2025年の阪神ジュベナイルフィリーズは、本来の阪神芝1600m外回りコースで開催。 本レポートでは、確定出走馬の直近2週間の追い切りデータと血統背景に基づき、 各馬の状態とコース適性を科学的に検証します。
2025年の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)は、本来の阪神芝1600m外回りコースで開催され、急坂と長い直線への適性が勝負の鍵となる。
血統と追い切り内容の両面で高く評価されており、特に1週前追い切りのラスト1ハロン11.0秒の切れ味はG1級と評されている。
坂路での動きが傑出し、パワータイプであるため、タフな阪神馬場が追い風となる可能性がある。
栗東滞在で本気度を示しており、潜在能力は高いが、気性のコントロールが課題となる。
タイセイボーグ、ショウナンカリスといった伏兵馬も、調教で好時計を記録しており、注意が必要である。
2025年の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)は、阪神競馬場の芝1600m(外回り)で開催される。昨年の京都開催を経て、本来のコースに戻る本年は、真のマイラーとしての資質と、翌年のクラシック戦線を見据えた「強さ」が問われる一戦となる。過去にはウオッカ、ブエナビスタ、アパパネ、リバティアイランドといった名牝が勝利しており、2歳女王の座だけでなく、世代のリーダーとしての資質を証明する重要なレースである。本レポートでは、確定出走馬の直近2週間の追い切りデータと血統背景に基づき、各馬の状態とコース適性を科学的に検証する。分析は客観的なデータと公式発表された陣営コメントのみに基づき、不確かな噂や推測は排除されている。
阪神競馬場の芝1600m(外回り)は、向こう正面スタートで、ゆったりとした3〜4コーナーを経て、473.6m(Bコース使用時)の長い直線を持つ。最大の特徴は、ラスト200mから始まる高低差1.8mの急坂であり、これを克服するパワーと、そこに至るまでの直線を維持する持続的な末脚(瞬発力)が求められる。今開催では12月に入りBコースが使用されている。過去の傾向として、スタート後はテンが速くなりやすいが、道中はペースが落ち着きやすく、「上がりの速い競馬」になりやすい。特に、揉まれずに運べる1枠の成績が良い傾向や、クラスが上がるにつれて差し馬の台頭が目立つ点は、枠順確定後の展開予想で重要となる。
阪神コースで強さを見せた名牝シンハライトを母に持ち、父エピファネイアはスタミナと爆発力を兼ね備えた種牡馬。母父ディープインパクトとの配合は「瞬発力×持続力」の黄金比とされる。祖母シンハリーズは米G1馬であり、この牝系からは重賞級が多数輩出されている。特に阪神の急坂をこなすパワーと、外回りコースで求められる長く良い脚は、母系が得意とするところである。
前走野路菊S勝利後、十分な間隔をとって調整されており、成長曲線は右肩上がり。北村友一騎手も「新馬戦の時より感触が良くなっている」「いい瞬発力を持っている」とコメントしており、阪神マイルはベストマッチ。盤石の仕上がりである。
1週前追い切り(12/3 水曜・栗東CW・良):
最終追い切り(12/10 水曜・栗東CW・良):
父ドレフォン産駒には皐月賞馬ジオグリフがいるように、芝マイル〜中距離適性も持つ。兄バルサムノート(父モーリス)はリステッド競走を勝利しており、母系にはマイル以上をこなすスタミナの下地がある。母の父Ghostzapperはブリーダーズカップ・クラシック覇者であり、持続力と底力を伝える。血統全体としてはパワーとスピードの持続力に特化した構成で、タフな流れで真価を発揮するタイプである。
前走2着だが、3着以下を7馬身離しており、勝った馬の決め手が凄すぎただけという見方もできる。調教師が「牝馬にしてはパワータイプ」と評するように、今の時期の荒れ始めた阪神の馬場や急坂はプラス材料となるだろう。
1週前追い切り(12/3 水曜・栗東坂路・良):
最終追い切り(12/10 水曜・栗東坂路・良):
父アドマイヤマーズは阪神マイル(朝日杯FS)勝ち馬であり、自身もG1を3勝したマイラーである。初年度産駒として、父譲りの勝負根性とスピードを受け継ぐ。母系は欧州の重厚な血統背景を持ち、母父Australia(英ダービー馬)、近親には凱旋門賞連覇の名牝Treveがいる世界的良血である。この配合は、父のスピード能力を母系のスタミナが支える理想的なバランスで、タフなG1の流れでもバテない底力を保証する。
無傷の2連勝中であり、前走サフラン賞では長く良い脚を使って勝利した。ルメール騎手が「テンションは高いが自分の仕事が分かっている」と評しているように、レースに行けば集中力を発揮するタイプ。栗東滞在による当日の輸送リスク軽減は大きなアドバンテージであり、パドックで落ち着きがあれば優勝争いは必至である。
1週前追い切り(12/4 木曜・美浦W・良):
最終追い切り(12/10 水曜・栗東CW・良):
父インディチャンプ(安田記念・マイルCS覇者)×母父Azamour(欧州中長距離G1馬)という配合で、父のスピード持続力と母系の底力が融合し、消耗戦に強いタイプ。調教は極めて意欲的で、12月3日の栗東CWでの1週前追い切りでは、西村淳也騎手を背に「一杯」に追われ、6ハロン77.9秒(終い11.3秒)という猛時計を叩き出した。これは今回出走する全馬の中でもトップクラスの負荷とタイムである。最終追い切りは軽めだったが、これは1週前に仕上げたことの証左であり、松下調教師も「状態は1戦ごとに良くなっている」と自信を見せている。前走の出遅れさえなければ、G1の舞台でも互角以上に戦えるエンジンを持っている。
父リアルスティール×母父American Pharoah(米三冠馬)という配合で、母系は米国ダート血統の色が濃く、パワーとスピードの絶対値が高い構成。注目すべきは12月10日の美浦坂路での最終追い切りで、4ハロン51.8秒という好時計をマークした。これはこの日の美浦坂路でも上位に位置する速さである。併せた3勝クラスの古馬に先着する内容は、2歳馬としては破格。「細いが動き良く」との短評通り、馬体は華奢かもしれないが、内包するスピード能力は一級品である。
父モーリス×母父ダイワメジャーという、「パワーマイラー」配合。両種牡馬ともに阪神マイルG1の勝ち馬であり、コース適性は血統面から保証されている。最終追い切りは輸送を考慮し軽めだったが、1週前には古馬1勝クラスと併入しており、津村騎手も「気合乗り上々」とコメント。前走アルテミスS(2着)からの上積みを維持しており、当日の馬場が少しでも渋れば、この馬のパワー血統が火を噴くだろう。
| 馬名 | 父 / 母の父 | 最終追い切り場所 | 最終追い切り時計 (全体-3F-1F) | 短評・状態 | 前走成績 |
|---|---|---|---|---|---|
| アランカール | エピファネイア / ディープインパクト | 栗東CW | 81.6 – 36.9 – 11.8 | 馬なり余力/久々も動き軽快 | 野路菊S 1着 |
| アルバンヌ | アドマイヤマーズ / Australia | 栗東CW | 97.0(6F) – 37.0 – 11.6 | 強めに追う/テンション高め | サフラン賞 1着 |
| アンヘリータス | New Year’s Day / Bated Breath | 栗東坂路 | 53.9 – 25.9 – 13.2 | 末強め追う/上昇味薄いが | ファンタジーS 12着 |
| イヌボウノウタゴエ | Siskin / Frankel | 美浦W | 69.7(5F) – 39.1 – 11.8 | 馬なり余力/上がりに重点置く | 2歳未勝利 1着 |
| ギャラボーグ | ロードカナロア / Sligo Bay | 栗東坂路 | 54.6 – 25.3 – 12.2 | 馬なり余力/久々も力強く | 2歳未勝利 1着 |
| ショウナンカリス | リアルスティール / American Pharoah | 美浦坂路 | 51.8 – 25.4 – 12.5 | G前仕掛け/細いが動き良く | ファンタジーS 2着 |
| スウィートハピネス | リアルインパクト / ワークフォース | 栗東坂路 | 54.2 – 25.3 – 12.3 | 末強め追う/フットワーク軽快 | 白菊賞 2着 |
| スタニングレディ | Benbatl / ディープインパクト | 美浦W | 82.4 – 38.0 – 12.7 | 一杯に追う/追って伸び欠く | 2歳新馬 1着 |
| スターアニス | ドレフォン / Ghostzapper | 栗東坂路 | 53.5 – 25.3 – 12.1 | 馬なり余力/久々も動き軽快 | 中京2歳S 2着 |
| タイセイボーグ | インディチャンプ / Azamour | 栗東坂路 | 56.5 – 25.1 – 12.0 | 馬なり余力/力強い伸び脚 | アルテミスS 3着 |
| ヒズマスターピース | スクリーンヒーロー / Danehill Dancer | 美浦W | 84.0 – 37.6 – 12.1 | 馬なり余力/好気配保つ | 赤松賞 1着 |
| フロムレイブン | タワーオブロンドン / Dalakhani | 栗東坂路 | 53.5 – 24.7 – 12.1 | 馬なり余力/体も動きも良く | 2歳未勝利 1着 |
| マーゴットラヴミー | リアルスティール / War Front | 栗東坂路 | 57.3 – 26.0 – 13.0 | 馬なり余力/細いが動き良く | 白菊賞 1着 |
| ミツカネベネラ | モーリス / ダイワメジャー | 美浦W | 88.6 – 41.6 – 12.6 | 馬なり余力/軽めの調教で十分 | アルテミスS 2着 |
| メイプルハッピー | サトノクラウン / スクリーンヒーロー | 栗東坂路 | 53.7 – 25.0 – 12.3 | 馬なり余力/馬体の張り上々 | ファンタジーS 7着 |
| ラスティングスノー | モズアスコット / マンハッタンカフェ | 美浦W | 83.3 – 38.2 – 12.0 | 馬なり余力/動きキビキビ | りんどう賞 1着 |
| レディーゴール | レイデオロ / Equal Stripes | 栗東CW | 84.7 – 37.9 – 12.1 | 馬なり余力/順調に乗り込む | 白菊賞 6着 |
| ローズカリス | California Chrome / ヘニーヒューズ | 栗東坂路 | 55.3 – 25.7 – 12.5 | 馬なり余力/好調持続 | 兵庫JG 5着 |
詳細な追い切り分析と血統調査に基づき、2025年阪神ジュベナイルフィリーズの推奨馬は以下の通りである。
血統(エピファネイア×シンハライト)がこの舞台に非常に適合している。1週前追い切りのラスト11.0秒という切れ味、最終追い切りの余裕ある動きは、G1馬になるための資質を十分に示している。状態面に死角はないと見られる。
栗東坂路での動きが傑出している。パワーとスピードの絶対値が高く、今の阪神の馬場状態を味方につければ、アランカールを逆転する可能性を秘めている。
アルバンヌ: 栗東滞在という勝負気配と、前走・前々走で見せたレースセンスの良さを評価。テンションのコントロールが鍵だが、潜在能力はS評価に匹敵する。
タイセイボーグ: CWでの猛時計が無視できない。タフな展開になれば浮上するだろう。