世界の頂点を巡る週末:サラトガ、ヨーク、ドーヴィルで未来のチャンピオンが誕生

  1. 序論:選手権シーズンへの道筋を明確にした週末
  2. 第1部:サラトガで示されたアメリカ競馬の至高
    1. サラトガのインサイト:専門家による分析
    2. 1.1 トラヴァーズステークス(G1):ソヴリンティ、「真夏のダービー」での戴冠式
    3. 1.2 パーソナルエンスンステークス(G1):ソーピードアナの不屈の闘志
    4. 1.3 フォアゴーステークス(G1):ブッケムダノ、前人未到のサラトガスプリント3冠を達成
    5. 1.4 バレリーナステークス(G1):ホープロード、星の下に書かれた勝利
    6. 1.5 H.アレン・ジャーケンスメモリアルステークス(G1):パッチアダムス、僅差の勝負を制す
  3. 第2部:ヨーク・イボア開催で激突した芝の巨星たち
    1. ヨークのインサイト:専門家による分析
    2. 2.1 ヨークシャーオークス(G1):ミニーホーク、動じずにオークス3冠を達成
    3. 2.2 ナンソープステークス(G1):オーストラリアの稲妻、ヨークを切り裂く
    4. 2.3 シティオブヨークステークス(G1):ネヴァーソーブレーヴ、大舞台で飛躍
  4. 第3部:ドーヴィルで頭角を現した未来のチャンピオンたち
    1. ドーヴィルのインサイト:専門家による分析
    2. 3.1 モルニ賞(G1):ヴェネティアンサン、2歳エリートを凌駕
    3. 3.2 ジャンロマネ賞(G1):キジサーナ、凱旋門賞への挑戦権を獲得
  5. 結論:明確になった勢力図と選手権への道

序論:選手権シーズンへの道筋を明確にした週末

世界中のサラブレッドレース界にとって極めて重要な週末が幕を開け、アメリカ、イギリス、フランスの三大競馬開催地で繰り広げられた一連のG1レースは、秋のチャンピオンシップシーズンに向けた勢力図を劇的に塗り替えた。サラトガでは、世代を代表する才能がその支配力を揺るぎないものとし、ヨークでは歴史的な牝馬チャンピオンが戴冠、そして南半球からの遠征馬が見事な勝利を飾った。一方、ドーヴィルでは、ブリーダーズカップと凱旋門賞を目指す新たな挑戦者が力強く名乗りを上げた。この週末の出来事は、単なる個々のレース結果の集合体ではなく、世界のトップホースたちがそれぞれの目標に向かう重要な転換点となり、秋の大舞台への期待を最高潮に高めるものとなった。

第1部:サラトガで示されたアメリカ競馬の至高

ニューヨーク州のサラトガ競馬場で開催されたトラヴァーズステークスデーは、アメリカ競馬界の現役最強馬たちがその実力を遺憾なく発揮する舞台となった。この日の主役は、圧倒的なプレッシャーをものともせず、期待に応えて見事なパフォーマンスを披露したチャンピオンたちであった。彼らの走りは、サラトガという特別な舞台で勝利することの価値を改めて浮き彫りにした。

サラトガのインサイト:専門家による分析

サラトガでの一連のレース結果は、いくつかの重要な傾向を明らかにしている。まず、ブッケムダノとソヴリンティのパフォーマンスは、「サラトガ・スペシャリスト」であることが、それ自体でチャンピオンの資格証明となり得るという考え方を強化した。特にブッケムダノ陣営のデレク・ライアン調教師は、ブリーダーズカップへの参戦有無にかかわらず、サラトガでのスプリント3冠達成はエクリプス賞に値すると示唆しており、これはブリーダーズカップ中心の現代的なチャンピオン観に一石を投じるものである 。サラトガの厳しい競争環境で持続的な強さを見せることは、年末の一発勝負よりも価値があるという主張は、今後の年度代表馬選考においても説得力を持つ可能性がある。

次に、パーソナルエンスンステークスにおけるソーピードアナの勝利は、現役牝馬路線の層の厚さとチャンピオンの座の危うさを示している。昨年の年度代表馬である彼女が、強敵ドースヴェイダーを僅差で退けたこのレースは、支配的な勝利ではなく、純粋な闘志によるものだった 。この結果は、ブリーダーズカップ・ディスタフが特定の馬の独壇場ではなく、複数の有力馬が覇を競う激戦区となることを予感させる。

最後に、この日のサラトガの結果は、種牡馬インティミシュフの驚異的な支配力を改めて証明した。同産駒は、3歳牡馬のクラシックディスタンスとスプリントという、全く異なるカテゴリーの最高峰レースであるトラヴァーズステークス(ソヴリンティ)とH.アレン・ジャーケンスメモリアルステークス(パッチアダムス)を制覇した 。これは、インティミシュフが距離や馬場を問わず、あらゆるカテゴリーで最高レベルの競走馬を輩出する、世代を代表する種牡馬であることを明確に示している。

1.1 トラヴァーズステークス(G1):ソヴリンティ、「真夏のダービー」での戴冠式

馬番馬  名騎 手斤量着差(馬身)単勝倍率
4(https://racedb.com/p/064188.html)(ソヴリンティ)J・アルヴァラード126ポンド(57.1キロ)2:00.841.3
2Bracket Buster(ブラケットバスター)L・サエス126ポンド(57.1キロ)1018.8
1Magnitude(マグニテュード)B・カーチス126ポンド(57.1キロ)大差4.6
5McAfee(マカフィー)J・ヴェラスケス126ポンド(57.1キロ)大差21.4
3Strategic Focus(ストラテジックフォーカス)F・プラ126ポンド(57.1キロ)大差8.1

ケンタッキーダービーとベルモントステークスの覇者として、現3歳世代の誰もが認めるリーダーとしてこのレースに臨んだソヴリンティは、その評価が全く揺るがないことを証明した 。レースは、予想通りマグニテュードが先手を主張し、ブラケットバスターがそれをマークする形で始まった 。一方、ジュニア・アルヴァラード騎手に導かれたソヴリンティは、慌てることなく4番手の好位でレースを進めた。勝負の分かれ目となったのは最終コーナーだった。アルヴァラード騎手がソヴリンティを馬場の4分どころに持ち出すと、そこから次元の違う末脚を繰り出し、直線では他馬を全く寄せ付けなかった

最終的に2着のブラケットバスターに10馬身という圧倒的な差をつけ、そのパフォーマンスはライバル陣営のスティーブ・アスムッセン調教師から「スーパースター」と称賛されるほど衝撃的なものだった 。この勝利は、殿堂入りを果たしているビル・モット調教師にとって、キャリア初のトラヴァーズステークス制覇という記念すべきものとなり、長年の「やり残したことリスト」の一つを達成する快挙となった 。さらに、1995年のサンダーガルチ以来となる、ケンタッキーダービー、ベルモントステークス、そしてトラヴァーズステークスを同一年に制した馬となり、歴史にその名を刻んだ 。この圧勝により、ソヴリンティは年度代表馬の座をほぼ手中に収め、ブリーダーズカップ・クラシックへと続く王道を突き進むことになった

1.2 パーソナルエンスンステークス(G1):ソーピードアナの不屈の闘志

馬番馬  名騎 手斤量着差(馬身)単勝倍率
7(https://racedb.com/p/062926.html)(ソーピードアナ)B・ヘルナンデスJr124ポンド(56.2キロ)1:49.181.75
4(https://racedb.com/p/059890.html)(ドースヴェイダー)J・ヴェラスケス124ポンド(56.2キロ)ハナ12.1
6(https://racedb.com/p/062958.html)(レスリーズローズ)I・オルティスJr124ポンド(56.2キロ)9.754.4
3(https://racedb.com/p/061785.html)(レイジングシー)F・プラ124ポンド(56.2キロ)2.757.5
2Dazzling Move(ダズリングムーヴ)J・オルティス122ポンド(55.3キロ)6.2514.4
1(https://racedb.com/p/061213.html)(ランダマイズド)M・フランコ124ポンド(56.2キロ)610.5
5Bernietakescharge(バーニーテイクスチャージ)R・マラージ120ポンド(54.4キロ)大差51.75

このレースは、昨年の年度代表馬ソーピードアナと、果敢な挑戦者ドースヴェイダーによる、息をのむような激闘の物語となった 。レースは、外枠から好位につけたソーピードアナが、最終コーナーで先頭に立つという積極的な競馬を見せた。しかし、直線に入るとドースヴェイダーが猛然と襲いかかり、2頭はゴールまで壮絶な叩き合いを演じた

写真判定の末、ハナ差で勝利をもぎ取ったソーピードアナの勝因は、その驚異的な精神力にあった。ブライアン・ヘルナンデスJr.騎手とケニー・マクピーク調教師は、口を揃えて彼女の「勇敢さ」と「殴り合い」を制する勝負根性を称賛した 。この勝利は、ソーピードアナにとって、昨年制したブリーダーズカップ・ディスタフへの優先出走権をもたらすものであり、デルマー競馬場でのドースヴェイダーとの再戦への期待を大きく膨らませる結果となった

1.3 フォアゴーステークス(G1):ブッケムダノ、前人未到のサラトガスプリント3冠を達成

馬番馬  名騎 手斤量着差(馬身)単勝倍率
4(https://racedb.com/p/062717.html)(ブッケムダノ)P・ロペス124ポンド(56.2キロ)1:22.431.9
8Scotland(スコットランド)J・アルヴァラード120ポンド(54.4キロ)112.7
6Crazy Mason(クレージーメイソン)M・フランコ122ポンド(55.3キロ)0.7517.0
11Doc Sullivan(ドクサリヴァン)J・ロザリオ120ポンド(54.4キロ)145.5
1Most Wanted(モーストウォンテッド)F・ジェルー120ポンド(54.4キロ)0.58.0
2Bishops Bay(ビショップスベイ)I・オルティスJr122ポンド(55.3キロ)110.4
7Mullikin(ムリキン)F・プラ124ポンド(56.2キロ)8.255.9
5Extra Anejo(エクストラアネホ)B・カーチス122ポンド(55.3キロ)クビ27.25
10Hold My Bourbon(ホールドマイバーボン)L・サエス120ポンド(54.4キロ)クビ17.4
9Over and Ollie(オーバーアンドオリー)J・オルティス120ポンド(54.4キロ)1.540.25

ブッケムダノにとって、この夏のサラトガはまさに独壇場だった。G3トゥルーノースステークス、G2アルフレッド・G・ヴァンダービルトハンデキャップを既に制していた彼は、このフォアゴーステークスでの勝利により、サラトガ開催の主要スプリントレースを完全制覇するという歴史的な偉業を成し遂げた 。これにより、彼は現役最強スプリンターとしての地位を確固たるものにした 。レースはモーストウォンテッドとホールドマイバーボンが速いペースで引っ張る展開となった。主戦のパコ・ロペス騎手に導かれたブッケムダノは、馬群の中団で巧みに立ち回り、直線で進路を見つけると一気に突き抜け、最後は猛追するスコットランドを1馬身抑えてゴールした

この勝利は、ニュージャージー州産馬として史上最高の獲得賞金額を更新するという、関係者にとって大きな誇りとなる記録ももたらした 。レース後、デレク・ライアン調教師は、ブリーダーズカップを回避する可能性に言及しつつも、サラトガでの圧倒的な実績こそがエクリプス賞(年度代表馬)にふさわしいと主張した 。この発言は、今後のチャンピオン選考を巡る議論に大きな影響を与えるだろう。

1.4 バレリーナステークス(G1):ホープロード、星の下に書かれた勝利

馬番馬  名騎 手斤量着差(馬身)単勝倍率
9(https://racedb.com/p/064229.html)(ホープロード)J・オルティス122ポンド(55.3キロ)1:21.933.05
7Scylla(スキラ)F・プラ122ポンド(55.3キロ)24.9
3Majestic Oops(マジェスティックウップス)K・カームーシェ122ポンド(55.3キロ)414.3
2(https://racedb.com/p/061134.html)(ブライトワーク)J・ヴェラスケス122ポンド(55.3キロ)7.2518.4
4Halina’s Forte(ハリナズフォルテ)J・ロザリオ124ポンド(56.2キロ)3.512.4
5Claret Beret(クラレットベレット)I・オルティスJr122ポンド(55.3キロ)8.253.35
8(https://racedb.com/p/063222.html)(マイメーンスクイーズ)L・サエス122ポンド(55.3キロ)中止6.0

このレースの主役は、運命的な物語を紡いだホープロードだった。彼女は、2018年に母マーリーズフリーダムが同じ馬主、同じ調教師の下で制したこのバレリーナステークスを、見事に勝利したのである 。レースは、スキラが前半から非常に速いペースで逃げる展開となった。ホセ・オルティス騎乗のホープロードは、そのペースを冷静に追走し、最終コーナーで満を持して進出。直線で逃げ粘るスキラを捉えると、力強く突き放し、2馬身差の快勝を収めた

この勝利は、殿堂入り調教師であるボブ・バファートにとって、トラヴァーズデーにおける大きなG1勝利となり、アメリカのトップステーブルとしての威厳を示した 。一方で、このレースでは昨年のニューヨーク州産年度代表馬であるマイメーンスクイーズが競走を中止し、無事に馬場を去るというアクシデントも発生した 。ホープロードはこの勝利により、ブリーダーズカップ・フィリー&メアスプリントへの優先出走権を獲得した

1.5 H.アレン・ジャーケンスメモリアルステークス(G1):パッチアダムス、僅差の勝負を制す

馬番馬  名騎 手斤量着差(馬身)単勝倍率
1Patch Adams(パッチアダムス)L・サエス124ポンド(56.2キロ)1:21.613.5
7Captain Cook(キャプテンクック)R・サンタナJr124ポンド(56.2キロ)ハナ21.8
3(https://racedb.com/p/064813.html)(バーンズ)J・オルティス124ポンド(56.2キロ)1.55.3
4Chancer McPatrick(チャンサーマクパトリック)I・オルティスJr124ポンド(56.2キロ)27.9
8Madaket Road(マダケットロード)J・ヴェラスケス124ポンド(56.2キロ)1.59.8
2Midland Money(ミッドランドマネー)J・ロザリオ124ポンド(56.2キロ)28.2
6(https://racedb.com/p/065833.html)(スモークンウィックド)B・ヘルナンデス124ポンド(56.2キロ)7.2511.5
5Verifire(ヴェリファイア)F・プラ124ポンド(56.2キロ)大差4.2

3歳馬による7ハロンのスプリント戦は、ゴール前の大接戦となった。勝負は写真判定に持ち込まれ、パッチアダムスがキャプテンクックをハナ差で抑え、劇的な勝利を飾った 。この勝利は、同馬にとってサラトガ開催での2度目のG1制覇となった。既にG1ウッディーステークスを勝利していたパッチアダムスは、この結果により、サラトガの3歳スプリント路線における最強馬であることを証明した

この勝利はまた、ブラッド・コックス調教師と、この日大活躍した種牡馬インティミシュフにとっても、さらなる栄光をもたらすものとなった

第2部:ヨーク・イボア開催で激突した芝の巨星たち

舞台はイギリスの歴史あるヨーク競馬場へ移る。ここでは、国際色豊かなメンバーが集い、歴史的なチャンピオンの誕生と、世界トップレベルの激しい競争が繰り広げられた。

ヨークのインサイト:専門家による分析

ヨークでの結果は、現代の国際競馬における2つの重要な側面を浮き彫りにした。一つは、ナンソープステークスを制したアスフォーラの成功である。彼女の陣営は、一戦限りの「電撃的な遠征」ではなく、ヨーロッパに長期滞在し、現地の環境に適応させるという戦略を選択した。この忍耐強いアプローチが実を結んだことは、南半球のホースマンにとって、ヨーロッパのトップレースを制覇するための新たな青写真となるだろう 。この成功は、日本を含む他の国の陣営にも、同様の長期的な遠征計画を検討させるきっかけとなるかもしれない。

もう一つは、シティオブヨークステークスにおけるロザリオンの敗北である。G1勝ちの実績を持つマイル王として、軽微なアクシデントからの復帰戦で圧倒的な人気を集めたが、結果は4着に終わった 。この敗戦は、トップクラスの競走馬であっても、調整過程の乱れや距離変更といった要素がいかにパフォーマンスに影響を与えるかを示す教訓となった。いかなるG1レースも、単なる「代替目標」として軽視することはできず、最高のコンディションを維持することの難しさを物語っている

2.1 ヨークシャーオークス(G1):ミニーホーク、動じずにオークス3冠を達成

馬番馬  名騎 手斤量着差(馬身)単勝倍率
3Minnie Hauk(ミニーホーク)R・ムーア126ポンド(57.1キロ)2:26.671.5
1Estrange(エストレンジ)D・タドホープ135ポンド(61.2キロ)3.53.5
2Garden of Eden(ガーデンオブエデン)W・ローダン126ポンド(57.1キロ)3.517.0
4Qilin Queen(キリンクイーン)K・シューマーク126ポンド(57.1キロ)大差13.0

ミニーホークは、英オークス、愛オークスに続き、このヨークシャーオークスをも制覇し、歴史的な「オークス3冠」を達成した。これは、2021年に同じエイダン・オブライエン厩舎の僚馬スノーフォールが達成して以来の快挙である 。レースは、ライアン・ムーア騎手がミニーホークを完璧にエスコートし、「極めてスムーズ」な勝利を収めた。単勝オッズは変動したものの、レース中は一切の不安を感じさせず、残り2ハロンで先頭に立つと、そのまま後続を3.5馬身突き放して圧勝した

この勝利により、ミニーホークの将来には輝かしい選択肢が広がった。オブライエン調教師と陣営は、凱旋門賞とブリーダーズカップ・ターフの両方を視野に入れており、彼女が世界最高峰の中距離馬の一頭であることを証明した 。また、この勝利でブリーダーズカップ・フィリー&メアターフへの優先出走権も獲得している

2.2 ナンソープステークス(G1):オーストラリアの稲妻、ヨークを切り裂く

馬番馬  名騎 手斤量着差(馬身)単勝倍率
10Asfoora(アスフォーラ)O・マーフィー138ポンド(62.5キロ)57.3812.0
8Ain’t Nobody(エイントノーバディ)K・ストッツ139ポンド(63.0キロ)1.25101.0
11(https://racedb.com/p/062744.html)(フロストアットドーン)M・バルザローナ138ポンド(62.5キロ)ハナ11.0
4Night Raider(ナイトレイダー)D・タドホープ141ポンド(63.9キロ)18.5
5(https://racedb.com/p/059372.html)(ラムスター)R・ホーンビー141ポンド(63.9キロ)クビ12.0
1Jm Jungle(ジムジャングル)J・ハート141ポンド(63.9キロ)クビ11.0
15Sayidah Dariyan(セイダーダリヤン)R・ムーア136ポンド(61.6キロ)19.0
12Mgheera(ムゲーラ)W・ビュイック138ポンド(62.5キロ)クビ17.0
14Celandine(セランディン)T・マーカンド136ポンド(61.6キロ)0.534.0
13She’s Quality(シーズクオリティ)J・ライアン138ポンド(62.5キロ)クビ12.0
9(https://racedb.com/p/063331.html)(アリゾナブレイズ)D・イーガン139ポンド(63.0キロ)15.5
7(https://racedb.com/p/063052.html)(ワシントンハイツ)T・イーヴス141ポンド(63.9キロ)119.0
2Kerdos(カードス)R・ライアン141ポンド(63.9キロ)短頭41.0
16Lady Iman(レディーアイマン)J・ファニング114ポンド(51.6キロ)クビ6.5
6Spartan Arrow(スパルタンアロウ)H・ドイル141ポンド(63.9キロ)アタマ67.0
3Manaccan(マナカン)C・リー141ポンド(63.9キロ)1101.0
17Spicy Marg(スパイシーマーグ)H・ベントレー114ポンド(51.6キロ)1.2519.0

オーストラリアから来た牝馬アスフォーラが、13年ぶりに同国にこのタイトルの栄光をもたらした 。彼女の調教師は、この勝利を「勝つか引退か」という覚悟で臨んだレースだったと語り、その感動を表現した 。レースでは、オイシン・マーフィー騎手がアスフォーラを先行集団の直後につけ、直線で進路を確保すると、爆発的な瞬発力で他馬を圧倒した

この勝利は、アスフォーラ陣営がヨーロッパで長期的な遠征計画を立てた、その大胆な戦略が報われた瞬間だった。今後の目標として、アイルランドのフライングファイブステークスやフランスのアベイ・ド・ロンシャン賞が挙げられており、彼女の挑戦はまだ続く 。また、単勝101倍の伏兵エイントノーバディが2着に食い込み、波乱を演出したことも特筆すべき点である

2.3 シティオブヨークステークス(G1):ネヴァーソーブレーヴ、大舞台で飛躍

馬番馬  名騎 手斤量着差(馬身)単勝倍率
4Never So Brave(ネヴァーソーブレーヴ)O・マーフィー134ポンド(60.7キロ)1:22.934.5
3Lake Forest(レイクフォレスト)T・マーカンド134ポンド(60.7キロ)0.513.0
9Maranoa Charlie(マラノアチャーリー)A・ルメートル129ポンド(58.4キロ)アタマ10.0
7(https://racedb.com/p/061448.html)(ロザリオン)S・レヴィー134ポンド(60.7キロ)アタマ2.0
5Qirat(キラート)C・キーン134ポンド(60.7キロ)1.521.0
11Exactly(エクザクトリー)R・ムーア126ポンド(57.1キロ)0.510.0
1Annaf(アナフ)R・ライアン134ポンド(60.7キロ)短頭67.0
10Seagulls Eleven(シーガルズイレヴン)W・ビュイック129ポンド(58.4キロ)151.0
2Audience(オーディエンス)R・ハヴリン134ポンド(60.7キロ)0.7521.0
6Quinault(キノー)J・ハート134ポンド(60.7キロ)126.0

このレースは、今年からG1に昇格した記念すべき初回開催となった。その栄誉を手にしたのは、このレースを長年支援してきたアンドリュー・ボールディング調教師が管理するネヴァーソーブレーヴであった 。同馬は、トップハンデ馬からG1ホースへと、目覚ましい成長曲線を描いてきた。その多才さと成長力は、ボールディング厩舎の手腕を象徴するものであった

一方で、このレースの最大の焦点は、単勝2.0倍の圧倒的1番人気に支持されたロザリオンの走りだった。しかし、結果は期待を裏切る4着。陣営は、距離短縮を敗因とせず、「普段のような走りができなかった」とコメントしており、彼の本調子ではなかったことがうかがえる

第3部:ドーヴィルで頭角を現した未来のチャンピオンたち

フランスの夏競馬の拠点であるドーヴィル競馬場では、未来のクラシック戦線を占う上で重要なレースが行われ、新たなスター候補が誕生した。

ドーヴィルのインサイト:専門家による分析

モルニ賞におけるヴェネティアンサンの勝利は、身体能力だけでなく、精神的な成熟度がいかに重要であるかを浮き彫りにした。カール・バーク調教師は、彼女の並外れて落ち着いた気性を繰り返し強調した。その冷静さがあったからこそ、速い馬場でハイペースになったレースでも、後方でエネルギーを温存し、勝利に繋がる末脚を発揮することができたのである 。この精神的な強さは、早熟なスピードタイプの2歳馬とは一線を画すものであり、彼女が将来的にクラシックディスタンスでも活躍できる可能性を示唆している。ブックメーカーが即座に彼女を英1000ギニーの1番人気に据えたことも、その期待の大きさを物語っている 。この結果は、競走馬の育成において、スピードだけでなく、冷静な気質がいかに重要な資産であるかを教えてくれる。

3.1 モルニ賞(G1):ヴェネティアンサン、2歳エリートを凌駕

馬番馬  名騎 手斤量着差(馬身)単勝倍率
6(https://racedb.com/p/065691.html)(ヴェネティアンサン)C・リー55.5キロ1:08.394.4
3Gstaad(グスタード)R・ムーア57キロ短首2.2
4Wise Approach(ワイズアプローチ)W・ビュイック57キロ0.58.7
1Outfielder(アウトフィールダー)D・イーガン57キロ24.0
2Coppull(コップル)D・プロバート57キロ4.513.0
5Imperial Me Cen(インペリアルミーセン)A・マダメット57キロ0.7536.0

このレースは、ロイヤルアスコット開催の勝ち馬同士、アルバニーステークスを制したヴェネティアンサンと、コヴェントリーステークス覇者で1番人気のグスタードによる一騎打ちとして注目された 。レースは、クリフォード・リー騎乗のヴェネティアンサンが後方でじっくりと脚を溜め、直線で力強い末脚を爆発させるという見事な内容で勝利した

レース後、カール・バーク調教師とブックメーカーの反応は、彼女の将来性に対する期待を明確に示していた。彼女の非常に落ち着いた気性は、来年の英1000ギニーでの活躍を予感させるものであり、次走に予定されているモイグラーレスタッドステークスで7ハロンの距離をこなせれば、その評価はさらに高まるだろう

3.2 ジャンロマネ賞(G1):キジサーナ、凱旋門賞への挑戦権を獲得

馬番馬  名騎 手斤量着差(馬身)単勝倍率
3Quisisana(キジサーナ)C・スミヨン59キロ2:05.737.2
1(https://racedb.com/p/063548.html)(スルヴィー)S・パスキエ59キロ1.7511.0
5Grand Stars(グランドスターズ)M・ギュイヨン59キロハナ22.0
2(https://racedb.com/p/063494.html)(シンデレラズドリーム)W・ビュイック59キロ0.52.4
8(https://racedb.com/p/063591.html)(ベッドタイムストーリー)R・ムーア56キロ短頭6.0
6Start of Day(スタートオブデイ)A・ルメートル59キロ1.511.0
7Cankoura(カンコウラ)M・バルザローナ56キロアタマ5.9
4Royal Dress(ロイヤルドレス)C・リー59キロ1.2528.0

このレースの主役は、フランシス・グラファール厩舎の上がり馬キジサーナだった。クリストフ・スミヨン騎手の完璧な手綱さばきに導かれ、「静かだが破壊的」と評されるパフォーマンスで勝利を収めた 。この勝利により、彼女は凱旋門賞への優先出走権(無料の追加登録権)を獲得し、一躍ヨーロッパ最高峰レースの有力候補に名乗りを上げた。

一方で、1番人気に支持されたシンデレラズドリームは、今季G1を制するなどの実績があったものの、この日は見せ場なく4着に敗れた 。2着に入ったスルヴィーは、レース中最速の上がりタイムを記録しており、展開次第では勝敗が入れ替わっていた可能性も示唆された

結論:明確になった勢力図と選手権への道

サラトガ、ヨーク、ドーヴィルで開催されたこの週末の一連のG1レースは、2025年の競馬シーズンにおける重要な転換点となった。アメリカではソヴリンティがクラシック路線での絶対的な地位を確立し、ソーピードアナが女王の意地を見せ、ブッケムダノが歴史的なスプリント3冠を達成した。イギリスでは、ミニーホークが歴史的なオークス3冠の偉業を成し遂げ、オーストラリアから来たアスフォーラが世界の度肝を抜いた。そしてフランスでは、ヴェネティアンサンとキジサーナという、未来を担う新たなスターが誕生した。これらの決定的なパフォーマンスは、ブリーダーズカップ・ワールドチャンピオンシップと凱旋門賞の有力候補を絞り込み、その勢力図を大きく塗り替えた。世界中の競馬ファンは、この秋に繰り広げられるであろう、エキサイティングな頂上決戦への期待を、今、最高潮に高めている。

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