夏の新潟競馬を締めくくる名物ダート重賞、BSN賞が今年もやってくる。2025年8月23日(土)、新潟競馬場のダート1800mを舞台に、秋の飛躍を狙う実力馬たちが集結する 。3歳以上のオープン馬が覇を競うリステッド競走(L)として、今後のダート戦線を占う上で極めて重要な一戦だ 。
このレースの最大の特徴は、その「波乱含み」の性質にある。過去のレース結果を紐解けば、人気馬がやすやすと勝利するような甘いレースではないことが一目瞭然だ 。その背景には、開催時期とコース形態が複雑に絡み合っている。
真夏の過酷な気候の中で行われるこの一戦では、各馬のコンディションが勝敗を大きく左右する。いわゆる「夏負け」の兆候を見せる馬がいる一方で、暑い時期にこそ体調を上げる「夏馬」も存在する。この見極めが馬券攻略の第一歩であり、その最も信頼できる指標こそが、レース直前に行われる「追い切り」なのである。追い切りの動きからは、数字や過去の実績だけでは測れない、馬の”今”の状態が透けて見える。
今年の注目は、G2・平安ステークスで3着と地力の高さを示したレヴォントゥレット 、そしてオープン昇級後も勢いが止まらない上がり馬
ジョージテソーロ の2頭だろう。実績のレヴォントゥレットか、勢いのジョージテソーロか。この2頭を軸に据えつつも、虎視眈々と一発を狙う伏兵の気配も見逃せない。本記事では、過去10年のデータ分析と、各有力馬の追い切り評価を徹底的に分析し、BSN賞の核心に迫っていく。
難解なレースを攻略するためには、まず過去の傾向を把握することが不可欠だ。ここでは過去10年のデータを多角的に分析し、BSN賞に潜む”鉄則”を明らかにする。
BSN賞の歴史を振り返ると、所属調教センターによる成績の偏りが極めて顕著に表れている。過去10年で、関西の栗東トレーニング・センター所属馬が【10-9-3-57】という驚異的な成績を収めているのに対し、関東の美浦トレーニング・センター所属馬は【0-1-7-42】と、なんと未勝利に終わっている 。
これは単なる偶然ではない。新潟ダート1800mは、ゴール前の直線が約400mと長く平坦なコースであり、持続的なスピードとスタミナが要求される。栗東トレセンには、高低差のある坂路コースや周回距離の長いウッドチップコースが完備されており、日々の調教で自然とパワーとスタミナが養われる環境が整っている。この育成環境の違いが、新潟のタフなコースで決定的な差を生んでいると考えられる。
この事実は、今年の予想においても極めて重要なファクターとなる。例えば、美浦所属のジョージテソーロがこの分厚い壁を打ち破るには、データ上の不利を覆すほどの傑出した状態にあることが絶対条件となるだろう。
年齢別の成績を見ると、5歳馬の活躍が際立っている。過去10年で【6-3-4-25】という成績を誇り、勝率15.8%、複勝率(3着内率)34.2%はいずれも他世代を圧倒している 。
ダート競走はパワーと完成度が求められるため、心身ともに充実期を迎える5歳がまさに「黄金世代」と言える。4歳馬はまだ成長途上であり、6歳以上の馬はキャリアのピークを過ぎている可能性がある中で、5歳馬は肉体的な強さとレース経験のバランスが最も取れた状態にある。2024年に9番人気で勝利したブレイクフォースも当時5歳であり、このデータの信頼性を裏付けている 。今年も5歳馬には特に注意が必要だ。
BSN賞は「荒れるレース」として知られている。過去10年のうち、実に5回が「大荒」以上の波乱度と評価されており、高配当が頻出している 。記憶に新しい2024年は、9番人気のブレイクフォースが勝利し、3連単は54万7990円という特大万馬券となった 。
興味深いのは、伏兵の中でも特に7~9番人気の馬が【2-1-2-25】と健闘している点だ 。これは、実力がありながら何らかの理由で評価を落としている馬が、絶好のコンディションで激走するパターンが多いことを示唆している。単なる人気薄ではなく、「狙える人気薄」を見つけ出すことが、高配当的中の鍵となる。
枠順に目を向けると、8枠が【3-3-0-14】で最多の3勝を挙げ、連対率30.0%という高い数値を記録している 。
新潟ダート1800mは、スタートしてから最初のコーナーまでの距離が長く、枠順による有利不利は少ないように思える。しかし、多頭数のレースでは、内枠の馬は他馬に包まれて砂を被りやすく、スムーズなレース運びが難しくなることがある。一方で外枠、特に大外の8枠は、他馬の動向を見ながら自分のペースでレースを進めやすく、砂を被るリスクも少ない。この「ストレスなく走れる」というアドバンテージが、長い直線の最後の伸びに繋がり、好成績をもたらしていると考えられる。
最後に、出走馬を絞り込むための強力なデータを見ておきたい。2021年以降のBSN賞において、「その年にJRAのオープンクラスのレースで5着以内に入った経験がある馬」は【4-3-3-19】で複勝率34.5%と非常に高い数値を記録している。対照的に、「その経験がない馬」は【0-1-1-27】で複勝率はわずか6.9%に留まる 。
これは、夏場のレースであっても、年明け以降に高いレベルで安定した成績を残している馬が、ここでも力を発揮する傾向が強いことを示している。このフィルターは、真の有力馬とそうでない馬をふるいにかける上で、極めて有効な指標となるだろう。今年のメンバーでは、平安S(G2)3着のレヴォントゥレット や、阿蘇S(OP)4着のモズミギカタアガリ などがこの条件をクリアしている。
| 年 | 勝ち馬 | 人気 | 年齢 | 所属 | 3連単配当 |
| 2023年 | アイコンテーラー | 8番人気 | 5歳 | 栗東 | 175,760円 |
| 2022年 | ジュンライトボルト | 4番人気 | 5歳 | 栗東 | 231,510円 |
| 2021年 | ブルベアイリーデ | 3番人気 | 5歳 | 栗東 | 454,060円 |
| 2020年 | ロードブレス | 2番人気 | 4歳 | 栗東 | 16,400円 |
| 2019年 | アイファーイチオー | 8番人気 | 5歳 | 栗東 | 133,370円 |
| 2018年 | サルサディオーネ | 3番人気 | 4歳 | 栗東 | 15,930円 |
| 2017年 | トップディーヴォ | 6番人気 | 5歳 | 栗東 | 63,760円 |
| 2016年 | ピオネロ | 1番人気 | 5歳 | 栗東 | 2,680円 |
| 2015年 | ダノンリバティ | 2番人気 | 3歳 | 栗東 | 51,810円 |
| 2014年 | インカンテーション | 2番人気 | 4歳 | 栗東 | 4,380円 |
データ分析を踏まえ、ここからは各有力馬の追い切りを個別に評価していく。調教時計や動きから、各馬の現在の状態をS、A+、A、B+、B、Cの6段階でジャッジする。
BSN賞は、追い切りの動きが抜群に良い人気薄の馬が激走する傾向が強い。今年のメンバーの中で、調教から不気味な気配を漂わせているのが、伏兵の一頭だ。
最終追い切りで、ウッドコースを馬なりで駆け抜けながらも、ラスト1ハロンは11秒台半ばという鋭い伸びを記録 。併せた格上馬を楽々と置き去りにする動きは、まさに本格化を告げるものだった。陣営のコメントは控えめながらも、その動きには隠しきれない自信が感じられる。
過去のデータを見ても、7~9番人気に潜む「隠れた実力馬」が波乱を演出するケースは多い 。この馬は、まさにそのパターンに合致する可能性を秘めている。前走は展開が向かずに敗れたが、ひと叩きされて状態は明らかに上向き。人気がない今回こそ、絶好の狙い目となるかもしれない。
ここまでBSN賞の歴史的傾向と、各有力馬の追い切り評価を分析してきた。栗東所属の5歳馬が有利という明確なデータがある一方で、ジョージテソーロのように絶好調の勢いでその壁に挑む美浦の馬もいる。そして、追い切りの動きから一変の気配を見せる伏兵の存在も忘れてはならない。
最終的な馬券の組み立ては、これらの要素を総合的に判断し、当日の馬場状態やパドックの気配まで加味して決定する必要がある。
| 馬名 | 追い切り評価 | 注目ポイント |
| レヴォントゥレット | A+ | G1級の能力を窺わせる迫力。仕上がり万全。 |
| ジョージテソーロ | A | 終いの伸びは一級品。美浦の壁を越えるか。 |
| ブレイクフォース | B+ | コース適性はNo.1。昨年同様の末脚が使えるか。 |
| モズミギカタアガリ | B | 安定感は抜群。上位争いに加わる力は十分。 |
| [注目穴馬] | S | 最終追いで一変。人気薄でも不気味な存在。 |
この記事では各馬の状態をS, A, Bの評価でお伝えしてきましたが、これらの評価とレース展開のシミュレーション、そして最終的な買い目を組み合わせた最終結論については、以下のリンクからご覧いただけます。私の最終的な印と馬券の組み立てをぜひご確認ください。
川崎12R グリーンチャンネル…