2025年のジャパンカップで、海外馬「ロスアンゼルス」と国内馬「ロサンゼルス」の同名馬対決は実現するのでしょうか。本記事では、アルファベット表記が同一の馬が同時に出走できるのか、JRAの馬名登録基準と国際競走の特例を法務的観点から徹底分析。結論として同時出走は可能であり、その際の識別方法(馬名に国名を付記)についても詳しく解説します。
この記事の要点
- ジャパンカップでは、海外馬と国内馬の同名(同一アルファベット表記)対決が実現する可能性があります。
- 結論として、アイルランドの「ロスアンゼルス」と日本の「ロサンゼルス」の同時出走は法的に可能です。
- 理由は、招待される外国馬はJRAの国内馬名登録基準の適用を受けない特例措置があるためです。
- レース当日は、外国馬の馬名に「(愛)」のように調教国名を付記して明確に識別されるため、馬券購入時の混乱は起きません。
ジャパンカップで想定される「同名馬」問題とは
2025年のジャパンカップにおいて、ヨーロッパからの遠征馬が、すでに日本に存在する馬とアルファベット表記が同一の名前で出走する可能性が浮上しています。具体的には、’Los Angeles’という表記を共有する二頭の馬が同時に出走できるのか、そしてその場合の運用はどうなるのかという問題です。
問題の核心:2頭の「Los Angeles」
問題の核心は、日本初の国際招待競走であるジャパンカップという特殊な舞台で、以下の二頭が同時に出走可能か、という点にあります。
- 外国馬(招待馬): アイルランド調教馬「ロスアンゼルス (LOS ANGELES)」(牡4歳、A.オブライエン厩舎)
- 国内馬(JRA所属馬): 日本の現役競走馬「ロサンゼルス (Los Angeles)」(牡4歳)
本分析の目的
本記事では、JRAの馬名登録に関する国内規約と、ジャパンカップのような国際招待競走に適用される特例措置という、二つの法的枠組みを分析します。これにより、「両馬の同時出走は可能である」という結論を導き出し、その際に採用される具体的な識別方法と法的根拠を提示します。
JRAの馬名登録ルール:国内では同名は禁止
日本国内における競走馬の馬名登録は、「馬名登録実施基準」によって厳格に管理されています。この基準の根本原則は、馬券購入者などが個々の競走馬を明確に識別できるよう、既存の馬名との重複や類似性を徹底的に排除することにあります。
「馬名登録実施基準」の原則
JRAの馬名登録は、一つの馬名に対してカタカナ表記とアルファベット表記の二重基準を設けています。この基準は、JRAのレースに出走するすべての国内馬に適用されます。
「紛らわしい馬名」の解釈
「馬名登録実施基準」では、すでに登録されている馬名や「これらと紛らわしい馬名」は登録できません。「紛らわしい」かどうかの判断は、音の響きや見た目などに基づき、個別の事例ごとに審査会が判断します。そのため、国内登録においては、アルファベット表記が同一でカタカナ表記が異なる「ロスアンゼルス」と「ロサンゼルス」のようなケースは、「紛らわしい」と判断され登録が認められない可能性があります。
なぜ国際競走では「同名」が許可されるのか?
国内では厳格なルールがありますが、ジャパンカップのような国際競走では状況が異なります。
ジャパンカップは「招待競走」という特例
ジャパンカップは、海外の有力馬を「招待」して開催される国際競走です。この「招待」という形態が、国内の馬名登録制度との関係において決定的な鍵となります。
外国馬は国内ルールの適用外
ジャパンカップに出走するために短期的に来日する外国馬は、JRAの馬名登録原簿に「登録」されるわけではありません。彼らは自国で登録された「外国籍」の馬として一時的に出走します。したがって、アイルランドの「ロスアンゼルス」は、JRAの国内馬名登録基準の適用対象外となります。JRAには、アイルランドで正式に承認された馬名を変更させる法的権限はないのです。
2025年ジャパンカップで想定されるシナリオ
以上の法的枠組みに基づくと、2頭の「Los Angeles」がジャパンカップで対決するシナリオは十分に現実的です。
シナリオの現実性と2頭のプロフィール
このシナリオは、アイルランドの「ロスアンゼルス」が招待を受諾し、日本の「ロサンゼルス」が出走条件を満たした場合に発生します。特筆すべきは、両馬がアルファベット表記だけでなく、共に「牡4歳」(2021年生まれの同世代)であるという、極めて稀な偶然の一致です。
比較表:競合が想定される2頭の詳細
| 比較項目 | 外国馬 (招待馬) | 国内馬 (JRA所属馬) |
|---|---|---|
| 公式カタカナ表記 | ロスアンゼルス | ロサンゼルス |
| 公式アルファベット表記 | LOS ANGELES | Los Angeles |
| 性齢 | 牡4 | 牡4 |
| 所属 (調教国) | A.オブライエン (アイルランド) | (JRA所属厩舎) (日本) |
| 適用される馬名規約 | アイルランド競馬統括機関の規約 | JRA 馬名登録実施基準 |
| JRAレースでの識別 | 国名(愛)の付記が必須 | 原則として付記なし |
結論:レース当日の識別方法と馬券の表記
両馬がジャパンカップに同時出走した場合、JRAはどちらかの馬名を変更することはありません。馬券購入者の混乱を避けるための措置は、馬名の変更ではなく、「表示」の工夫によって行われます。
JRAが採用する公式な識別方法
JRAは国際競走において、外国馬の馬名に「(調教国)」を併記する運用プロトコルを確立しています。これは過去のジャパンカップでも恒常的に運用されており、例えば2024年のレースでは「オーギュストロダン(愛)」のように表記されました。
2025年ジャパンカップでの具体的な表示例
このプロトコルに基づき、2頭が同時出走した場合、出馬表やテレビ中継などでの表記は以下のように明確に区別されます。
- アイルランドの馬: ロスアンゼルス(愛)
- 日本の馬: ロサンゼルス
この国名識別子と、カタカナ表記の僅かな差異という二重の識別手段により、馬券購入時の混乱は法務的にも実務的にも防止されます。
専門家による最終的な見解
結論として、アイルランドの「ロスアンゼルス」と日本の「ロサンゼルス」がジャパンカップに同時に出走することは法的に可能です。この稀有なシナリオは、異なる国の登録制度が生んだ偶然であり、JRAのルール不備ではありません。むしろ、調教国名を付記するという堅牢な識別システムをJRAが備えていることで、競馬の公正性を維持しつつ国際化に対応している好例と言えるでしょう。


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