三冠最後の一冠、菊花賞。3000mの長丁場ではスタミナと仕上げの精度が問われます。勝敗の鍵を握る「追い切り」を専門家の評価と調教データから徹底分析。S評価のショウヘイ、エネルジコから、評価の分かれる王者エリキングまで、有力馬のコンディションを解き明かし、クラシック最終章を制する馬を探ります。
この記事の要点
- 最高評価(S評価)は、友道厩舎の王道パターンで仕上げられたショウヘイと、ルメール騎手が絶賛するエネルジコ。
- 前哨戦を制した王者エリキングは軽めの最終調整で評価が分かれるが、陣営の明確な戦略が見える。
- ジョバンニはキャリア最高の状態で一発逆転を狙い、ゲルチュタールは豊富な乗り込み量でスタミナ勝負に備える。
- コンディション面で最も信頼度が高いのは、完璧な仕上がりを見せるショウヘイとエネルジコの2頭。
【S評価】最高潮の仕上がりで戴冠を狙う特注馬
追い切りから判断して、これ以上ないほどの最高評価を得た馬たちがいます。心身ともにキャリアのピークを迎え、戴冠の準備は万全と見ていいでしょう。
ショウヘイ: 友道厩舎の”王道”パターンで心身ともに最高潮
神戸新聞杯2着からの巻き返しを狙うショウヘイの最終調整は、陣営の自信が透けて見える完璧な内容でした。最終追い切りは栗東ポリトラックコースで行われ、5ハロン67秒7、ラスト1ハロンは11秒3という鋭い伸びを披露。友道康夫調教師も「弾むような感じで、本当に具合がいいと思う」と、その状態の良さに満面の笑みを見せています。
この調整過程は、レース1週前にCWコースで強度の高い負荷をかけ、当週はポリトラックで反応を確かめるという、数々の名馬を育て上げた友道厩舎の「王道」パターンです。この確立された手法は、陣営が描いた通りの青写真で仕上がったことを意味します。専門家からも、フォームのブレが少なく、柔らかみと力強さを兼ね備えた動きに最高の賛辞が送られています。
エネルジコ: ルメールが惚れ込む「四輪駆動」の末脚
関東馬ながら栗東に滞在して調整を進めてきたエネルジコは、気配が日に日に上昇しています。最終追い切りはCWコースでの併せ馬で、僚馬を楽々と突き放し、ラスト2ハロンを11秒9-11秒3という驚異的な加速力で締めくくりました。この動きは、まさに本格化を告げるにふさわしいものです。
名手C.ルメール騎手は、そのパワフルでバランスの取れた走りを「SUVっぽい」「四輪駆動の感じ」と最大級の賛辞で表現。これは後肢の推進力がロスなく馬体全体に伝わっている証拠であり、3000mの長丁場を走り切る上で最も重要な資質です。普段はリラックスし、レースでは最高のパフォーマンスを発揮する精神的な切り替えの上手さも、長距離戦で生きる大きな武器となるでしょう。
【有力馬診断】王者エリキングと注目の実力馬たち
S評価の2頭に待ったをかける実力馬たちも、虎視眈々と最後の栄冠を狙っています。特に、前哨戦を制した王者の状態には注目が集まります。
エリキング: 王者の余裕か、それとも一抹の不安か?
前哨戦の神戸新聞杯を制したエリキング。最終追い切りはCWコースでの単走で、ラスト1ハロン11秒8と意図的に軽めの調整でした。中内田充正調教師は「オーバーワークにならないように」と、馬をフレッシュに保つことを最優先したと説明しています。
この「静」の調整が評価を二分しており、一部専門家は集中力散漫な点を指摘し「B評価」に留めています。しかし、1週前には調教師自ら騎乗し力強い時計をマークしており、状態の上昇には確かな手応えを感じています。これは1週前に負荷をかけ、当週はリラックスさせるという明確な意図を持った戦略であり、この馬の特性を熟知した陣営の仕上げの哲学を信じるかが鍵となります。
ジョバンニ: 皐月賞時を凌ぐ気配で一発を狙う
神戸新聞杯3着から、さらなる上昇を期すジョバンニの状態はすこぶる良好です。最終追い切りはCWコースでの単走で、軽く促されるとシャープに反応し、専門家から高い「A評価」が与えられました。杉山晴紀調教師は「かなり状態の良かった皐月賞と比較しても、同様かそれ以上」と強気なコメント。キャリア最高の状態で大一番を迎えられることは間違いなく、上位馬に不安があれば一気に頂点に立つ可能性を秘めています。
ゲルチュタール: 豊富な乗り込み量でスタミナ勝負に活路
長距離戦で問われるスタミナにおいて、ゲルチュタールの調整過程は非常に興味深いです。帰厩後、約1ヶ月で8本もの追い切りを消化。これは3000mを走り切るための強固なスタミナベースを築くという陣営の明確な意図の表れです。杉山晴紀調教師も「ここ目標に仕上がりいい」と万全の状態を強調。豊富な乗り込み量で培った持久力を武器に、消耗戦に持ち込んで他馬を根負けさせる展開が、この馬の描く勝利への道筋です。
【全頭追い切り評価】菊花賞出走馬コンディション一覧
| 馬番 | 馬名 | 最終追い切り短評 | 総合評価&注目ポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | コーチェラバレー | 落ち着き欲しい | B-: 動きは力強いが精神的な幼さが課題。当日の気配次第。 |
| 2 | アマキヒ | まずまず仕上がる | C+: 状態は平行線で大きな上積みは感じられない。 |
| 3 | ライトトラック | 渋太さ目につき | B: 消耗戦になれば粘り強さで掲示板の可能性。 |
| 4 | ヤマニンブークリエ | 先週強い稽古消化 | B: 順調だが状態維持の域を出ない印象。 |
| 5 | ジョバンニ | 気配良化 | A: キャリア最高の状態で有力候補の一角。 |
| 6 | ミラージュナイト | 馬体の張り上々 | B: パワーあふれる姿でタフなレースでの一発を期待。 |
| 7 | ショウヘイ | 先週好時計 | S: 陣営の必勝パターンで完璧な仕上がり。 |
| 8 | レクスノヴァス | 久々も動き軽快 | B+: レース間隔の影響は感じられない。長距離実績が不気味。 |
| 9 | エネルジコ | 動き軽快 | S: 爆発的な動きで急上昇中。戴冠の可能性十分。 |
| 10 | ジーティーアダマン | フットワーク軽快 | B: 状態は良さそうだが、上位勢との力差がどうか。 |
| 11 | マイユニバース | 馬体良化 | B: レースの鍵を握るが、気性面が最大の懸念材料。 |
| 12 | ゲルチュタール | 先週強い稽古消化 | A-: スタミナ強化の調整は好感。3000mに向けて万全。 |
| 13 | アロンディ | 攻め動かぬタイプ | C: 調教からは推しづらいが、レースでの勝負根性は侮れない。 |
| 14 | エキサイトバイオ | 攻め強化 | B: 意図的に調教を強化しており状態は良い。 |
| 15 | エリキング | 馬体重めも動き良 | B+: 王者らしい独特の調整。動きは力強く効果的。 |
| 16 | ラーシャローム | 輸送考慮攻め軽め | C: 追い切りからは判断不能。過去の実績で評価すべき。 |
| 17 | レイヤードレッド | 遅れも余裕残し | C: 追い比べで見劣るのは好材料ではない。 |
| 18 | レッドバンデ | 追走併入で良 | B: 追い切りを重ねるごとに良化しており、良い状態で臨めそう。 |
結論:最終追い切りから見えた「買い」の馬は?
ここまでの分析を総合的に判断すると、ショウヘイとエネルジコの状態は傑出しています。両馬ともに陣営の思惑通り、あるいはそれ以上の完璧な仕上がりを見せており、コンディションという観点からは、この2頭が最も信頼できる存在と言えるでしょう。
一方で、最も興味深い存在が王者エリキングです。世代屈指の実績と能力は疑いようがありませんが、その調整法は評価が分かれます。彼の勝利を信じることは、名門厩舎の調整手腕を信じることに等しいと言えます。
そして、この上位3頭の牙城を崩す可能性を秘めるのが、ジョバンニとゲルチュタールです。ジョバンニはキャリア最高の状態で一発逆転を、ゲルチュタールは豊富なスタミナを武器に、厳しい流れになった際の浮上を狙っています。
専門家の最終結論を確認する
本稿は各馬のコンディション分析が中心です。最終的な予想の結論や、印を回した馬券の買い目については、以下のリンクから専門家の最終見解をご確認ください。


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