概要
2025年12月14日に中山競馬場で開催される第18回カペラステークス(GIII)は、ダートスプリントの頂点を争うレースです。本年の注目は、米国血統を持つ新世代3歳馬と歴戦の古馬の激突です。レースの舞台はトリッキーな中山ダート1200mであり、芝スタートとゴール前の急坂が勝敗の鍵を握ります。本稿では、出走予定馬の血統背景、調教データ、前走分析などを徹底的に分析し、勝者を占います。
要点のまとめ
新旧スピードスターの激突
2025年カペラSは、米国血統を持つ新世代3歳馬と歴戦の古馬が激突する注目のダートスプリント戦です。
中山ダート1200mの特殊性
舞台となる中山ダート1200mは、芝スタートとゴール前の急坂が鍵を握る特殊なコースです。
テーオーエルビス 最有力
最有力候補テーオーエルビスは、最終追い切りでラスト1ハロン11.9秒の鋭い切れ味を見せ高評価を得ています。
3歳勢の台頭
ヤマニンチェルキやエコロアゼルといった3歳勢も、調教で好タイムを記録し仕上がりは万全です。
ベテラン勢の巻き返し
昨年の覇者ガビーズシスターを筆頭に、クロジシジョーなど伏兵陣も虎視眈々と上位を狙っています。
舞台解説:中山ダート1200mの「魔力」と構造的特徴
中山ダート1200mは、JRA全10場の中でも屈指のトリッキーなコースレイアウトを持ち、馬の適性が勝敗に直結する「スペシャリストの舞台」です。
芝スタートがもたらす「初速の攻防」と枠順バイアス
- スタート地点が芝コース上に設けられており、ダートコース合流までの距離が長いため、芝部分を長く走れる外枠の馬が物理的に有利な傾向があります。
- 過去のデータ分析では全体的に外枠優勢ですが、カペラステークスに限っては最内枠(1枠)が過去最多の4勝を挙げています。これは、卓越したダッシュ力を持つ馬が最内からロケットスタートを決め、距離ロスなく立ち回った結果と考えられます。
- 枠順評価は、「外枠有利」という基本原則と、「逃げ切れるスピードがあれば最内枠は有利になる」という例外規定の二段構えで捉える必要があります。
高低差と急坂が要求する「真のパワー」
- スタート直後は下り坂で、前半3ハロン(600m)は33秒台前半の速いラップが刻まれることもあります。
- ゴール前には高低差2.2m、最大勾配2.24%の急坂が待ち受けています。
- 「前半のオーバーペース」と「終盤の急坂」の組み合わせがこのコースの魔力であり、単に足が速いだけでは通用しません。前半をハイラップで入りながらも、ラスト1ハロンで急坂を駆け上がるだけの余力を残せる心肺機能と筋力が必要です。
有力馬徹底解剖:血統×追い切り×前走分析
テーオーエルビス (T O Elvis)
性齢: 牡3
斤量: 56kg
騎手: 鮫島駿
厩舎: 栗東・高柳大輔
血統分析:
父Volatile(米国のスピード・早熟性系統)、母父Curlin(米二冠馬)。父由来のスピードに、母父からタフな中山の急坂をこなすスタミナとパワーを補完。「スピード×パワー」配合はコース適性に合致。
追い切り評価:
S
(最高)。12/10(水)栗東坂路で「53.8 – 38.2 – 24.3 – 11.9」。ラスト1ハロン11.9秒の切れ味は特筆。1週前にはCWコースで猛時計。心肺機能は完全に仕上がっており、休み明けの不安を感じさせない万全の態勢。「久々も好気配」。
ヤマニンチェルキ (Yamanin Chelqui)
性齢: 牡3
斤量: 58kg
騎手: 岩田望
厩舎: 栗東・中村
血統分析:
父Four Wheel Drive(American Pharoah産駒、日本の砂質への適性)、母父ヤマニンセラフィム(サンデーサイレンス系、日本の馬場への親和性)。日米ハイブリッド血統で、芝スタートの中山ダート1200mに適性。
追い切り評価:
A+
(極めて優秀)。12/10(水)栗東坂路で「51.8 – 38.0 – 24.5 – 12.4」。基準から見て非常に優秀な全体時計。1週前から気配が大きく上向き、一杯に追われて闘争心に火がついた状態。58kgの斤量をこなせるパワーも示唆。「仕上がり良好」。
エコロアゼル (Ecoro Azel)
性齢: 牡3
斤量: 56kg
騎手: 団野大
厩舎: 栗東・森秀行
血統分析:
父Shancelot、母父Orientate(共に米BCスプリント勝ち馬)。「スプリント特化型」配合で、森秀行厩舎が得意とする「米国産マル外の速攻系」の完成形。
追い切り評価:
A
(安定)。12/11(木)栗東坂路で「52.9 – 38.0 – 24.9 – 12.6」。1週前に団野騎手騎乗で猛時計をマークし、実質的な仕上げは完了。最終は馬なりで好時計が出ており、心身ともに最高潮。「好調持続」。
ガビーズシスター (Gabby’s Sister)
性齢: 牝4
斤量: 56kg
騎手: 吉田隼
厩舎: 美浦・森一誠
血統分析:
父Apollo Kingdom(タフなダート戦に強い)、母父Special Week(スタミナ豊富)。スピード一辺倒ではなく、消耗戦での底力がある。昨年の覇者であり、コース適性は証明済み。
追い切り評価:
A
(上位)。12/10(水)美浦坂路で「52.7 – 38.8 – 25.5 – 12.7」。フットワークに力感があり、中山の急坂を苦にしないパワーを感じさせる。「力強い脚捌き」。1週前も好時計で、連覇に向けて隙のない調整。
伏兵・穴馬の動向分析
カペラステークスは人気薄の台頭も珍しくないレースです。
キャンディドライヴ
6歳にしてキャリアハイの動き。門別坂路で一番時計をマーク。父Candy Rideのスピード健在。
クロジシジョー
地方競馬の雄フリオーソ産駒。栗東坂路で好時計。消耗戦になれば浮上。
タガノミスト
最終追い切りで力強い伸び脚。スムーズに外目を追走できれば一発の可能性あり。
サンライズアムール
馬なりで抜群の時計。状態面に不安なく、ダート短距離で能力が開花。
ドンアミティエ
中山ダート1200mの特注種牡馬アジアエクスプレス産駒。前走以上の動きを見せており、変わり身に期待。
出走予定全馬 調教・血統データ一覧
| 馬名 | 性齢 | 父 | 母父 | 最終追い切り (12/10, 11) | 短評 |
|---|---|---|---|---|---|
| エコロアゼル | 牡3 | Shancelot | Orientate | 栗坂 52.9-12.6 (馬なり) | 好調持続 |
| エートラックス | 牡4 | New Year’s Day | Symboli Kris S | 栗坂 54.1-12.2 (馬なり) | 動きキビキビ |
| ガビーズシスター | 牝4 | Apollo Kingdom | Special Week | 美坂 52.7-12.7 (馬なり) | 力強い脚捌き |
| カルチャーデイ | 牝4 | Fine Needle | Meiner Love | 栗CW 52.9-11.0 (馬なり) | デキ落ちなし |
| キャンディドライヴ | 牡6 | Candy Ride | Empire Maker | 門坂 35.0-11.8 (一杯) | 最近で一番 |
| クロジシジョー | 牡6 | Furioso | Special Week | 栗坂 51.3-12.8 (一杯) | 好気配保つ |
| サンライズアムール | 牡6 | Maurice | Taiki Shuttle | 栗坂 51.7-12.3 (馬なり) | 体も動きも良く |
| ジャスパーゴールド | セ7 | Khozan | Put It Back | 栗坂 52.9-12.9 (稍一杯) | 素軽さ欠く |
| スターペスカオリ | 牝5 | Sinister Minister | Genuine | 栗坂 56.2-13.1 (馬なり) | 脚取り確か |
| タガノミスト | 牝4 | Majestic Warrior | Empire Maker | 栗坂 52.5-12.2 (一杯) | 力強い伸び脚 |
| チカッパ | 牡4 | Real Steel | Into Mischief | 栗坂 52.4-13.2 (一杯) | 実戦で変わる |
| テーオーエルビス | 牡3 | Volatile | Curlin | 栗坂 53.8-11.9 (一杯) | 久々も好気配 |
| ドンアミティエ | 牡5 | Asia Express | King Halo | 栗坂 54.9-12.1 (強め) | 前走以上の動き |
| ニットウバジル | 牡5 | Danon Legend | That’s the Plenty | 美坂 54.3-12.6 (強め) | 元気はいいが |
| ポッドベイダー | 牡3 | Leontes | Daiwa Major | 美坂 53.3-12.0 (馬なり) | 仕上がり良好 |
| ヤマニンチェルキ | 牡3 | Four Wheel Drive | Yamanin Seraphim | 栗坂 51.8-12.4 (一杯) | 仕上がり良好 |
結論と展望:新旧スピードスターの激突
本年のカペラステークスは、テーオーエルビスとヤマニンチェルキという、米国血統のスピード能力を持つ3歳馬が、日本の中山ダートという特殊な舞台でどこまで通用するかが最大の焦点です。 調教分析からは、両馬ともに古馬を凌駕する好時計をマークしており、ポテンシャルは疑いようがありません。 特にテーオーエルビスのラスト1ハロン11.9秒という切れ味は、カペラSの勝ちパターンを想起させます。
一方で、昨年の覇者ガビーズシスターや、復調気配のサンライズアムールといった古馬勢も王座奪還・防衛を狙っています。 展開の鍵は、ハナを切る馬と1枠に入った馬のスタート次第となるでしょう。
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