2025年富士ステークス – マイル王決定戦線へ向けた最重要前哨戦
秋のマイル王決定戦「マイルチャンピオンシップ」へと続く最重要プレップレース、第28回富士ステークス(G2)が東京競馬場・芝1600mを舞台に開催されます 1。安田記念を制した現役トップマイラーと、その牙城を崩さんと勢いに乗る古馬勢、そして夏を越して心身ともに成長を遂げた3歳世代の実力馬が激突する、まさに目が離せない一戦です。
長い直線とタフなコース設定で知られる東京マイルでは、スピード能力はもちろんのこと、最後まで脚色を鈍らせない持続力も問われます。それゆえに、各馬がレースに向けてどのような最終調整を施してきたかを示す「追い切り」は、その馬の現在のコンディションを測る上で極めて重要な指標となります。過去の戦績や能力評価に加え、調教で示された動きの質や陣営の感触を深く読み解くことで、馬券の的中に繋がる真の有力馬が見えてくるのです。本記事では、各陣営の最終追い切りを徹底的に分析し、その評価を明らかにしていきます。
【S評価】最高評価 – 王者の風格と覚醒の気配
最終追い切りにおいて、時計、動きの質、そして陣営のコメントの全てが最高レベルで噛み合った馬を「S評価」とします。レースでの勝利に最も近い存在と言えるでしょう。
ジャンタルマンタル – 王者の風格、動きに一切の淀みなし
項目内容最終追い切り日10月15日(水)コース栗東・坂路 (重)時計 (4F-3F-2F-1F)52.9 – 37.8 – 24.2 – 11.7脚色馬なり余力公式短評体も動きも良く
安田記念を制し、現役マイル王としてこの一戦に臨むジャンタルマンタル。その最終追い切りは、王者の名に恥じない圧巻の内容でした。10月15日、力を要する重馬場の栗東坂路を単走で駆け上がると、全体時計$52.9$秒をマーク。特筆すべきはラスト1ハロンで、馬なりのまま楽な手応えで$11.7$秒という鋭い伸び脚を披露しました 1。
この時計の価値をさらに高めているのが、陣営から発せられる自信に満ちたコメントです。高野調教師は「先週追い切ってから動きが軽くなった」「今日は楽な感じでしまいも馬なりで動けていた」と、その状態に太鼓判を押しています 3。速い時計を出すこと自体は可能でも、それを馬に無理をさせることなく、余力を残したまま達成できるのは、心身ともに最高の状態にある証拠です。報道陣からも「きびきび駆け上がった」と評されるなど、その動きには一切の無駄がなく、力強さとスピードが見事に融合していました 4。客観的な時計、陣営の確かな手応え、そして専門家が認める動きの質。これら全てが完璧に揃った今、この馬に死角は見当たりません。
マジックサンズ – 心身ともに覚醒、3歳世代の筆頭格
項目内容最終追い切り日10月15日(水)コース栗東・坂路 (重)時計 (4F-3F-2F-1F)54.7 – 39.8 – 25.2 – 11.8脚色馬なり余力公式短評久々も好気配
NHKマイルカップで僅差の2着と世代トップクラスの実力を示したマジックサンズが、夏を越して驚くべき成長を遂げています 1。最終追い切りの全体時計は$54.7$秒と目立つものではありませんが、その内容は時計以上に中身の濃いものでした 1。ラスト1ハロンで軽く気合をつけられると鋭く反応し、$11.8$秒をマーク。その動きは「沈むような重心移動」から繰り出される「しなやかなフットワーク」と評され、春先に見られた甘さが消え、一流アスリートとしての完成度が格段に高まったことを示唆しています 6。
この動きを目の当たりにした須貝調教師の「めちゃくちゃ良かったね」「いい夏を過ごしてくれたのは間違いない。馬の成長がうかがえる」という興奮気味のコメントが、何よりもその進化を物語っています 6。さらに「豊ちゃん(武豊騎手)は前走後にマイルがベスト!と言っていた」と、鞍上とのコンセンサスも取れており、陣営の自信は揺るぎないものがあります 7。時計という数字だけでは測れない動きの質の向上と、陣営の隠しきれない期待感。古馬の強豪相手でも、今のマジックサンズならば互角以上に渡り合える可能性は十分です。
【A評価】万全の態勢 – 勝ち負けを意識できる好仕上がり
S評価馬には一歩譲るものの、それに次ぐ好状態にあり、展開次第で勝ち負けに加わる力を持つ馬たちを「A評価」とします。
ソウルラッシュ – 異例のプール調整、その真意は
7歳を迎えた歴戦の猛者、ソウルラッシュの最終調整は異例とも言えるプールでのものでした 1。一見すると、脚元への不安などから時計を出せないのではないかと勘繰りたくなりますが、その内実を紐解くと、陣営の巧みな調整手腕と自信が見えてきます。
この馬の「実質的な最終追い切り」は、レース1週前の10月9日に行われた栗東CWコースでの調教と見るべきでしょう。この日、僚馬を追走する形で進められた追い切りでは、直線で内に進路を取ると、馬なりのまま$10.7$秒という驚異的なラップを叩き出しています 1。この一本で勝負駆けができる状態は既に完成しており、最終週のプール調整は、海外遠征なども経験してきたベテランの馬体をフレッシュな状態でレースに送り出すための、計算され尽くした最終仕上げなのです 1。派手さはありませんが、中身は極めて濃い。百戦錬磨の陣営が送り出す万全の状態と評価すべきです。
ガイアフォース – 休み明けを感じさせない盤石の態勢
項目内容最終追い切り日10月15日(水)コース栗東・坂路 (重)時計 (4F-3F-2F-1F)54.8 – 39.7 – 25.6 – 12.3脚色馬なり余力公式短評仕上がり良好
安田記念2着の実績を持つガイアフォースも、休み明けながら万全の態勢を整えてきました 1。最終追い切りは栗東坂路で$54.8$秒、終い$12.3$秒と派手さはありませんが、これは陣営の狙い通りのもの 1。杉山晴調教師が「やり過ぎず、軽過ぎずのサジ加減。うまく調教できた」と語るように、レース当日に最高の状態を迎えるための逆算された調整が施されています 9。
陣営から「休み明け感はない」とのコメントが出ている通り、動きに重苦しさは一切なく、仕上がりは良好です 9。前走で効果を見せたブリンカーを継続して着用する点も好材料で、精神面での集中力も維持できています 9。突出した派手さはないものの、その調整過程はプロフェッショナルそのもの。信頼できる一頭として高い評価が必要です。
【B評価】軽視禁物 – 虎視眈々と上位を狙う伏兵たち
上位評価馬には及ばないものの、調教で良い動きを見せ、上位争いに食い込む可能性を秘めた伏兵たちをまとめて評価します。
シャンパンカラー – G1馬の復権へ、動きの質が向上
最終追い切りに騎乗した戸崎圭太騎手が「動きも反応も良かった。すごく体が使えるようになっている」と絶賛のコメントを残しており、復調気配が濃厚です 10。美浦坂路でマークした$51.7$秒、終い$12.3$秒という時計も、このコメントを裏付ける力強いものでした 1。G1馬のプライドを懸けて、侮れない一頭です。
ウンブライル – 順調そのもの、好調をキープ
陣営から「前走後も体調は良さそう」「毎日元気良く調教をこなせている」といったコメントが出ている通り、トラブルなく順調に調整が進められています 9。美浦Wコースでの最終追い切りでも、併せた相手に軽快な動きで先行同入しており、高いレベルで好調を維持していることが窺えます 1。
キープカルム & ウォーターリヒト
キープカルムは、先週にしっかり負荷をかけ、今週は感触を確かめる程度の軽めの調整 9。中竹調教師が「精神的にどっしりしているのがいい」と語るように、心身のバランスが取れている点が魅力です 9。
ウォーターリヒトは、石橋調教師が「ラストもしっかりした動き」と評価しており、カイ食いが戻るなど体調面も上向きです 9。得意の東京コースで末脚が爆発すれば、一発の可能性を秘めています。
追い切り評価ランキングと最終総括
ここまでの分析を基に、追い切り評価をランキング形式でまとめます。
評価馬名最終追い切りハイライト陣営コメントの熱量総合評価・一言メモSジャンタルマンタル栗坂 52.9-11.7秒 (重)非常に高い文句なしのNo.1評価。心身ともにピーク。Sマジックサンズ栗坂 終い11.8秒非常に高い動きの質が抜群。本格化ムード漂う。A+ソウルラッシュ10/9 CW 終い10.7秒高い異例の最終調整も中身は濃い。万全。Aガイアフォース栗坂 54.8-12.3秒高い陣営のプラン通り。安定感は随一。B+シャンパンカラー美坂 51.7-12.3秒高い騎手が絶賛。復調気配が濃厚。Bウンブライル美W 併走で軽快普通順調に好調を維持。相手なりに走れる。
総括すると、最終追い切りからはジャンタルマンタルとマジックサンズの2頭が、他の出走馬から一歩リードしている印象を受けます。王者の風格漂うジャンタルマンタルと、本格化を迎えたマジックサンズの一騎打ちムードも感じさせます。しかし、ソウルラッシュの計算され尽くした調整や、ガイアフォースの盤石の態勢も決して軽視はできません。非常にレベルの高い、見応えのある一戦となることは間違いないでしょう。
最終的な予想の結論はこちら
本記事では各馬の追い切りを徹底的に分析し、その状態をS, A, Bのランクで評価しました。しかし、競馬の予想は追い切りだけでは決まりません。レース当日の馬場状態、確定した枠順、展開の利などを総合的に考慮した最終的な印(◎○▲△)と買い目の結論については、以下のリンクから専門家のプロフィールページでご確認ください。
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