天皇賞(秋)2025の全出走馬の最終追い切りを徹底分析。専門的な見地から各馬の仕上がりをS・A・B・Cで客観的に評価します。宝塚記念覇者メイショウタバルや巻き返しを狙うブレイディヴェーグなど、有力馬の真の状態をデータに基づき解説。馬券検討に必須の追い切り評価ランキングも公開します。
この記事の要点
- 天皇賞(秋)2025の最終追い切りでは、メイショウタバルとブレイディヴェーグの2頭が最高評価の「S」を獲得。
- A評価にはホウオウビスケッツ、ソールオリエンス、タスティエーラが入り、上位争いが期待される仕上がり。
- 追い切り評価は時計だけでなく、動きの質、息遣い、公式短評の3要素を多角的に分析。
- 全出走馬の追い切りデータと評価を一覧表で確認でき、馬券検討の重要な判断材料を提供。
総評:美浦・栗東トレセンの馬場状態と追い切りの全体傾向
最終追い切りが集中した10月29日(水)と30日(木)、美浦・栗東の両トレーニングセンターの馬場は、ウッドチップコース、坂路ともに「良」馬場で、全体的に時計が出やすいコンディションでした。このような馬場状態の中、各馬は本番さながらの熱のこもった走りを見せ、G1にふさわしいハイレベルな追い切りが展開されました。
特に目を引いたのは、春のグランプリ・宝塚記念を制したメイショウタバルの圧巻の動き、そして前走の敗戦から見事な巻き返しを感じさせるブレイディヴェーグの驚異的な切れ味です。また、叩き2戦目で着実な上昇カーブを描くホウオウビスケッツの走りも特筆に値します。まずは全出走馬の追い切りデータを一覧で確認し、全体の傾向を掴んでいきましょう。
| 馬番 | 馬名 | 追い切り日 | コース | 馬場 | 全体時計 | 終い1F | 公式短評 | 
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | コスモキュランダ | 10/29(水) | 美坂 | 良 | 51.9 | 12.1 | 脚取り確か | 
| 2 | アーバンシック | 10/29(水) | 美W | 良 | 84.0 | 11.5 | この一追いで上昇 | 
| 3 | ジャスティンパレス | 10/29(水) | 栗CW | 良 | – | 11.8 | 毛ヅヤ冴える | 
| 4 | ソールオリエンス | 10/30(木) | 美坂 | 良 | 52.5 | 11.7 | 終いの伸び良 | 
| 5 | タスティエーラ | 10/29(水) | 美W | 良 | 65.1 | 11.6 | 意欲的な攻め内容 | 
| 6 | ブレイディヴェーグ | 10/29(水) | 美W | 良 | 80.8 | 11.0 | 動き軽快 | 
| 7 | マスカレードボール | 10/30(木) | 美坂 | 良 | 53.2 | 11.8 | この一追いで良化 | 
| 8 | ホウオウビスケッツ | 10/29(水) | 美W | 良 | 65.9 | 11.5 | 気配良化 ↗ | 
| 9 | ミュージアムマイル | 10/29(水) | 栗坂 | 良 | 53.8 | 12.3 | 動きまずまず | 
| 10 | エコロヴァルツ | 10/29(水) | 栗坂 | 良 | 54.8 | 12.6 | 好気配示す | 
| 11 | シランケド | 10/29(水) | 栗坂 | 良 | 56.0 | 12.6 | フットワーク軽快 | 
| 12 | セイウンハーデス | 10/30(木) | 栗坂 | 良 | 53.3 | 11.9 | 体も動きも良く | 
| 13 | メイショウタバル | 10/29(水) | 栗CW | 良 | 68.9 | 11.1 | 馬体充実目を引く | 
| 14 | クイーンズウォーク | 10/29(水) | 栗CW | 良 | 68.8 | 11.3 | 時計平凡も伸び良 | 
注: 全体時計は、坂路コースは4ハロン、ウッドチップコースは主に6ハロンまたは5ハロンの計測タイムを記載しています。
【S評価】最高評価は2頭!万全の仕上がりで頂点を狙う
今回の追い切りで、他の出走馬とは一線を画す、まさに完璧と言える仕上がりを見せたのは2頭。頂点に最も近い存在として最高評価を与えます。
メイショウタバル:王者が見せる完璧な仕上がり(評価:S)
10月29日、栗東CWコース(良)で行われた最終追い切り。6ハロンから時計を出し、ラスト1ハロンは11.1秒という、他を圧倒する切れ味を披露しました。特筆すべきは、この時計が鞍上が強く追うことなく、馬の気に任せた「馬なり余力」の状態でマークされた点です。これは、馬自身の有り余る能力と、心身ともに最高のコンディションにあることの何よりの証明と言えるでしょう。
公式短評に記された「馬体充実目を引く」という言葉は、単に調子が良いというレベルを超え、競走馬として完成の域に達していることを示唆する最上級の賛辞です。前走の宝塚記念を制した際、武豊騎手は「ちょうどいいペースで運べましたね」「4角を回る勢いが良かった」とコメントしており、この馬が自分のリズムで走れた時の強さを強調していました。G1を制した馬にとって、その後の調整はさらなる上積みよりも、最高の状態をいかに維持するかが重要となります。今回の楽な手応えでの猛時計は、まさにそのピークコンディションを完璧に維持できていることを示しており、王者の名に恥じない仕上がりです。
ブレイディヴェーグ:前走敗戦の言い訳を証明する驚愕の11.0秒(評価:S)
10月29日、美浦Wコース(良)での最終追い切りは、見る者に衝撃を与えました。全体時計80.8秒から繰り出されたラスト1ハロンは、驚異の11.0秒。これは今回の出走メンバーの中で最速のラップタイムであり、この馬が本来持つ非凡な瞬発力が完全に蘇ったことを示しています。
公式短評の「動き軽快」という評価も、この時計が力任せではなく、馬がリラックスした中で、しなやかかつ質の高い動きで記録されたことを裏付けています。この圧巻のパフォーマンスは、前走・新潟記念での敗戦(6着)の理由を明確に物語っています。レース後、津村騎手は敗因の一つとして「暑さもあったと思う」と気候面の影響を指摘していました。このコメントの信憑性を、今回の追い切りが見事に裏付けた形です。涼しい秋の気候となり、夏負けの影響が完全に払拭されたことで、G1馬の本来のパフォーマンスを取り戻したと断言できます。前走の着順だけを見て評価を下げると、痛い目に遭う可能性が極めて高い一頭です。
【A評価】上位争い必至!好仕上がりを見せる有力馬たち
S評価の2頭には僅かに譲るものの、極めて高いレベルで仕上がっており、G1のタイトルを十分に狙える状態にある有力馬たちを分析します。
ホウオウビスケッツ:上昇気配を裏付ける力強い走り(評価:A+)
10月29日、美浦Wコース(良)でラスト1ハロン11.5秒の好時計をマーク。併せ馬でもきっちりと同入を果たし、実戦さながらの中身の濃い調教を消化しました。注目すべきは、公式短評の「気配良化」というコメントに加え、状態の上昇度を示す「↗」マークが付与されている点です。これは、陣営が前走からの明確な上積みを実感している何よりの証拠です。前走の毎日王冠では2着に好走。レース後、岩田康誠騎手は「出負けした分ですかね」と敗因を挙げつつも、「去年と比べてハミを噛むところがなかった」と気性面の成長を高く評価していました。精神的な成熟が、今回の追い切りで見せたリラックスした走り、そして終いの鋭い伸びに直結していることは明らかです。叩き2戦目、まさに絶好のタイミングでピークを迎えようとしています。
ソールオリエンス:府中で蘇る末脚、驚異の加速ラップ(評価:A)
10月30日、美浦坂路(良)での追い切り内容は、この馬の非凡な能力を改めて示しました。4ハロン52.5秒、3ハロン37.2秒という時計もさることながら、特筆すべきはラスト2ハロン23.5秒 – 1ハロン11.7秒という驚異的な加速ラップです。これは、坂路の後半で一段違うギアにシフトチェンジできる能力の証明であり、「終いの伸び良」という公式短評もそれを裏付けています。宝塚記念6着時は、松山騎手が「逃げた馬が勝つ展開のなか、頑張ってくれました」とコメントしたように、展開が向かなかった側面がありました。今回の追い切りは、展開に左右されない絶対的な末脚を、府中の大舞台で爆発させるための準備が整ったことを示唆しています。長い直線を持つ東京コースでこそ、この加速力は最大の武器となるでしょう。
タスティエーラ:海外帰りのハンデを克服する意欲的な調整(評価:A)
10月29日、美浦Wコース(良)で5ハロン65.1秒、ラスト1ハロン11.6秒を記録。併せたオープン馬に0.2秒遅れはしましたが、これは意図的に強い負荷をかけた結果と解釈すべきです。公式短評の「意欲的な攻め内容」という言葉が、この調教の意図を明確に物語っています。楽をさせるのではなく、レース勘を完全に取り戻すために、あえて厳しい内容を課した中身の濃いものです。香港でのクイーンエリザベス2世カップ(G1)を制した実力は本物。レース後、レーン騎手は「タフな長い脚を使ってくれました」「力がついてきた印象」と、馬の本格化を伝えていました。海外遠征帰りの調整は決して容易ではありませんが、陣営がこれだけ厳しい調教を課せるのは、馬の状態がそれに応えられるほど良好であることの裏返しに他なりません。
【B評価】侮れない中堅・穴馬勢の仕上がりをチェック
上位評価馬には一歩譲るものの、状態は良好で展開次第では馬券圏内に食い込む可能性を秘めた馬たちを評価します。
コスモキュランダ (評価: B+): 10月29日、美浦坂路で4ハロン51.9秒、1ハロン12.1秒をマーク。全体時計は速く、力強いフットワークが目立ちます。「脚取り確か」の短評通り、順調そのものと言えるでしょう。前走オールカマー8着からの巻き返しへ、態勢は整いました。
ジャスティンパレス (評価: B+): 10月29日、栗東CWで終い重点の追い切り。4ハロン52.4秒からラスト1ハロン11.8秒と鋭い伸び脚を見せました。「毛ヅヤ冴える」の短評が示す通り、見た目のコンディションは抜群です。宝塚記念3着の実力は確かであり、休み明けでも軽視は禁物です。
アーバンシック (評価: B): 10月29日、美浦Wでラスト1ハロン11.5秒と時計は優秀です。しかし、前走宝塚記念で14着と大敗した後だけに、「この一追いで上昇」という短評は、まだ良化の途上であることを示唆しています。レース後、ルメール騎手も「ギアが上がらなかった」と首を捻っており、どこまで変わり身を見せられるかが鍵となります。
セイウンハーデス (評価: B): 10月30日、栗東坂路で4ハロン53.3秒、ラスト1ハロン11.9秒を記録。時計は水準以上で、「体も動きも良く」という短評通り好調を維持しています。エプソムC勝ちの実績が示すように、東京コースへの適性は高く、侮れない存在です。
マスカレードボール (評価: B): 10月30日、美浦坂路でソールオリエンスと併せ馬を行いました。「この一追いで良化」の短評通り、ダービー2着時の状態に近づきつつありますが、まだ完調手前という印象も受けます。
ミュージアムマイル (評価: B): 10月29日、栗東坂路で4ハロン53.8秒、ラスト1ハロン12.3秒。「動きまずまず」という評価です。前走セントライト記念を快勝した3歳馬の勢いはありますが、追い切りの動きから、ここを勝ち負けするまでの上積みは感じられませんでした。
【C評価】割引が必要?追い切りから見える懸念材料
追い切りの内容を精査した結果、万全の状態とは言い難く、本番では厳しい戦いが予想される馬たちです。
シランケド (評価: C+): 10月29日、栗東坂路での追い切りは4ハロン56.0秒、ラスト1ハロン12.6秒と、G1出走馬としては非常に物足りない時計に終わりました。公式短評は「フットワーク軽快」とポジティブなものですが、この時計との間には明らかな乖離があります。前走の新潟記念を勝利した後、坂井騎手は「爆発的な脚」「牝馬同士ならトップレベル」と最大級の賛辞を送っていました。その時の絶賛コメントと、今回の緩い追い切り内容との大きなギャップが最大の懸念材料です。陣営が意図的に軽めにした可能性もありますが、状態面に何らかの不安を抱えているリスクも考慮すべきでしょう。
エコロヴァルツ (評価: C): 10月29日、栗東坂路で4ハロン54.8秒、ラスト1ハロン12.6秒。時計、動きともに平凡で、「好気配示す」という短評も、G1で勝ち負けを意識させるほどの迫力には欠けます。
クイーンズウォーク (評価: C): 10月29日、栗東CWでの追い切りは、ラスト11.3秒とまずまずの伸びを見せたものの、「時計平凡も伸び良」という短評が示す通り、全体的には強調材料に乏しい内容でした。前走の新潟記念で馬場入場時に転倒し競走除外となるアクシデントがあっただけに、その精神的、肉体的な影響も考慮に入れる必要があります。
結論:最終追い切り評価ランキング
全馬の分析を総合し、最終的な追い切り評価をランキング形式でまとめます。このランキングが、あなたの馬券検討の一助となれば幸いです。
| 評価 | 馬名 | 評価の根拠(一言) | 
|---|---|---|
| S | メイショウタバル | 宝塚記念覇者の風格。時計・動き・馬体、全てが完璧な仕上がり。 | 
| S | ブレイディヴェーグ | 前走の敗因を完全に払拭。メンバー最速の終い11.0秒は圧巻。 | 
| A+ | ホウオウビスケッツ | 叩き2戦目で着実に上昇。陣営の「気配良化↗」評価を裏付ける走り。 | 
| A | ソールオリエンス | 坂路での加速ラップは秀逸。府中の直線で末脚が爆発する可能性大。 | 
| A | タスティエーラ | 海外帰りでも意欲的な調教。高い負荷をかけられ状態は確実に上向き。 | 
| B+ | コスモキュランダ | 坂路で好時計をマークし、力強さを見せる。順調な仕上がり。 | 
| B+ | ジャスティンパレス | 終いの伸びは鋭く、毛ヅヤも良好。休み明けでも能力は侮れない。 | 
| B | セイウンハーデス | 体調の良さが動きに表れている。東京コースで一発の可能性も。 | 
| B | アーバンシック | 終いの時計は良いが、大敗からの立て直し途上の感は否めない。 | 
| B | マスカレードボール | ダービー2着時のデキに近づいているが、完調一歩手前か。 | 
| B | ミュージアムマイル | 動きは悪くないが、G1で勝ち切るには更なる上積みが欲しい。 | 
| C+ | シランケド | 前走後の高評価とは裏腹に、追い切り時計が物足りず、状態に疑問符。 | 
| C | クイーンズウォーク | 前走除外の影響も懸念され、追い切りの動きも平凡。 | 
| C | エコロヴァルツ | 時計、動きともにG1レベルでは見劣りする。 | 
最終的な予想と買い目
この追い切り評価は、あくまで各馬の「状態面」を判断する材料です。レースの最終的な結論を導き出すには、これに加えて枠順の確定、当日の馬場状態、そしてレース展開の想定など、他の要素を総合的に考慮する必要があります。全ての要素を加味した最終的な予想と買い目については、以下のリンクからご覧いただけます。
 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 

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