2025年のアルテミスステークス(GIII)出走馬の最終追い切りを徹底分析。未来の女王候補たちが集う重要な一戦で、各馬の完成度やポテンシャルをデータと専門家の視点から診断します。最高評価『S』を獲得した白毛の逸材マルガをはじめ、フィロステファニ、タイセイボーグら有力馬の状態を解き明かし、レースの核心に迫ります。
この記事の要点
- 白毛の注目馬マルガが、完璧な調教内容で追い切り最高評価『S』を獲得。
- フィロステファニ、タイセイボーグ、ミツカネベネラも高評価『A』を獲得し、万全の態勢。
- ミツカネベネラは最終追いで「ガラッと変わった」と陣営が証言するほどの急上昇ぶりを見せる。
- 各馬の時計、動き、陣営コメントを多角的に分析し、レース本番の仕上がりを診断。
はじめに:アルテミスステークス2025の展望
2歳牝馬にとって、未来のクラシック戦線を占う上で極めて重要な一戦、アルテミスステークス(GIII)が今年も東京競馬場を舞台に開催されます。過去の勝ち馬には、後のG1ホースが名を連ねることも多く、まさに未来の女王候補たちがその素質の片鱗を見せる登竜門として位置づけられています。
キャリアの浅い若駒たちが集うこのレースを的確に分析するためには、各馬の完成度やポテンシャルを測る指標として「追い切り」の評価が不可欠となります。本記事では、レース直前に行われた各出走馬の最終追い切りについて、時計、動き、そして陣営や専門家からのコメントを徹底的に分析します。単なるタイムの比較に留まらず、その内容から各馬のコンディション、精神的な成熟度、そしてレースへ向けた仕上がり具合を多角的に診断。どの馬が最高の状態で大一番に臨むのか、その答えをデータに基づき導き出します。
【追い切り評価:S】最高評価を獲得した注目馬マルガ
今回の出走馬の中で、調教内容において最高評価『S』を獲得したのは、白毛の血統でデビュー戦から大きな注目を集めるマルガです。その最終追い切りは、時計以上に内容の濃さを感じさせる、まさに「完璧」と呼ぶにふさわしいものでした。
最終追い切りデータと内容
10月22日、栗東の坂路コースで行われた最終追い切りでは、助手を背に全兄であるカルパ(古馬2勝クラス)を追走する形でスタートしました。前半は兄の後ろでじっくりと脚を溜め、最後まで馬なりのまま余力を残した手応えで、4ハロン(F)を55.2秒、ラスト1ハロンを12.5秒で駆け抜けました。数字の上では特筆すべきものではないかもしれませんが、併せたカルパに0.4秒先着しており、公式の短評でも「仕上がり良好」と高く評価されています。
専門家と陣営の視点
この追い切りを目の当たりにした須貝尚介調教師は、「完璧。時計も理想的。折り合いもついていたみたいだし、思い描いていた調教ができた」と手放しで絶賛し、まさに満点の評価を与えています。陣営が思い描いた通りのプロセスで、万全の態勢が整ったことを示唆するコメントです。
さらに、10月16日の追い切りに騎乗した武豊騎手も「いい動きでした。状態としてはいいと思うし、夏より落ち着きがありました」と好感触を伝えており、精神面の成長を高く評価しています。デビュー戦ではその前向きな気性が今後の鍵になるとされていましたが、夏を越して心身ともに大きな成長を遂げたことが窺えます。
休養期間中のフィジカルな成長も顕著です。陣営からは「最初は線が細いという感じだったが、筋肉の張りが良くなっている。トモに丸みが出てきたね」というコメントがあり、馬体がパワーアップしていることがわかります。専門家の分析においても、この追い切りは絶賛されています。ある分析では、ラスト2ハロンが11.5秒、11.2秒というラップを刻んだ1週前の追い切り内容と合わせ、「これはもう文句なしに評価できる調教内容です」と断言。最終追い切りに関しても、まだ余力を感じさせる動きから「追えばまだまだ弾けそうな動き」と評され、文句なしの『S』評価が下されました。
データが示唆する隠れたテーマ
マルガの評価を『S』たらしめているのは、単なる時計や動きの良さだけではありません。その背景にある二つの重要なテーマが、彼女の非凡な才能と完成度を物語っています。
第一に、「精神的な成熟度」の飛躍的な向上です。デビュー戦の武豊騎手のコメントでは、前向きな気性のコントロールが課題として挙げられていました。しかし、今回の追い切りに関する複数のコメントは、彼女が「夏より落ち着き」を見せていることを裏付けています。その証左となったのが、最終追い切りの内容です。併走相手の全兄カルパが道中で「とにかく掛かりまくり」という状況であったにもかかわらず、マルガ自身はそれに全く動じることなく、「そんなの関係ねぇ状態で、スムーズに登坂していた」と報告されています。これは、若駒離れした集中力と精神的な強さの表れです。
第二に、陣営が施した調教が「速さ」ではなく「制御」を重視したものである点です。須貝調教師が「完璧」と評した最終追い切りのラスト1ハロンは12.5秒と、力強いものの全力疾走ではありません。これは、陣営が意図的に派手な時計を追わず、レース本番を想定した調教を課したことを意味します。有り余る才能をレース当日に最大限発揮させるための、極めて高度なマネジメントです。この制御された力強い動きこそが、マルガが万全の状態にあることを何よりも雄弁に物語っています。
【追い切り評価:A】高評価!万全の態勢で挑む有力馬たち
最高評価には一歩及ばないものの、それに準ずる素晴らしい仕上がりを見せ、万全の態勢で本番に挑む有力馬たちがいます。各馬それぞれが、特筆すべき良化や成長の跡を見せており、勝ち負けを演じるに足る状態にあると判断できます。
フィロステファニ:秘めたる爆発力と向き合う陣営
新馬戦を強烈な末脚で勝利したフィロステファニ。気性面に課題を残すとされながらも、そのポテンシャルは高く評価されており、最終追い切りでは着実な進境を見せました。10月22日、栗東坂路にて単走で行われた最終追い切りは、馬なりで4ハロン54.0秒、ラスト1ハロン12.4秒をマーク。全体時計は目立ちませんが、最後まで軽快なフットワークを維持し、「久々も動き軽快」と評価されています。デビュー戦の課題から成長を遂げ、荒削りな才能が制御されつつあるパワーへと進化しており、心身ともにレースへ向けて最高の状態に仕上がりつつあることが、一連の流れから読み取れます。
タイセイボーグ:経験値と安定感が光る実力派
既に重賞で2着の実績を持つタイセイボーグ。1戦1勝馬が多いメンバー構成の中で、その豊富なキャリアと安定した末脚は大きな武器となります。10月22日、栗東のCW(ウッドチップ)コースで追い切られ、6ハロン82.0秒からラスト1ハロン12.1秒を馬なりで記録。一貫して軽快なフットワークが目立ち、「フットワーク軽快」と評価されています。派手さはないものの、彼女の追い切りは高いレベルでの状態維持を示唆しており、GIIIでの実績とプロフェッショナルな走りは、信頼性の面で他を圧倒します。
ミツカネベネラ:急上昇!最終追いで一変
デビュー勝ちの後、ここに駒を進めてきたミツカネベネラ。最終追い切りで見せた動きは、まさに「急上昇」という言葉がぴったりの状態にあります。10月22日、美浦のW(ウッドチップ)コースで追い切られ、5ハロン67.6秒、ラスト1ハロンは11.7秒という鋭い伸びを馬なりで披露。騎乗した津村明秀騎手は「先週はもう一つだったが、今週はガラッと変わった」と、この一週間での劇的な変化を証言しています。馬の状態がレースに向けて完璧なタイミングでピークを迎えつつあることを示す、何よりの証拠です。
ルーチェフィオーレ:軽快な動きで力試しへ
未勝利戦を逃げ切ってここに臨むルーチェフィオーレ。着実に力をつけており、最終追い切りでも順調な仕上がりを見せました。10月22日、美浦Wコースにて、6ハロン83.5秒、ラスト1ハロン11.9秒を馬なりでマーク。管理する嘉藤貴行調教師は、「順調です。ここは力試しになるけど、そこそこやれていい力はあるはず」と、控えめながらも自信を覗かせています。堅実な優等生タイプであり、有力候補の一角であることは間違いありません。
【追い切り評価:B】順調な仕上がりを見せる各馬の動向
勝ち負けまではもう一段階の上積みが欲しいものの、各馬ともに順調に調整過程を消化し、レースへ向けて態勢を整えています。ドナルンバ (B+)美浦Wコースでの最終追い切りは、休み明けながら「一息入るも仕上る」との評価。上原佑調教師の「以前に比べて走りに重厚感が出た」というコメント通り、身体的な成長が期待されます。ハッピーエンジェル (B)美浦坂路での最終追い切りは、「小気味いい走り」と評されるシャープな動き。武市調教師が「しっかりと最後まで我慢ができていた」と語るように、控える競馬にも対応できる可能性を示しました。バースデイフライト (B)栗東坂路での最終追い切りは、「終いの伸び良」と評価される力強いフィニッシュ。新谷調教師が指摘する「芯が入って体幹が良くなった」というフィジカル面の成長が、最後のひと伸びに繋がっています。レディーゴール (B)栗東坂路での最終追い切りは、「一息入るも動き良」と、休み明けでも好調を維持。リフレッシュ効果でフレッシュな状態でレースに臨めそうです。ヒルデグリム (B-)美浦Wコースでの最終追い切りは、「伸び物足りず」という厳しい評価。小野調教師は巻き返しに期待を寄せていますが、追い切りの動きからは明確な懸念材料が残ります。
アルテミスステークス2025 追い切り評価サマリー
これまでの詳細な分析を、一目で比較検討できるよう一覧表にまとめました。各馬の仕上がり具合を総合的に判断してください。
| 馬名 | 最終追い切り評価 | コース・時計 | 注目コメント |
|---|---|---|---|
| マルガ | S | 栗東坂路 4F 55.2-12.5 | 「完璧。時計も理想的。思い描いていた調教ができた」(須貝師) |
| フィロステファニ | A | 栗東坂路 4F 54.0-12.4 | 「久々も動き軽快」 課題の気性面で進境を見せる (公式短評/分析) |
| タイセイボーグ | A | 栗東CW 6F 82.0-12.1 | 「フットワーク軽快。シャープな脚捌き」 経験と安定感は随一 (公式短評/分析) |
| ミツカネベネラ | A | 美浦W 5F 67.6-11.7 | 「先週はもう一つだったが、今週はガラッと変わった」(津村騎手) |
| ルーチェフィオーレ | A | 美浦W 6F 83.5-11.9 | 「順調です。そこそこやれていい力はあるはず」(嘉藤師) |
| ドナルンバ | B+ | 美浦W 6F 83.8-12.0 | 「以前に比べて走りに重厚感が出た」(上原佑師) |
| ハッピーエンジェル | B | 美浦坂路 4F 52.5-12.6 | 「小気味いい走り。最後まで我慢ができていた」(武市師) |
| バースデイフライト | B | 栗東坂路 4F 55.0-12.1 | 「終いの伸び良。芯が入って体幹が良くなった」(新谷師) |
| レディーゴール | B | 栗東坂路 4F 54.5-12.9 | 「一息入るも動き良」(公式短評) |
| ヒルデグリム | B- | 美浦W 6F 85.3-11.9 | 「伸び物足りず」 陣営の期待に応えられていないか (公式短評/分析) |
結論:追い切り分析の総括
今回の追い切り分析を通じて、各馬の状態を詳細に検証しました。その結果、心身ともに完璧な仕上がりを見せたマルガが最高評価『S』を獲得。また、課題を克服しつつあるフィロステファニ、そして最終追いで劇的な良化を見せたミツカネベネラといった馬たちが、それに続く高い評価を得ています。これらの馬が、レース当日に最高のパフォーマンスを発揮する可能性が高いと判断されます。
本記事では各馬の状態を徹底的に分析しましたが、これを踏まえた最終的な印や買い目を含むレース結論については、以下のリンクから専門家の予想をご確認ください。


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