序章:天皇賞(秋)への登竜門 – 2025年産経賞オールカマーの重要性
秋のG1戦線が本格化する中、その前哨戦として極めて重要な位置を占めるのが、第71回産経賞オールカマー(GII)です。2025年9月21日、中山競馬場の芝2200mを舞台に、秋の大舞台を目指す実力馬たちが集結します 。
このレースの勝者には、伝統と格式を誇る天皇賞(秋)への優先出走権が与えられます 。単なるステップレースではなく、G1への切符を賭けた真剣勝負の場であり、1着賞金6700万円という金額もその価値を物語っています 。
舞台となる中山芝2200mは、JRAのコースの中でも屈指のタフなコースとして知られています。正面スタンド前の急坂をスタート直後とゴール前の二度、合計で二回駆け上がるレイアウトは、出走馬にパワーとスタミナの両方を要求します 。約310mと短い直線も特徴で、瞬発力だけでなく、コーナーワークや位置取りの巧さも勝敗を分ける重要な要素となります 。
したがって、オールカマーにおける「追い切り」の評価は、単にスピードや時計の良し悪しを見るだけでは不十分です。美浦のウッドチップコースでどれだけ華麗な動きを見せても、中山の坂を克服できなければ意味がありません。各馬の調教内容から、この特異なコース設定に対応できるだけの「パワー」と「持続力」が備わっているかを見極めることこそが、的中のための絶対条件と言えるでしょう。本記事では、各陣営の最終調整から各馬の状態を徹底的に分析し、その核心に迫ります。
【結論先行】追い切り評価ランキング!最高評価「S」を獲得したのは?
詳細な分析に入る前に、まずは最終追い切りから導き出した評価ランキングを提示します。どの馬が最高の状態でレース当日を迎えるのか、その序列を一目でご確認ください。
馬名 | 総合評価 | 注目ポイント |
レガレイラ | S | 圧巻の切れ味でラスト11秒2。心身ともに完全に復調し、女王復活をアピール。 |
コスモキュランダ | A+ | 前走時から一変。馬なりのまま楽々先着し、弥生賞を勝った中山で巻き返しの気配十分。 |
ヨーホーレイク | A | 坂路で力強いフットワーク。陣営も舞台適性に自信を見せており、上位争いは必至。 |
クロミナンス | A- | 長期休養明けも、それを感じさせない軽快さ。いきなり動ける状態にある。 |
ドゥラドーレス | B+ | ひと追いごとに良化も、まだ完調手前か。最終追いの動きが取捨の鍵。 |
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【S評価】レガレイラ – 女王復活へ、疑いなしの最高評価
最終追い切り:異次元の切れ味でラスト11秒2
秋の始動戦を迎えるレガレイラが、最終追い切りで圧巻の動きを披露しました。美浦ウッドチップコースで行われた3頭併せ。道中は僚馬の後ろでじっくりと脚を溜め、直線で内に進路を取ると、軽く促されただけで鋭く反応。瞬く間に2頭を置き去りにし、ラスト1ハロンは驚異の11秒2を記録しました 。ゴール板を過ぎても余力は十分で、心身ともに最高の状態にあることを強く印象付けました。
この動きは、1週前追い切りの内容から確信へと変わるものでした。9月10日の1週前追い切りでも美浦ウッドでの3頭併せを敢行し、6ハロン79秒4、ラスト11秒4という秀逸な時計をマーク 。陣営が語るように、2週前の段階ではまだ「強気に動かしていけるバランスではなかった」状態から、週末と週明けの調教を経て、一気に本格化してきたことが窺えます 。
陣営が語る「完全復調」へのプロセス
前走の宝塚記念では、まさかの11着大敗。しかし、太田有調教助手はその敗因を「荒れた馬場も応えたのでしょうし、不完全燃焼でした」と明確に分析しています 。馬の状態自体は悪くなかったものの、バランスを崩しやすい馬場で持ち味の末脚が完全に封じられてしまった形です。
この敗戦を受け、陣営は立て直しに細心の注意を払ってきました。「いつものように帰厩した当初はバランスの左右差があった」という課題に対し、矯正しながら調教を進めた結果、「日に日に体つきやバランスが良くなってきています」と確かな手応えを掴んでいます 。
レガレイラの最大の武器は、有馬記念で見せたような爆発的な末脚です。その切れ味は、馬体の完璧なバランスがあってこそ最大限に発揮されます。宝塚記念の敗戦は、そのバランスが馬場によって崩された結果でした。しかし、今回の最終追い切りで見せた力強いフットワークとラスト11秒2の鋭い伸びは、そのバランスが完全に修正され、彼女の持つエンジンが再び点火したことを何よりも雄弁に物語っています。
ホープフルS、有馬記念とG1を2勝している得意の中山コースへの帰還は、まさに絶好の復活舞台 。陣営の「秋に向けて弾みがつくような競馬ができれば」という言葉には、女王復活への自信が満ち溢れています 。追い切りの動きから判断する限り、その期待が裏切られることはないでしょう。
有力馬の追い切りを徹底分析・評価 (A+ ~ B+評価)
【A+評価】コスモキュランダ – 叩き2戦目で一変!好調時の気配が戻る
前走の札幌記念で10着と振るわなかったコスモキュランダが、叩き2戦目となるここで見違えるような動きを見せ、評価を急上昇させています。
最終追い切りは美浦の坂路コース。先行する僚馬ルージュアベリアを目標に、終始馬なりの手応えで追走すると、ラストで並びかける間もなく楽々と抜き去り、2馬身の先着を果たしました 。時計は4ハロン52秒4、ラスト12秒5 。加藤士津八調教師が「52~53秒を予定していたので時計も完璧」と語るように、陣営のプラン通りの完璧な調教内容でした 。
この気配の良化は、前走時との調整過程の違いに起因します。札幌記念前は十分な調教を積めず、「乗り込めなかった」「まだ緩さがあった」と陣営が認める状態でした 。しかし今回は、放牧を挟んで立て直し、「強度な稽古が積めて走りが軽くなった」と明らかに状態が上向いています 。実際に騎乗した丹内祐次騎手も「動きは良くなっています。息の入りがいい」と好感触を伝えており、陣営の期待は高まるばかりです 。
札幌記念の敗戦は、明らかに本調子ではなかったことが原因です。しかし、一度レースを使ったことでガスが抜け、本来の動きを取り戻しました。弥生賞を制した実績のある中山コースは、この馬にとって最高の舞台 。春のクラシック戦線を沸かせた実力馬が、完全復調を遂げて秋の主役の座を狙います。
【A評価】ヨーホーレイク – 坂路で力強い動き、舞台適性も魅力
長期の屈腱炎を克服し、7歳にして本格化したヨーホーレイク。前走の宝塚記念は17着と大敗しましたが、陣営は「急に暑くなったのが影響した印象」と分析しており、悲観する内容ではありません 。むしろ、今年の京都記念を制し、大阪杯で3着に入った実力はここでも間違いなく上位です 。
その言葉を裏付けるように、最終追い切りでは栗東坂路で力強い動きを披露。単走ながら外ラチ沿いをしっかりとした脚取りで駆け上がり、4ハロン53秒6、ラスト12秒3をマークしました 。派手さはありませんが、最後までバテることなく力強く伸びる姿からは、順調な仕上がりが窺えます。
友道康夫調教師は「追い切りはいつものパターン」と落ち着き払っており、調整過程に一点の曇りもありません 。さらに、「広いコースよりも小回りの方が良い。中山は合うと思う」と、今回の舞台設定を歓迎しています 。
中山2200mのコース形態を考えると、この舞台適性への言及は非常に重要です。ゴール前の急坂は、パワーとスタミナを兼ね備えた馬に有利に働きます。友道調教師がヨーホーレイクの最終追い切りに、パワー養成に最適な坂路コースを選択し、そこで力強い動きを見せたことは、単なるコンディションチェック以上の意味を持ちます。これは、中山のゴール前での激しい攻防を想定した、極めて戦略的な調教と言えるでしょう。そのシミュレーションを完璧にこなした今、上位争いは必至と見ます。
【A-評価】クロミナンス – 長期休養明けも、仕上がりは万全
昨年のアルゼンチン共和国杯で2着に入って以来、約10ヶ月ぶりの実戦となるクロミナンス 。長期休養明けは割引材料となりがちですが、追い切りの動きはその不安を払拭するに十分なものでした。
最終追い切りは美浦坂路での単走。馬なりのまま、実に軽快なフットワークで駆け上がり、4ハロン52秒5、ラスト12秒3を記録しました 。尾関知人調教師が「予定より時計は速いけど無理をしていないし、この馬には楽な感じでしょう」と語るように、馬自身の活気が時計に表れた形です 。
長期休養明けの馬は、慎重に調整を進めるのが一般的です。しかし、クロミナンスは陣営が意図した以上の時計を、いとも簡単に出してきました。これは、馬が心身ともに充実し、走りたくて仕方がない状態にあることの証左です。無理に仕上げられたのではなく、自然な形でトップコンディションに近づいている点は、高く評価できます。
尾関調教師も「ある程度順調にここまで来られた。上向きな感じで使えるのはいいね」と仕上がりに満足げな表情を見せています 。1ヶ月以上じっくりと乗り込まれ、態勢は整いました 。いきなりから能力を発揮できる状態にあると判断します。
【B+評価】ドゥラドーレス – 上昇ムードも最終追いが試金石
エプソムカップ、七夕賞と重賞で2戦連続2着と、あと一歩のところで勝ち切れない競馬が続くドゥラドーレス 。陣営もそのもどかしさを感じており、ここは何としても結果が欲しい一戦です。
追い切りは18日に予定されているため、これは中間評価となりますが、陣営のコメントからは現状と課題が透けて見えます 。宮田敬介調教師は「ひと追いごとに体調は良くなっている」と上昇ムードを認めつつも、「まだ少し重く、いいときに比べて後肢に緩さが残る」と率直に現状を語っています 。
この「後肢の緩さ」という言葉が、彼のここ2走の競馬を象徴しています。馬の推進力は後肢から生まれるため、ここに緩さがあると、最後のもう一押しが利かなくなります。勝ち切れない要因が、まさにこの点にある可能性は高いでしょう。
したがって、18日に行われる最終追い切りが、彼の状態を見極めるための最大の試金石となります 。後肢をしっかりと使い、力強い踏み込みで鋭く伸びる動きが見られるかどうかが、取捨の鍵を握ります。もし、この課題をクリアするような動きを見せれば、評価は一気にAクラスへとジャンプアップする可能性も秘めています。陣営が「小回りの福島より中山のこの舞台はいい」と語るように、コース替わりが良い方向に出ることも期待されます 。
その他注目馬の追い切り診断
リビアングラス
札幌記念は6着でしたが、巻き返しへ向けて意欲的な調整が目立ちます。11日に行われた1週前追い切りでは、栗東CWコースで自己ベストとなるラスト1ハロン11秒3を叩き出し、抜群の動きを披露しました 。2200mはこれまで5戦して2勝、2着1回、3着1回と最も得意とする距離 。先行力を活かせる展開になれば、粘り込みも十分考えられます。
ホーエリート
具体的な追い切り情報は少ないものの、データ面から軽視は禁物です。近10年のオールカマーでは4歳牝馬が【3-3-0-2】と圧倒的な成績を残しており、今年の該当馬であるレガレイラとこのホーエリートには強力な追い風が吹いています 。中山牝馬S、目黒記念で連続2着と重賞制覇まであと一歩に迫っており、得意の中山コースで強敵相手に一発があっても不思議ではありません 。
フェアエールング
クイーンS3着からの臨戦。9月10日の1週前追い切りでは、美浦Wコースを馬なりで5ハロン67秒0、ラスト11秒7とシャープな動きを見せました 。和田郎調教師が「前走時は少し背腰の筋肉の付きが悪かったですが、体つきも良くなって、だいぶ張りが戻ってきています」と語るように、状態は明らかに上向いています 。こちらも侮れない一頭です。
最終結論:追い切りから見るオールカマー2025の展望とプロの最終予想
ここまで各馬の追い切りを詳細に分析してきましたが、その動きの質、そして陣営のコメントから総合的に判断すると、やはりレガレイラが一枚抜けた存在であるという結論に至ります。宝塚記念の敗戦から心身ともに完全に立ち直り、女王復活へ向けて視界は良好です。
最大の対抗馬となるのは、叩き2戦目で気配が一変したコスモキュランダでしょう。得意の中山で、春に見せた輝きを取り戻す可能性は十分にあります。また、舞台適性抜群のヨーホーレイク、休み明けでも仕上がり良好なクロミナンスも上位争いに加わる力を持っています。
追い切りの評価を元にした最終的な印、買い目を含む結論は、以下のリンクからご覧いただけます。プロの最終的な見解をぜひご確認ください。
▼プロの最終結論はこちらから!▼ https://yoso.netkeiba.com/?pid=yosoka_profile&id=562&rf=pc_umaitop_pickup
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