血統・データから2歳王者を占う
開催概要
- レース名: 第28回 金沢ヤングチャンピオン (冠名: ジュンライトボル2歳)
- 開催日: 2025年11月24日
- 競馬場: 金沢競馬場
- 距離: 1700m
- 目的: 次世代のダート界を担う2歳馬の能力を測り、来春の3歳戦線および全国の地方交流重賞を見据えた重要なステップレース。
要点のまとめ
◎
優勝候補筆頭: エムティジーク(絶対的なスピード能力)
◯
対抗馬: グラシアレス(門別での実績、吉原騎手の戦略)
▲
展開の鍵: サノノサルバドール(スマートファルコン産駒、スタミナを活かす)
🎯
レースの焦点: 1700mという未知の距離が、スタミナと経験値の勝負を分ける可能性。
⭐
穴馬候補: グリーゼ、イネスティマブル(展開次第で上位争いに加わる力を持つ)
競走条件の特異性と重要性
金沢ヤングチャンピオンの最大の特徴は1700mという距離設定。多くの2歳馬が経験してきた900m、1400m、1500mから距離延長を強いられる。金沢競馬場の1700mコースは以下の特徴を持つ。
- スタート〜第1コーナー: 距離が長く、枠順による有利不利は少ないが、スタート直後のポジション争いが長引くとオーバーペースに陥る危険性がある。
- コーナーワーク: 金沢の小回りコースを4回回るため、器用さとコーナリング性能が重要。内枠の馬が経済コースを通れるか、外枠の馬がスムーズに先行できるかが鍵。
- 直線: 短いため、3コーナーから4コーナーにかけての「機動力」と「持続力」が必須。
本レースは「スピードの絶対値」vs「スタミナと経験値」の構図が鮮明。
出走馬全頭詳細分析
1
イネスティマブル (牝2・柴田勇 騎乗)
血統背景: 父シャンハイボビー(米国産、2歳王者、仕上がりの早さとダート適性)と母父ノヴェリスト(欧州芝中長距離馬)の融合。1700mへの距離延長にプラスとなる可能性。
近走パフォーマンス: 南関東から金沢転入後、安定した成績。前走は後方から長く良い脚を使い2着。マクリの競馬ができる操作性と持続力は1700mで武器となる。レースセンスの高さを示す。
11.09 (1500m, 稍重): 2着 (1:37.4) 10.28 (1500m, 不良): 3着 (1:38.6)
総合評価: 最内枠を活かしロスなく立ち回れば上位争いは十分可能。展開次第で逆転を狙える。
2
モーモークローム (牝2・田知弘 騎乗)
血統背景: 父カリフォルニアクローム(米国英雄的ダート馬)、母父キンシャサノキセキ(日本の短距離王者)。スピード色が強い配合で、1200m〜1400mがベスト。1700mは挑戦的。
近走パフォーマンス: 900m戦で圧勝するも、1400mに距離を延ばした近3走は敗退。前走はエムティジークに2.8秒差をつけられており、スタミナ面に課題。
10.28 (1400m, 不良): 5着 (1:31.3) 09.29 (1400m, 重馬場): 4着 (1:31.5) 08.05 (900m, 良馬場): 1着 (0:57.5)
総合評価: 1700mへの距離延長はマイナス。エムティジークとのタイム差を考えると苦戦は免れない。
3
エムティジーク (牡2・中島龍 騎乗)
血統背景: 父ダノンプレミアム(スピード)、母父ヴァーミリアン(ダートG1級9勝、底なしのスタミナ)。金沢のタフな馬場への適性が高く、勝負根性も備える。完成度の高い「砂の王者」候補。
近走パフォーマンス: メンバー中で突出。10月12日石川テレビ杯(1400m、重馬場)の勝ちタイム1:27.7は同日の古馬B級クラスに匹敵。スタートからゴールまで先頭を譲らない圧巻のレースぶり。
10.28 (1400m, 不良): 1着 (1:28.5) 10.12 (1400m, 重馬場): 1着 (1:27.7) 09.20 (1400m, 重馬場): 1着 (1:29.6)
総合評価: 優勝候補筆頭。基礎能力が他馬を凌駕。母父の血統から距離延長もプラスに働く可能性があり、死角らしい死角は見当たらない。
4
ピーチサワー (牝2・沖静男 騎乗)
血統背景: 父アドミラブル(青葉賞制覇、長距離馬)、母系もスタミナ色の濃い欧州血統。1700mはこなせる下地あり。
近走パフォーマンス: 成績は安定しているが、上位陣との時計の壁がある。2走前1400m勝利時のタイム1:32.1は、エムティジーク(1:28.5)と比較して3.6秒差。
11.09 (1500m, 稍重): 4着 (1:37.6) 10.28 (1400m, 不良): 1着 (1:32.1)
総合評価: 重賞級メンバーではスピード負けの懸念が強く、掲示板確保が現実的な目標。
5
グラシアレス (牡2・吉原寛人 騎乗)
血統背景: 父ミュゼスルタン、母父ディープスカイ。バランスの取れた配合。地方競馬を代表する名手・吉原寛人騎手が騎乗。
近走パフォーマンス: レベルの高いホッカイドウ競馬(門別)からの転入馬。門別の深い砂で鍛えられたパワーは金沢でも通用。前走はエムティジークに0.6秒差の2着。転入2戦目での上積みが期待できる。
10.28 (1400m, 不良): 2着 (1:29.1) 09.29 (1400m, 重馬場): 1着 (1:31.4) 08.14 (門別・アタック 1200m, 重馬場): 1着 (1:15.7)
総合評価: 対抗筆頭。一度対戦した経験を活かし、戦略的な騎乗で逆転を狙う可能性が高い。
6
グリーゼ (牝2・米倉知 騎乗)
血統背景: 父マテラスカイ(世界的なダートスプリンター)。血統的には短距離馬だが、キャリアが常識を覆す。
近走パフォーマンス: 最大の強みは、門別時代に1700m戦を経験し、勝ち馬から0.4秒差の3着に好走している点。この「1700m実戦経験」は大きなアドバンテージ。
10.28 (1400m, 不良): 4着 (1:30.1) 10.12 (1500m, 重馬場): 2着 (1:35.5) 09.04 (門別 1700m, 良馬場): 3着 (1:53.0)
総合評価: スピードの絶対値では劣るが、スタミナが問われる展開になれば浮上する可能性十分。連下として押さえるべき存在。
7
サノノサルバドール (牡2・塚本征吾 騎乗)
血統背景: 父スマートファルコン(ダートグレード競走勝ちまくり)。産駒は豊富なスタミナと粘り強さを受け継ぎ、金沢1700mへの血統的適性はメンバー中随一。
近走パフォーマンス: 距離が延びるにつれて成績を向上。前走1500m戦で逃げ切り完勝。勝ちタイム1:36.6も優秀。成長曲線は明らかに上向き。
11.09 (1500m, 稍重): 1着 (1:36.6) 10.28 (1500m, 不良): 2着 (1:38.1)
総合評価: 単穴候補。レース展開の鍵を握る存在。エムティジークが崩れた場合、ハナを切って押し切る可能性も。スタミナ面の不安が少なく、強気に乗れる。
8
リュシエンヌ (牝2・吉田晃 騎乗)
血統背景: 父シュヴァルグラン(ステイヤー)、母父サウスヴィグラス(スプリンター)。「スピード×スタミナ」配合。潜在能力はあるが、現状の完成度が問われる。
総合評価: エムティジークとの直接対決で大敗しており、時計面でも強調材料に欠ける。外枠からの距離ロスも懸念され、静観が妥当。
9
ムムターズショコラ (牝2・矢野貴之 騎乗)
血統背景: 父ミスチヴィアスアレックス、母父クロフネ。典型的な短距離パワー配合。1700mは適性外の可能性が高い。
総合評価: 2走前にエムティジークに9.1秒差の大敗。距離延長でさらにパフォーマンスを落としており、厳しい評価。
10
ピンクラズベリー (牝2・甲賀弘隆 騎乗)
血統背景: 全兄にG1馬サトノダイヤモンド。母父シンボリクリスエスからスタミナとパワーも受け継ぎ、距離延長をこなす底力は秘めている。
総合評価: 前走1500m戦を勝利し勢いに乗る。勝ちタイムは見劣るが、外枠からスムーズに流れに乗れれば、混戦になった際の連対候補として浮上する余地あり。
レース展開シミュレーション
序盤(スタート〜1コーナー):
エムティジーク(3番)がハナを主張。サノノサルバドール(7番)が2番手、グラシアレス(5番)がそれを見る3番手。イネスティマブル(1番)は中団インコースで脚を溜める。
中盤(向こう正面〜3コーナー):
エムティジークが単騎逃げならペースは落ち着く。サノノサルバドールやグラシアレスがプレッシャーをかければ、スタミナのない馬が脱落するサバイバルレースに。
終盤(4コーナー〜直線):
勝負所は3コーナーから。エムティジークが余力を持って直線に向くか、グラシアレスが並びかけるか、サノノサルバドールが粘り込むか。後方からはグリーゼやイネスティマブルが突っ込んでくる展開も。
結論と推奨馬
◎
3. エムティジーク
理由: 絶対的なスピード能力と完成度。時計が他馬と違い、距離延長も血統的にプラス。死角は極めて少ない。
◯
5. グラシアレス
理由: 門別で培った地力と名手・吉原騎手の戦略が武器。一度対戦した経験を活かし、逆転を狙う。
▲
7. サノノサルバドール
理由: スマートファルコン産駒のスタミナが魅力。距離延長でパフォーマンスを上げており、展開次第では押し切りも。
△
6. グリーゼ
理由: メンバー唯一の1700m経験馬。タフな展開になれば、その経験値が活きる。
△
1. イネスティマブル
理由: 最内枠から脚を溜め、直線でのマクリ一発に期待。
買い目推奨(参考)
- 馬単/馬連: 3 – 5, 7 (本線)
- 3連単フォーメーション:
- 1着: 3
- 2着: 5, 7
- 3着: 1, 5, 6, 7
まとめ
今年の金沢ヤングチャンピオンは、「エムティジークという怪物を、誰が、どうやって止めるか」が焦点。データと血統はエムティジークの圧倒的優位を示すが、競馬に絶対はない。グラシアレスの戦略、サノノサルバドールのスタミナ、グリーゼの経験値といった各馬の武器がぶつかり合う熱い戦いが予想される。当日のパドック気配や馬体重の増減も重要な判断材料となる。