年末のグランプリレース、有馬記念。今年は例年以上に、出走馬選定を巡る「盤外戦術」が大きな注目を集めています。特に話題となっているのが、木村哲也調教師(通称:キムテツ)が管理するヘデントール(牡4、木村厩舎)の特別登録です。出走しないことが濃厚とされている馬が登録したことで、ファン投票上位10頭の優先出走権の行方が複雑化し、ライラック(牝6、相沢厩舎)が有馬記念から除外される可能性が浮上しました。
この一連の動きは、木村厩舎のもう一頭の管理馬、スティンガーグラス(牡4、木村厩舎)の出走確率を高めるための戦略ではないかと推測されており、ネット掲示板などでは賛否両論、激しい議論が巻き起こっています。
本記事では、この波紋を呼んでいる「ヘデントール特別登録」の背景から、競馬ファンや一口馬主コミュニティの反応、そして今後の有馬記念出走馬決定に与える影響までを深掘りします。
今回の議論の発端は、ファン投票で10位にランクインしていたヘデントール(牡4、木村厩舎)が、有馬記念に特別登録されたことでした。しかし、キャロットクラブの公式サイトでは「特別登録をしましたが、基本的には来年からの始動を視野に入れています」と表明されており、事実上、出走は回避されると見られています。
有馬記念は、ファン投票によって選ばれた上位10頭に優先出走権が与えられます。しかし、上位馬が回避した場合、その優先権が下位の馬に繰り上がるわけではありません。代わりに、その枠は賞金順の出走馬決定に影響を与えることになります。つまり、ファン投票上位の馬が登録だけして回避した場合、その枠は通常の賞金順の馬に回るのではなく、別の馬を押し出す形になるのです。
今回のケースでは、ヘデントールの登録によって、本来有馬記念に出走できる可能性があったライラック(牝6、相沢厩舎、ファン投票30位台、賞金順で除外対象)が、さらに出走が厳しくなったと見られています。
なぜ出走しないヘデントールが登録されたのでしょうか? ネット上の議論で有力視されているのは、木村哲也厩舎のもう一頭の管理馬、スティンガーグラス(牡4、木村厩舎)を有馬記念に出走させるためではないか、という見方です。ヘデントールがファン投票上位(10位)で特別登録することにより、賞金順による出走ボーダーラインが変動し、スティンガーグラスが除外順位から繰り上がり、出走の可能性が高まると考えられています。
実際に、現状の有馬記念出走予定馬リストと除外対象馬リスト(ユーザー投稿より)は以下の通りです。
レガレイラ(牝4=木村、ファン投票1位)
(ネット掲示板より抜粋)
メイショウタバル(牡4=石橋、同4位)
ジャスティンパレス(牡6=杉山晴、同6位)
ミュージアムマイル(牡3=高柳大、同7位)
ダノンデサイル(牡4=安田、同8位)
ヘデントール(牡4=木村、同10位)※回避予定
ビザンチンドリーム(牡4=坂口、同24位)
タスティエーラ(牡5=堀、同25位)
シンエンペラー(牡4=矢作、同30位)
アドマイヤテラ(牡4=友道、同31位)
※以下、出走馬決定賞金順
サンライズジパング(牡4=前川)※両睨み
エルトンバローズ(牡5=杉山晴)
コスモキュランダ(牡4=加藤士)
ミステリーウェイ(セン7=小林)
サンライズアース(牡4=石坂)
シュヴァリエローズ(牡7=清水久)
※除外対象(出走馬決定賞金順)
マイネルエンペラー(牡5=清水久) 多分出られる
スティンガーグラス(牡4=木村) ワンチャン出られる
アラタ(牡8=和田勇) 厳しい
エキサイトバイオ(牡3=今野) 厳しい
ライラック(牝6=相沢) へデントールに押し出される
ディマイザキッド(牡4=清水英)
このリストを見ると、スティンガーグラスが「ワンチャン出られる」、ライラックが「ヘデントールに押し出される」と具体的に言及されており、この動きが意図的であると捉えられていることがわかります。
この「キムテツ調教師の策謀」とも称される戦略に対し、ネット掲示板では様々な意見が飛び交っています。主な議論のポイントを見ていきましょう。
この動きを肯定的に捉える意見は、「ルールを最大限に活用した、賢く有能な戦略だ」と評価しています。
有馬記念の出走枠は限られており、自厩舎の馬を優先させるのは当然の行為だという考え方です。また、ライラックがファン投票で30位台と、そこまで多くの支持を集めていなかったことを指摘し、「賞金や人気がない馬が弾かれるのは仕方ない」とする厳しい意見も見られました。
一方で、この戦略に強く反発する意見も多数上がっています。特に問題視されているのは、出走しないヘデントールの特別登録料を、その一口馬主が出資者として負担しなければならない点です。
キャロットクラブが「来年からの始動を視野」と公式に表明しているにもかかわらず、登録料だけが発生することに対し、一部の一口馬主からは不満の声が上がっているようです。一口馬主は「金融商品」としての側面もあるため、目的外の出費はデリケートな問題となり得るとの指摘もありました。
今回の件を受けて、ファン投票優先出走権の制度自体への疑問や改善を求める声も上がっています。
制度の抜け穴を突くような形で行われた今回の戦略は、今後のG1レースにおける出走馬選定ルールに一石を投じることになるかもしれません。
競馬の世界では、時に「盤外戦術」と呼ばれるような、ルールの範囲内で最大限に有利な状況を作り出そうとする動きが見られます。今回のケースも、その一つとして捉えられています。
ネット掲示板では、過去の類似事例として「ヘヴィータンク事件と同じだよな。ルールは把握しても良心があるから今まで誰もやらなかっただけ」というコメントも寄せられています。また、「新谷厩舎の南部杯グランブリッジ謎登録でキャロット天栄のシックスペンスが振り回されたからそれなら俺たちもやるかって感じかもな」という意見もあり、これは以前に別の厩舎が行ったとされる戦略への「報復」ではないか、という見方も存在します。
このような動きは、競馬の公平性やファンの感情に影響を与える可能性があり、議論の対象となりやすい傾向にあります。
調教師としては、管理馬を大レースに出走させ、勝利を収めることが最大の使命の一つです。そのため、ルールの範囲内で可能な限りの手を尽くすのは、ある意味当然の行動とも言えます。
また、馬主側にもそれぞれの思惑があります。特にノーザンファーム系列の馬主やクラブ法人は多くの馬を所有しており、自グループ全体の利益を最大化するための戦略を講じることが少なくありません。今回の件も、ノーザンファーム主導の「工作」ではないかと指摘する声もありました。
ヘデントールの特別登録は完了し、ライラックの有馬記念出走は極めて困難な状況となりました。一方で、スティンガーグラスは出走の可能性が高まっています。しかし、他の馬の回避状況や追加登録など、有馬記念の最終的な出走馬決定までには、まだ不確定要素が残されています。
例えば、「サンライズジパングは東京大賞典と両睨み、タスティエーラがギリギリまで状態見て判断だからまだ可能性ある」といったコメントもあり、最終的な出走枠の確定はギリギリまで読めない状況です。
ファンとしては、公平なルールの下で最高のパフォーマンスを見せる馬たちが集うことを願うばかりです。
A1: 公式には「来年からの始動を視野に入れています」と表明されており、出走はしない意向とされています。しかし、ネット上では、同じ木村哲也厩舎のスティンガーグラスの有馬記念出走を有利にするための戦略ではないか、という見方が支配的です。ヘデントールがファン投票上位で登録することで、賞金順による出走枠のボーダーが変動し、スティンガーグラスが繰り上がる可能性が高まります。
A2: 有馬記念のファン投票優先出走権の仕組みでは、上位馬が回避してもその優先権が下位に繰り上がるわけではありません。ヘデントールが登録枠を占めることで、賞金順で除外対象だったライラックが、さらに出走が厳しくなると指摘されています。
A3: 通常、特別登録料は馬主(一口馬主の場合は出資者)が負担します。今回のケースでは、ヘデントールの一口馬主が出走しない馬の登録料を支払うことになるため、一部の出資者からは不満の声が上がっています。
A4: 既存のJRAのルールにおいては、特別登録すること自体は全く問題ありません。出走を取りやめることも自由です。しかし、その行為が「ファン投票の意味を薄れさせる」「一口馬主に不利益を与える」といった倫理的・道義的な問題を引き起こしていると指摘する声が多く、議論の的となっています。
A5: 今回の件により、「ファン投票で選ばれた馬が出走できない」「戦略的にファン投票が利用される」といった状況が顕在化し、一部のファンからはファン投票制度の意義を問う声が上がっています。今後の制度運用について、JRAがどのような見解を示すか注目されます。
木村哲也調教師によるヘデントールの有馬記念特別登録は、ライラックの除外可能性、スティンガーグラスの出走繰り上がり、そして一口馬主の登録料負担という複数の論点を提示し、競馬ファンや関係者の間で大きな波紋を呼んでいます。
これは、ルールの範囲内で行われる「賢い戦略」と捉えることもできますが、同時に、制度の「抜け穴」や「良心の欠如」を指摘する声も少なくありません。競馬の奥深さを感じさせる一方で、現在の制度が抱える課題を浮き彫りにしたとも言えるでしょう。
私たちは、この一件が今後の競馬界、特にG1レースの出走馬選定ルールやファン投票制度にどのような影響を与えるのか、引き続き注目していきたいと思います。