はじめに:JBCスプリントへの最重要ステップ、電撃の6ハロン戦を制するのは
秋のダート競馬シーズンが本格化する中、全国のスプリント自慢たちが大井競馬場に集結する。TCK(東京シティ競馬)が誇る3夜連続交流重賞のフィナーレを飾る「第59回 東京盃(JpnII)」は、単なる一つの重賞ではない。これは11月に行われるダートスプリント界の頂上決戦、「JBCスプリント」への出場権を懸けた最重要プレリュードである 1。
このレースの勝ち馬には、JBCスプリントへの優先出走権が与えられるため、ここでの勝利は年末の大舞台への道を切り拓くことを意味する 1。過去にはレッドルゼル、コパノキッキング、ドンフランキーといった、国内に留まらず世界を舞台に活躍した屈指のスプリンターたちがこのレースを駆け抜けていった 3。その歴史が示すように、東京盃を制することは、世代や地域のチャンピオンであることの証明であり、同時に世界レベルの実力を持つことの試金石ともなる。
2025年の戦線は、まさに群雄割拠の様相を呈している。破竹の勢いで重賞を連勝中のJRA所属馬、海外遠征でその格を証明した実力馬、そして55kgの斤量を武器に古馬の牙城を崩さんとする3歳の新星。地方競馬で実績を積んだ古豪たちも虎視眈々と一発を狙っており、一瞬たりとも目が離せない電撃の1200m戦が繰り広げられることは間違いない。全国から集った快速馬たちのプライドがぶつかり合うこの一戦を、コース分析、過去データ、そして全出走馬の徹底診断を通じて解き明かしていく。
第59回東京盃(JpnII) レース概要と大井1200mコース徹底分析
予想を組み立てる上で、まずはレースの基本条件と舞台となるコースの特性を正確に把握することが不可欠である。
レース概要
- 格付け: JpnII 2
- 開催日: 2025年10月9日(木) 4
- 競馬場: 大井競馬場 4
- 距離: ダート1200m (右回り) 4
- 出走資格: サラブレッド系3歳以上 2
- 負担重量: 別定。3歳55kg、4歳以上56kg、牝馬2kg減。過去のGI・JpnI勝ち馬は2kg増、GII・JpnII勝ち馬は1kg増となる(2歳時の成績は対象外) 2。
- 1着賞金: 4,000万円 2
大井1200m・外回りコース徹底分析
東京盃の舞台となる大井ダート1200mは、南関東4競馬場で最も広く、直線が長い外回りコースを使用する、非常にタフなスプリントコースである 6。その特性は、レース展開に決定的な影響を与える。
コースレイアウトと展開への影響
スタート地点は向正面の2コーナー出口付近に設けられている 1。ここから3コーナーまでの直線距離が約500mと非常に長いのが最大の特徴だ 9。これにより、一般的な小回りコースのスプリント戦とは異なり、外枠の馬でも先行争いに加わるための時間的・物理的猶予が生まれる 1。ダッシュ力のある馬であれば、外枠からでもスムーズに好位を確保することが可能で、枠順の有利不利は比較的小さいとされる 9。
しかし、それはあくまで序盤の話である。3コーナーまでに内側に潜り込めなければ、終始外を回らされる大きな距離ロスを強いられることになる 8。そのため、この長いバックストレッチでは、ポジションを巡る激しい先行争いが繰り広げられるのが常だ。
勝敗を分ける「二幕構成」のドラマ
このコースの神髄は、その「二幕構成」にある。第一幕は、スタートから3コーナーまでの「純粋なスピード勝負」。ここで各馬は自身の持つ最高速度を駆使して、理想的なポジションを奪い合う。
そして第二幕は、南関東最長となる386mの最終直線で繰り広げられる「スピード持続力(スタミナ)勝負」である 6。前半の激しいペース争いで脚を使った馬たちは、この長い直線で一杯になり、失速していく。一方で、道中で巧みに息を入れ、脚を溜めることができた差し・追い込み馬にとっては、前の馬を捉える絶好の舞台となる 6。
実際にラップデータを見ても、序盤で加速し、コーナーで一度息が入り、直線で再加速するという流れが典型的である 6。この構造が、単なる逃げ馬やスピード一辺倒の馬を淘汰し、戦術的な立ち回りと最後まで脚色を鈍らせない底力を兼ね備えた馬に微笑む。大井1200mを制するためには、序盤のスピードと終盤のスタミナ、その両方を高いレベルで満たしている必要があるのだ。
過去10年のデータから読み解く!東京盃の”勝者の法則”
過去のレース結果は、未来を占うための貴重な羅針盤となる。ここでは過去10年間のデータを多角的に分析し、東京盃に潜む「勝者の法則」を明らかにする。
データ分析サマリー
カテゴリー | 傾向・統計 | 重要ポイント |
人気 | 1番人気は[5-1-1-3]で3着内率70.0%と堅実 12。4番人気以内が[8-6-8-18]と馬券の軸 13。一方で6・7番人気が計2勝と穴を開ける傾向も 12。 | 上位人気は信頼できるが、中穴の一発も警戒。9番人気以下は[0-0-0-57]と絶望的 13。 |
所属 | JRA所属馬が[8-6-8-28]で圧勝 13。特にJRA関西馬が8勝全てを挙げる 12。地方馬は船橋所属が2勝、浦和所属が2着3回と健闘 12。 | JRA関西馬が断然の中心。関東馬は勝ち切れないが2,3着は多い。地方勢では船橋・浦和に注意。 |
年齢 | 5歳以上が中心。特に7歳馬[2-3-1-17]、8歳馬[1-3-1-14]の成績が良好 12。3歳馬の好走は少なく、4歳馬も勝ち星はあるが2着がない 12。 | 経験豊富なベテランが強いレース。高齢馬のリピーターも目立つ 14。 |
負担重量 | 56.0kg超の馬が[4-2-5-7]、3着内率61.1%と驚異的な成績 13。斤量が重いほど信頼性が高い。 | 実績馬が斤量を克服して好走する傾向が顕著。斤量は能力の証と見るべき。 |
前走着順 | 前走3着以内の馬が[8-6-8-46]と大半を占める 13。前走9着以下からは[0-0-0-22]と馬券になった馬はいない 13。 | 臨戦過程が極めて重要。好調を維持してここに臨む馬が絶対条件。 |
前走頭数 | 前走が11頭立て以上のレースだった馬が[10-10-10-87]と、馬券圏内30頭の全てを占める 13。 | 少頭数レースからのステップは割引が必要。多頭数で揉まれた経験が活きる。 |
馬体重 | 前走の馬体重が480kg以上の馬が[8-9-9-75]と優勢 13。近年は480kg未満の馬の好走例がない。 | パワーが要求されるコースであり、馬格のある馬が有利。 |
浮かび上がる「東京盃ウィナー」のプロファイル
これらのデータを統合すると、典型的な東京盃の好走馬像が鮮明に浮かび上がってくる。
それは、**「JRA関西所属で、5歳以上の経験豊富なベテラン。前走の多頭数レースを3着以内に好走し、56kgを超える斤量を課されるほどの確かな実績を持つ、480kg以上の馬格に恵まれた馬」**である。
このプロファイルは、個別のデータを単独で見るよりも強力な予測フィルターとなる。一つでも多くの項目に合致する馬は、それだけで高く評価すべき存在と言えるだろう。逆に、このプロファイルから大きく外れる馬、例えば「地方所属の3歳馬で、前走少頭数で大敗した小柄な馬」などは、過去のデータからは極めて厳しい戦いを強いられることが示唆されている。
【全頭診断】2025年東京盃 出走馬徹底解説
それでは、これらの分析を踏まえ、今年の出走馬16頭を1頭ずつ詳細に診断していく。各馬の近走内容、状態を示す追い切り、そして総合的な評価をまとめた。
第59回東京盃 出走馬一覧
枠番 | 馬番 | 馬名 | 性齢 | 斤量 | 騎手 | 調教師 | 所属 |
1 | 1 | エンテレケイア | 牡7 | 56.0 | 吉原寛人 | 小久保智 | 浦和 |
1 | 2 | マックス | 騸8 | 56.0 | 御神本訓史 | 福永敏 | 大井 |
2 | 3 | ドリームビリーバー | 牡6 | 56.0 | 藤田凌 | 阪本一栄 | 大井 |
2 | 4 | コンティノアール | 牡5 | 56.0 | 北村友一 | 矢作芳人 | 栗東 |
3 | 5 | ウインリブルマン | 牡7 | 56.0 | 岡村健司 | 赤嶺本浩 | 大井 |
3 | 6 | ジョンソンテソーロ | 牡6 | 56.0 | 本田正重 | 小久保智 | 浦和 |
4 | 7 | サンライズアムール | 牡6 | 56.0 | 池添謙一 | 小林真也 | 栗東 |
4 | 8 | ドンアミティエ | 牡5 | 56.0 | 坂井瑠星 | 今野貞一 | 栗東 |
5 | 9 | アームズレイン | 牡5 | 56.0 | 赤岡修次 | 佐々木仁 | 川崎 |
5 | 10 | トーセンサンダー | 牡6 | 56.0 | 安藤洋一 | 小久保智 | 浦和 |
6 | 11 | マースインディ | 牡10 | 56.0 | 藤本現暉 | 阪本一栄 | 大井 |
6 | 12 | ヤマニンチェルキ | 牡3 | 55.0 | 岩田望来 | 中村直也 | 栗東 |
7 | 13 | イグザルト | 牡6 | 56.0 | 野畑凌 | 荒山勝徳 | 大井 |
7 | 14 | シアージスト | 牡6 | 56.0 | 矢野貴之 | 坂井英光 | 大井 |
8 | 15 | オメガレインボー | 牡9 | 56.0 | 笹川翼 | 小久保智 | 浦和 |
8 | 16 | クロジシジョー | 牡6 | 56.0 | 戸崎圭太 | 岡田稲男 | 栗東 |
(出典: 15)
1枠1番 エンテレケイア
- 近走成績と評価: 地方馬の中ではトップクラスのスプリンター。昨年の習志野きらっとスプリント勝ち馬で、3走前の東京スプリントでは逃げ粘って3着と、大井1200mの実績は十分 10。先行力が最大の武器で、最内枠を引いた今回はその持ち味を最大限に活かせる可能性がある。
- 追い切り分析: 攻め駆けしないタイプながら、最終追い切りでは自己ベストをマーク 17。調教本数も十分に消化しており、夏場の疲れや前走の反動は見られない 17。状態は安定していると見て良いだろう。
- 総合評価: 地方馬最先着候補の一頭。同型との兼ね合いが鍵になるが、最内枠からスムーズにハナを切れれば、昨年のように粘り込みも考えられる 1。
1枠2番 マックス
- 近走成績と評価: 8歳を迎えたベテランだが、そのスピードに衰えは見られない。昨年のこのレースで2着に好走しており、コース適性は証明済み 1。自在性のある脚質で、どんな展開にも対応できるのが強み。
- 追い切り分析: 追い切りでは常に力強い動きを見せる馬。今回も活気のあるフットワークが伝えられており、状態は高いレベルで安定している様子 18。
- 総合評価: リピーターの好走が目立つレース傾向とも合致しており、侮れない存在 14。昨年同様、好位から抜け出す競馬ができれば、再び馬券圏内に浮上する可能性は十分にある。
2枠3番 ドリームビリーバー
- 近走成績と評価: 大井生え抜きの6歳馬。オープンクラスで堅実な走りを見せているが、交流重賞のメンバーに入ると一枚見劣る感は否めない。
- 追い切り分析: 乗り込み量は豊富で、最終追い切りでは併せ馬で相手に食らいつく動きを見せている 19。状態自体は悪くなさそうだが、大きな上積みまでは感じられない。
- 総合評価: 地元大井コースへの適性は高いが、今回は相手が強力。展開の助けがあってどこまで食い込めるか。厳しい戦いが予想される。
2枠4番 コンティノアール
- 近走成績と評価: ケンタッキーダービーにも出走経験のある実力馬 20。本来は中距離を得意としているが、高いポテンシャルを秘める。末脚勝負のタイプで、展開が向けば強烈な追い込みを見せる 21。
- 追い切り分析: 陣営のコメントからは、追い切りで集中力を欠く面が見られるものの、長めからしっかりと負荷をかける調教を消化 22。まだ本調子ではない可能性もあるが、地力でカバーできるか。
- 総合評価: 1200mへの距離対応が最大の鍵。ハイペースになって前が崩れる展開になれば、その末脚が炸裂するシーンも。能力的には通用するだけに、展開利が見込めるなら押さえておきたい一頭。
3枠5番 ウインリブルマン
- 近走成績と評価: 7歳のベテラン。過去に左前脚繋靱帯炎を発症しており、順調さを欠いた時期もあった 23。近走は苦戦が続いている。
- 追い切り分析: 3頭併せの真ん中でリラックスして走れており、精神面の落ち着きは評価できる 24。動き自体は力強いものの、時計的に目立つものではない。
- 総合評価: クラスの壁に当たっている印象は否めない。厳しいレースになるだろう。
3枠6番 ジョンソンテソーロ
- 近走成績と評価: JRAから佐賀を経て南関東へ移籍。ドバイワールドカップやコリアカップにも挑戦したウィルソンテソーロの近親にあたる血統背景を持つ 25。佐賀では重賞勝ちの実績もあるが、今回は相手が一気に強化される 27。
- 追い切り分析: 国内での最終追い切りでは、坂路でまずまずの時計をマークしている 26。しかし、トップクラスと比較すると物足りなさが残る。
- 総合評価: 交流重賞のペースに対応できるかが鍵。まずは南関東のペースに慣れるところから始めたいのが本音だろう。
4枠7番 サンライズアムール
- 近走成績と評価: 現在、水無月S、クラスターカップ(GIII)とオープンクラスを連勝中と、まさに本格化の兆しを見せている 5。先行して押し切るスピードは現役屈指。netkeibaの予想オッズでは堂々の1番人気に支持されている 5。
- 追い切り分析: 状態は絶好調。最終追い切りは栗東坂路で単走ながら51秒2、ラスト1ハロン11秒9というシャープな時計を記録 29。帰厩後、毎週のように51秒台の好時計を連発しており、「連勝中のデキをキープしている」とのコメント通り、万全の仕上がりと見て間違いない 29。
- 総合評価: 今回のメンバーでは実績、勢いともに最上位。JRA関西馬というデータの後押しもある 12。初の大井、初のナイターという課題はあるが、それを補って余りあるほどの充実ぶり。レースの主導権を握り、そのまま押し切る可能性が最も高い。
4-8 ドンアミティエ
- 近走成績と評価: 天王山Sを含む3連勝でここに駒を進めてきた上がり馬 30。安定した先行力と終いの確実な伸びが持ち味。
- 追い切り分析: 9月上旬にゲート試験を合格後、在厩でじっくりと調整 31。Wコースでの追い切りを4週連続で消化し、いずれも馬なりで好時計をマークするなど、動きには余裕が感じられる 31。最終追い切りも終い重点でラスト1ハロン11秒7と鋭く伸び、臨戦態勢は整っている 29。
- 総合評価: データ分析サイト「ウマニティ」のモデルでは、減点項目がゼロの唯一の馬として最高評価を受けている 32。人気ではサンライズアムールやクロジシジョーに譲るかもしれないが、状態の良さとレースセンスは引けを取らない。伏兵として最も警戒すべき一頭。
5枠9番 アームズレイン
- 近走成績と評価: 川崎所属の実力馬。昨年の習志野きらっとスプリントを制するなど、地方馬同士では常に上位争いを演じる。
- 追い切り分析: 1週前追い切りではCWでしっかりと負荷をかけられており、乗り込みは順調 33。しかし、近走のレース内容からは、JRAのトップクラス相手ではやや力不足の感も。
- 総合評価: 展開が向けば掲示板争いは可能だが、勝ち切るまでにはもう一段階のパワーアップが必要か。
5枠10番 トーセンサンダー
- 近走成績と評価: 浦和の小久保厩舎に所属する6歳馬。過去に骨折歴がある 34。オープンクラスでの実績は乏しく、今回は厳しい戦いが予想される。
- 追い切り分析: 入念に乗り込まれてはいるが、追い切りの動きは粘り強いものの、瞬発力に欠ける印象 35。時計的にも目立つものではない。
- 総合評価: 参加することに意義がある、という一戦か。上位争いは難しいだろう。
6枠11番 マースインディ
- 近走成績と評価: 10歳の大ベテラン。長きにわたり南関東のダート戦線を支えてきた。さすがに往年の力はなく、近走は苦戦続き。
- 追い切り分析: 追い切り本数は消化しているが、時計は平凡 17。年齢的な衰えは隠せない。
- 総合評価: 無事にレースを終えてほしい、というのが正直なところ。馬券的な妙味はない。
6枠12番 ヤマニンチェルキ
- 近走成績と評価: フィールド唯一の3歳馬。バイオレットSを豪快な差し切りで制するなど、その末脚には目を見張るものがある 36。交流重賞連勝と勢いに乗っており、55kgの斤量は大きなアドバンテージ 37。
- 追い切り分析: 状態は右肩上がり。最終追い切りは栗東坂路で51秒6、ラスト1ハロン12秒2と自己ベストを更新 29。陣営からも「さらにデキが良くなっている」との強気なコメントが出ており、まさに絶好調と言える 29。
- 総合評価: 過去のデータでは3歳馬は苦戦傾向にあるが 12、この馬の勢いと完成度はそのジンクスを打ち破る可能性を秘めている。古馬の強豪相手にどこまで通用するか、試金石の一戦。クロジシジョーと同じく、ハイペースになればなるほどチャンスが広がる。
7枠13番 イグザルト
- 近走成績と評価: 大井の荒山厩舎が送り出す期待馬。東京スプリントにも出走経験があり、大井コースへの適性は高い 38。
- 追い切り分析: 夏の東海Sに向けて調整されていたが 39、今回はその時以上の状態にあるかが鍵。追い切りの動きは力強いが、トップクラスと比較するとやや見劣る。
- 総合評価: 地元の利を活かして上位進出を狙う。展開が向けば3着争いに加わる可能性はあるが、勝ち負けまでは厳しいか。
7枠14番 シアージスト
- 近走成績と評価: JRAのリステッド競走勝ちの実績を持つ実力馬が南関東へ移籍 10。大井コースはこれまで全て3着以内と抜群の相性を誇る 40。
- 追い切り分析: 最終追い切りでは併せ馬で相手に食らいつくしぶとさを見せており、状態は良好 40。主戦の矢野貴之騎手とのコンビも安定しており、陣営の期待は大きい。
- 総合評価: コース適性の高さはメンバー随一。JRA勢が強力だが、その牙城の一角を崩すならこの馬か。スムーズに好位で運べれば、馬券圏内への食い込みが期待される。
8枠15番 オメガレインボー
- 近走成績と評価: 9歳を迎えたベテラン。JRA在籍時にはエルムSで2着になるなど、重賞戦線で活躍した実績を持つ 41。南関東移籍後も堅実な走りを見せている 42。
- 追い切り分析: 久々のレースとなるが、追い切りの動きはシャープで重め感はない 43。力は出せる仕上がりにあると見て良いだろう。
- 総合評価: さすがに全盛期の力はないが、豊富な経験と地力は侮れない。展開がもつれるようなら、その巧者ぶりを発揮して上位に顔を出す場面も。
8枠16番 クロジシジョー
- 近走成績と評価: 今年のドバイゴールデンシャヒーン(G1)で世界の強豪相手に4着と大健闘し、その実力を証明した 1。堅実な末脚が最大の武器で、大井の長い直線はこの馬にとって絶好の舞台となる。
- 追い切り分析: 前走後は在厩で調整。最終追い切りは栗東坂路で52秒0、ラスト1ハロン12秒1と、この馬なりに順調な仕上がり 29。追い切りでの推進力ある走りは健在で、陣営も好感触を得ている様子 45。
- 総合評価: 国際的なレースで証明された能力は、このメンバーでは間違いなくトップクラス。レース展開に注文がつくタイプだが、サンライズアムールらが作るであろうハイペースは、この馬にとって願ってもない展開。直線一気の豪脚で全てを飲み込むシーンが目に浮かぶ。
プロの視点は?主要メディア・著名人の予想を一挙公開
個々の馬の分析に加え、競馬メディアや専門家の見解を集約することで、レースの全体像がより明確になる。ここでは、各方面の予想をまとめて紹介する。
市場コンセンサス(netkeiba.com 予想オッズ)
まず、多くの競馬ファンが参考にする市場の評価を見てみよう。netkeiba.comが発表した予想オッズ(10月9日時点)では、上位人気は以下のように形成されている 5。
- サンライズアムール: 2.9倍
- クロジシジョー: 4.5倍
- ヤマニンチェルキ: 5.4倍
- ドンアミティエ: 8.3倍
やはり、目下絶好調のサンライズアムールが1番人気に支持され、実績で勝るクロジシジョー、3歳の勢いがあるヤマニンチェルキが続く形となっている。市場は、この3頭を中心としたレースになると見ているようだ。
データ分析モデルの見解(ウマニティ)
一方で、過去のデータを基にした機械的な分析では、異なる視点が提供されている。競馬情報サイト「ウマニティ」のデータ分析モデルでは、過去の好走馬が持つ傾向(所属、年齢、前走成績など)から各馬を評価。その結果、減点項目が全くなかったのは、ただ一頭⑧ドンアミティエであった 32。
これに減点1で④コンティノアール、⑫ヤマニンチェルキ、⑭シアージストが続いている 32。この分析は、市場の人気とは少し異なる序列を示しており、特にドンアミティエを高く評価している点が興味深い。
専門紙・メディアの論調
競馬専門紙「競馬ブック」は、ヤマニンチェルキについて「1200mでは4戦3勝、2着1回と連対率100パーセント」とその距離適性を高く評価し、好調を維持していると分析している 21。
また、SNSなどでは「中央の常連馬がいなくなって混戦模様」といった声も見られ 5、絶対的な主役が不在で、どの馬にもチャンスがあるという見方が広がっていることも窺える。
これらの情報を総合すると、市場の人気はサンライズアムールに集まっているものの、データ分析はドンアミティエを推奨しており、そこに実績のクロジシジョーと勢いのヤマニンチェルキが絡むという構図が見えてくる。この評価のズレこそが、馬券検討の妙味と言えるだろう。
レース展開予想:主導権を握るのはどの馬か?
スプリント戦の勝敗を分ける最大の要因は、レースのペースである。ここでは、各馬の脚質からレース展開をシミュレーションし、どの馬に「展開利」が生まれるかを予測する。
ペースを握るのはサンライズアムール
今回のメンバー構成を見る限り、レースの主導権を握るのは⑦サンライズアムールで間違いないだろう。前走のクラスターカップも逃げ切り勝ちを収めており、そのスピードは群を抜いている 10。
これに絡んでいくのが、最内枠を引いた①エンテレケイアだ。彼もまた先行力が武器であり、スタートから積極的にポジションを取りにくるはずだ 10。
この2頭が前に行くことで、レースのペースは**「ハイペース」**になる可能性が極めて高い。特に、スタートから3コーナーまで約500mの直線が続く大井1200mのコース形態は、先行争いをさらに激化させる要因となる 9。
展開の恩恵を受けるのは差し・追い込み勢
この激しい流れは、後方で脚を溜める馬たちにとって絶好の展開となる。
最大の恩恵を受けるのは、間違いなく⑯クロジシジョーだろう。彼の武器は、世界レベルの舞台でも通用した強烈な末脚。前半で先行勢が互いに体力を消耗し合ってくれれば、386mの長い直線で前方の馬たちをまとめて捉える、というこの馬にとっての必勝パターンに持ち込める。
同様に、3歳の⑫ヤマニンチェルキもこの展開を歓迎する一頭だ。彼もまた、鋭い差し脚を武器としており、ハイペースは持ち味を最大限に活かすための最高のスパイスとなる。
このレースの構図は、「自らのスピードでレースを作るサンライズアムールが、その作り出したハイペースによって、最大のライバルであるクロジシジョーに絶好の機会を与えてしまう」という、非常にドラマチックなものになる可能性を秘めている。サンライズアムールが後続の追撃を振り切れるのか、それともクロジシジョーの豪脚の前に屈するのか。レースの勝敗は、この一点に集約されるかもしれない。
まとめと最終結論への誘導
ここまで、第59回東京盃(JpnII)を様々な角度から分析してきた。最後に、要点を整理しよう。
- サンライズアムール: 絶好調のスピードスター。自らレースを作り、そのまま押し切れるかが焦点。JRA関西馬というデータも強力な後押し。
- クロジシジョー: 国際級の実績を持つ本格派。展開が向けば、その末脚は確実に炸裂する。レースのペースが最大の味方となる。
- ヤマニンチェルキ: 勢いに乗る3歳の新星。55kgの斤量を武器に、世代交代を狙う。そのポテンシャルは計り知れない。
- ドンアミティエ: データ分析が導き出した「隠れた実力馬」。完璧な臨戦過程で、上位勢をまとめて飲み込む可能性を秘める。
レースの鍵は、サンライズアムールが作るであろう「ハイペース」。これが、差し馬であるクロジシジョーやヤマニンチェルキにとって最大の追い風となる。大井の長い直線が、スプリンターたちの純粋なスピードだけでなく、最後まで走り抜く底力をも問う、非常に見応えのある一戦となるだろう。
本記事の分析を踏まえた最終的な結論、印、そして具体的な買い目については、以下のリンクからご覧いただけます。プロの最終的な見解をぜひご確認ください。
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