン、最多勝記録更新

表2:ハリウッドダービー(G1)上位結果

着順馬名騎手調教師着差オッズ
1SalamisU. RispoliC. Brownクビ$8.20
2Tom’s Magicクビ
3Test Score4/5 (1人気)
4Tempus Volat
5Kokosan52-1

🏁ハリウッドターフカップ(G2):トゥルーリークオリティの連覇とステイヤーの美学

レース概要: 11月28日、ハリウッドターフカップ(G2、芝1 1/2マイル)で、前年の同レース覇者トゥルーリークオリティ(Truly Quality)が連覇を達成しました。

専門職: トゥルーリークオリティは、瞬発力勝負では分が悪く、絶妙なタイミングでのスパートが求められる「ワンペースな馬」です。

展開の妙: レースはゆったりとしたペースで流れ、後方にいた騎手のミルコ・デムーロは、そのままでは前の馬に残されると判断。向こう正面で動き出し、残り半マイル地点から進出を開始しました。3コーナーから4コーナーにかけて外を回りながら徐々に加速し、直線入り口で先頭に並びかけました。

結果と歴史的意義: 直線では、早めに抜け出したトゥルーリークオリティが後続を1馬身3/4差で完封し、見事に連覇を達成。ハリウッドターフカップの連覇は26年ぶりの快挙であり、馬の特性を完全に理解したデムーロの騎乗が光りました。

連覇の秘訣

  • 「ワンペース」特性を活かす
  • ミルコ・デムーロの絶妙スパート
  • 26年ぶりの連覇達成

表3:ハリウッドターフカップ(G2)上位結果

着順馬名騎手調教師着差オッズ
1Truly QualityM. DemuroJ. Thomas1 3/4馬身$5.80 (1人気)
2FlashiestL. Powellアタマ40-1
3NineeleventurboA. Fresuアタマ6-1

🇦🇺ウィンターボトムステークス(G1):パースのスプリント王座交代劇

オーストラリア・西オーストラリア州のアスコット競馬場では、11月29日に同地最大のスプリントG1、ウィンターボトムステークス(芝1200m)が開催されました。

👑➡️💥「オーバーパス時代」の終焉?

レース前の焦点: レース前の最大の焦点は、過去2年連続でこのレースを制している絶対王者オーバーパス(Overpass)の3連覇達成の可能性でした。彼は単勝2.10倍の圧倒的1番人気に支持されていました。

リベルタドの急襲: 勝利は単勝21倍の伏兵、リベルタド(Libertad)に渡りました。アナベル&ロブ・アーチボルド厩舎の管理馬であり、新興シンジケートであるトリロジー・レーシングに初のG1タイトルをもたらしました。

勝敗を分けた「イン突き」: レースは穏やかなペースで進み、オーバーパスが先頭で直線を迎えました。鞍上のジョシュ・パーがオーバーパスを馬場の中央へ誘導したことで、内側のラチ沿いにスペースが生まれました。リベルタドの鞍上ジェイミー・モットはこの好機を逃さず、迷わずインを突きました。残り200m、粘るオーバーパスとの壮絶な叩き合いをハナ差で制し、ゴール板を駆け抜けました。

結果の示唆: この結果は、オーストラリアのスプリント界において、遠征によって力をつけた馬が番狂わせを起こし得ることを証明しました。また、セール出身馬であるリベルタドが種牡馬としての価値を大きく高める勝利となりました。

波乱の背景

  • 王者オーバーパスの敗北
  • 伏兵リベルタド、21倍の勝利
  • ジェイミー・モット騎手の「イン突き」
  • スプリント戦線世代交代の兆候

表4:ウィンターボトムステークス(G1)上位結果

着順馬名騎手調教師着差オッズ
1LibertadJ. MottA & R Archibaldハナ$21.00
2OverpassJ. ParrB. Bakerハナ$2.10 (1人気)
3Rey Magnerio
5Jokers Grin

📊総括と今後の展望

🎯チャド・ブラウンの「西海岸戦略」の完成

今回のデルマー・ターフフェスティバルにおけるブラウン厩舎の成功は、彼の管理馬輸送とローテーション管理システムが極限まで洗練されていることを示しています。特に、「シーズン後半にピークを持ってくる」手腕は他厩舎の追随を許さず、北米芝競馬のトレンドを完全に掌握していると言えます。

🧬ジャドモントの血統戦略

セジェスタとサラミスの活躍は、ジャドモントファームが「欧州のスタミナ牝系」に「北米のスピード種牡馬」を配合するという戦略の正しさを証明しました。この配合パターンは、今後も北米の芝G1戦線を席巻する主要なトレンドとなる可能性があります。

🔄オーストラリア・スプリント戦線の混戦化

オーバーパスの敗北は、絶対王者の不在とスプリント戦線の混戦化を意味します。リベルタドのような伏兵が台頭したことで、次なるビッグレースへの展望はより予測困難かつエキサイティングなものとなりました。

2025年11月の海外競馬は、実績あるチームの緻密な戦略による勝利と、一瞬の判断が生んだ大逆転劇という、競馬の持つ二つの魅力を鮮烈に映し出した週末であったと結論付けられます。

ヤナシ社長(旧:生成系競馬予想)

ヤナシ社長(旧:生成系競馬予想)

競馬予想家 (経験20年)

データ関連企業の社長であり、学生時代にはアルゴリズムコンテストで世界3位に入賞したAI技術者。20年以上にわたり統計解析を競馬予想に応用してきた競馬予測家でもあります。生成系AIを駆使した客観的で革新的な競馬予想を提供し、「生成AI競走馬評価」などのコンテンツを通じて、競馬をより深く楽しめるようサポートしています。

専門分野: AIを使った競馬予想。生成AIを使ったコンテンツ作成
実績・資格:

主な活動実績 AI競馬マスターズ2023: 3位入賞 俺プロ: 馬将認定 参考成績(中央): https://yoso.netkeiba.com/?pid=yosoka_profile&id=562 参考成績(地方): https://yoso.netkeiba.com/nar/?pid=yosoka_profile&id=562

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