真夏の盛岡競馬場を舞台に、3歳馬による芝の中距離重賞「オパールカップ」が開催されます。全国から素質馬が集うこの一戦は、単なる実力比べでは終わらない、非常に奥深いレースとして知られています。その最大の理由は、日本でも屈指のタフさを誇る盛岡競馬場芝1700mという特殊なコース設定にあります 。スタミナとパワー、そして鞍上の巧みなペース判断が問われるこの難関レースを制し、秋の飛躍へと繋げるのはどの馬か。過去の傾向と最新データを紐解き、予想の核心に迫ります。
まずは、今年のレース概要と出走馬を確認しておきましょう。
第26回オパールカップ 開催概要
オパールカップ2025 出走馬一覧
| 馬番 | 馬名 | 性齢 | 騎手 | 斤量 | 厩舎 | 予想人気 | 単勝オッズ |
| 1 | カピトリーノ | 牡3 | 小林凌 | 56.0 | (岩手)橘友和 | 14人気 | 284.8 |
| 2 | プレシャスアセット | 牝3 | 山本政聡 | 54.0 | (岩手)永田幸宏 | 13人気 | 226.7 |
| 3 | グロリアスアスペン | 牝3 | 菅原辰徳 | 54.0 | (岩手)千葉博次 | 11人気 | 97.4 |
| 4 | ダックワーズ | 牝3 | 田野豊三 | 54.0 | (兵庫)渡瀬寛彰 | 4人気 | 7.3 |
| 5 | リョーマ | 牡3 | 塚本征吾 | 56.0 | (高知)宮川浩 | 9人気 | 12.3 |
| 6 | コスモコロネット | 牝3 | 高橋悠里 | 54.0 | (大井)藤田輝信 | 10人気 | 35.6 |
| 7 | リュウノナポレオン | 牡3 | 山本聡紀 | 56.0 | (岩手)佐藤雅彦 | 5人気 | 8.3 |
| 8 | サンカリプソ | 牝3 | 坂井瑛音 | 54.0 | (岩手)菅原勲 | 6人気 | 9.0 |
| 9 | キングオブワールド | 牡3 | 山本聡哉 | 56.0 | (岩手)板垣吉則 | 2人気 | 6.0 |
| 10 | イイデマイヒメ | 牝3 | 落合玄太 | 54.0 | (北海道)村上正和 | 3人気 | 7.1 |
| 11 | マナホクラニ | 牝3 | 筒井勇介 | 54.0 | (笠松)伊藤強一 | 12人気 | 168.1 |
| 12 | ルナフォルトゥーナ | 牡3 | 高松亮 | 56.0 | (岩手)佐藤雅彦 | 8人気 | 9.1 |
| 13 | プチプラージュ | 牝3 | 渡辺竜也 | 54.0 | (笠松)笹野博司 | 7人気 | 9.0 |
| 14 | エマリオンレイ | 牝3 | 大坪慎 | 54.0 | (浦和)藤原智行 | 1人気 | 4.6 |
オパールカップを予想する上で、最も重要視すべきは「コース適性」です。盛岡芝1700mは、他の競馬場にはない極めて特殊なレイアウトを持っており、このコースを攻略できるかどうかが勝敗を大きく左右します。
このコースの最大の特徴は、その起伏に富んだタフな構造にあります 。
スタート地点から最初の1コーナーまでの距離は約300mと比較的短く、内枠が有利に見えます。しかし、本当の勝負所はそこから始まります。1コーナーを過ぎると、3コーナーにかけて延々と続く長い上り坂が待ち構えています。ここでペースを誤ると、後半にスタミナを完全に消耗してしまいます。
そして、3コーナーから4コーナーにかけては、高低差約4mの急な下り坂に突入します。息を入れる間もなく、馬はバランスを取りながらコーナーを回る技術を要求されます。スタミナを消耗した馬は、この下り坂で脚元がふらつき、失速するケースも少なくありません。ようやく最後の直線に入っても、ゴール前には再び高低差約1.5mの上り坂が待ち構えており、最後の力を振り絞らなければなりません 。
つまり、このコースは平坦なコースでスピードを発揮する能力よりも、厳しいアップダウンを乗り越えるパワーとスタミナ、そして道中でいかに脚を溜められるかというレースセンスが問われる「スペシャリスト向けの舞台」と言えるでしょう 。
このコースの特殊性は、過去のレース結果にも色濃く反映されています。ここで注意すべきは、2024年のオパールカップは「ダート1600m」で行われたという点です 。芝とダートでは求められる適性が全く異なるため、2024年の結果は参考外とし、同じ芝1700mで行われた2023年と2022年の結果を重点的に分析する必要があります。
過去3年オパールカップ結果
| 年 | 優勝馬 | 人気 | 2着馬 | 人気 | 3着馬 | 人気 | 馬場・コース |
| 2024 | ベルベストランナー | ④ | マイベネラブル | ① | ルーラーオブダート | ② | ダート1600m 稍重 |
| 2023 | ラビュリントス | ① | ナイトオブバンド | ③ | プルタオルネ | ⑥ | 芝1700m 重 |
| 2022 | ウン | ① | マイジュネス | ⑤ | フェルゼンハント | ⑧ | 芝1700m 稍重 |
芝で行われた2022年、2023年を見ると、1番人気の馬が連勝しており、実力馬が勝ち切る傾向があることがわかります 。しかし、その一方で2着、3着には5番人気以下の伏兵が絡んでいます。2022年の3着馬フェルゼンハントは8番人気、2023年の3着馬プルタオルネは6番人気でした。
これは、タフなコースがレースに波乱の要素をもたらしている証拠です。実力最上位の馬はコースの厳しさを克服して勝ち切るだけの力がありますが、それに続く人気馬たちがスタミナを削がれて脱落し、代わりにコース適性の高い伏兵が台頭する、という構図が浮かび上がります。したがって、馬券戦略としては、1番人気の信頼度は比較的高くても、ヒモ荒れを狙った馬券の組み立てが有効と言えるでしょう。
盛岡芝1700mのようなタフなコースでは、馬が持つ潜在的な能力、すなわち「血統」が重要なファクターとなります。スピード一辺倒ではない、パワーとスタミナを伝える血統背景を持つ馬が狙い目です。
欧州の重い芝や、札幌・函館のような洋芝で実績のある種牡馬の産駒は、パワーと持続力に優れる傾向があり、盛岡のコースに適応しやすいと考えられます。例えば、ハービンジャー産駒は、時計のかかるパワータイプの芝を得意とし、タフなコースでこそ真価を発揮します 。このような血統背景を持つ馬は、人気薄でも警戒が必要です。
今年の出走馬の中から、血統的に注目すべき馬をピックアップします。
一方で、人気上位に推されながらも、大きなリスクを抱える馬がいます。3番人気のイイデマイヒメと4番人気のダックワーズです。この2頭は、これまでのキャリアの全てをダートで戦ってきました 。他地区で高い能力を示していることは確かですが、日本屈指の特殊コースである盛岡の芝で、いきなりその能力を発揮できるかは全くの未知数です。ダートと芝では、走り方(ストライド)や求められるスタミナの質が根本的に異なります。彼女たちの人気はあくまでダートでの実績に基づくものであり、このコースへの適性を反映したものではありません。馬券的には、過信は禁物と言えるでしょう。
注目馬の血統評価
| 馬名 | 父 | 盛岡芝1700m適性 | 評価理由 |
| サンカリプソ | タワーオブロンドン | ◎ | 同コース・同距離のサファイア賞を制覇。コース適性は証明済み 。 |
| コスモコロネット | エポカドーロ | ○ | パワーと闘争心を伝える血統。タフなコースへの適性が高い 。 |
| プレシャスアセット | トゥザワールド | ○ | 父が岩手競馬で抜群の成績を誇る。馬場適性に期待 。 |
| イイデマイヒメ | キタサンブラック | ? | これまでダート戦のみ。タフな芝コースへの初挑戦は未知数 。 |
| ダックワーズ | ゴールドドリーム | ? | こちらもダートのみのキャリア。芝適性は大きなカギとなる 。 |
馬の能力や血統だけでなく、レースを左右する「人」の要素、すなわち騎手と厩舎の動向も重要な予想ファクターです。特に直近1ヶ月のデータに注目し、各陣営の”今”を読み解きます。
馬を管理する厩舎の戦略も見逃せません。大井や笠松といった他地区から、わざわざ時間とコストをかけて盛岡まで遠征してくることには、相応の理由があります。藤田輝信厩舎(コスモコロネット)や笹野博司厩舎(プチプラージュ)などが、このレースに管理馬を送り込んできたのは、「この馬は盛岡の芝コースに適性がある」という確信があるからです 。芝未経験のイイデマイヒメやダックワーズの参戦も、管理する村上正和厩舎、渡瀬寛彰厩舎が、馬の持つパワーやスタミナに勝算を見出しての遠征と考えられます 。地元岩手の菅原勲厩舎や板垣吉則厩舎といった名門が地の利を活かすのか、遠征組の挑戦が実を結ぶのか、厩舎間の駆け引きもレースの重要な見どころです 。
注目騎手 直近1ヶ月成績比較
| 騎手 | 騎乗馬 | 本年勝率 | 本年連対率 | 本年複勝率 | 特記事項 |
| 山本聡哉 | キングオブワールド | 19.1% | 34.2% | 46.9% | 岩手の絶対的エース。1番人気での信頼度は抜群 。 |
| 坂井瑛音 | サンカリプソ | – | – | – | 前哨戦サファイア賞を同馬で制覇。勢いに乗る 。 |
| 落合玄太 | イイデマイヒメ | 18.8% | 34.5% | – | 北海道のトップジョッキー。遠征での手腕に注目 。 |
| 田野豊三 | ダックワーズ | 10.1% | 25.5% | – | 兵庫のベテラン。ダックワーズとのコンビで好走歴多数 。 |
| 山本政聡 | プレシャスアセット | – | – | – | オパールカップ2勝の実績を持つコースマスター 。 |
| 高橋悠里 | コスモコロネット | 7.2% | 15.9% | – | 2024年(ダート)の覇者。コースを知る騎手の一人 。 |
| (注: 成績は2025年シーズンまたは直近のデータに基づく。坂井騎手はデビュー2年目のため通算データが少ない) |
ここまで、2025年オパールカップを予想する上で欠かせない3つの重要ポイントを徹底的に分析してきました。
これらの要素を総合的に判断し、どの馬を軸に据え、どの伏兵を相手に選ぶのか。 provenなコース適性を取るのか、未知の魅力に賭けるのか。最終的な印と買い目を導き出すのが、馬券的中の鍵となります。
私の最終結論と、具体的な買い目については、プロ予想家がしのぎを削る以下のプラットフォームで公開しています。ぜひ、あなたの予想の参考にしてください。