夏の札幌開催を彩る2歳オープ特別、クローバー賞。未来のスターホースがここから羽ばたくことも少なくない重要な一戦ですが、その歴史は同時に「波乱」の二文字と深く結びついています。過去10年のデータを見ても、2022年は8番人気のジョリダムが勝利し3連単17万馬券、2023年も4番人気コスモディナーの勝利から3連単10万馬券が飛び出すなど、高配当が頻出する難解なレースとして知られています 。キャリアの浅い2歳馬同士の戦いだからこそ、表面的な人気や前走の着順だけでは計れない要素が、勝敗を大きく左右するのです。
今年のクローバー賞も、多士済々なメンバー構成となりました。函館2歳ステークス(GIII)という世代最高峰のレースを経験してきたスターオブロンドンとエスカレイト。札幌芝1500mの新馬戦をセンス溢れる走りで快勝し、横山武史騎手とのコンビで連勝を狙うドルチェミスト。そして、門別のダートで百戦錬磨の経験を積んできたベラジオソニックをはじめとする地方からの刺客たち。JRA所属馬と地方所属馬が同じ舞台で激突する、まさに異種格闘技戦の様相を呈しています。
この記事では、単なる近走成績の分析に留まらず、過去のレース傾向、血統背景、陣営のコメント、そして調教内容といった多角的なデータを徹底的に分析。一筋縄ではいかないこのクローバー賞を攻略するための「3つの最重要ポイント」を導き出しました。この3つの視点を持つことで、人気馬の死角と、配当妙味のある穴馬の姿が、自ずと浮かび上がってくるはずです。
今年のクローバー賞を占う上で、最大のテーマとなるのが「距離延長」です。出走馬の多くが、キャリアの浅さからスプリント戦である1200mを中心に使われてきました。特に、1番人気が予想されるスターオブロンドンや、エスカレイト、ディアナタコスといった有力馬は、前走が1200m戦です 。
各陣営からは、この距離延長を歓迎する声が相次いでいます。
これらのコメントから、「1200mでは追走に苦労したが、1500mに距離が延びれば楽に追走でき、持ち味を発揮できる」という陣営の共通認識が透けて見えます。しかし、これが馬券検討における最初の「罠」となり得ます。
2歳戦における300mの距離延長は、単に追走が楽になるというメリットだけではありません。1200m戦がほぼ一直線のスピード勝負であるのに対し、1500m戦では道中で息を入れ、最後の直線で再び加速する「ギアチェンジ能力」と「末脚の持続力」が問われます。レース展開予想でもペースは「M(ミドルペース)」とされており、単純なスタミナ比べではなく、いかに脚を溜めて直線で切れる脚を使えるかという「決め手比べ」になる可能性が示唆されています 。
したがって、ここで重要になるのは、単に距離が延びて良さそうという漠然とした期待感ではなく、血統背景や過去のレース内容から「真の1500m適性」を持つ馬を見抜くことです。
「距離延長はプラス」という陣営の言葉を鵜呑みにするのではなく、その裏付けとなる血統や実績を精査することが、的中への第一歩となります。
クローバー賞のもう一つの大きな特徴は、JRAの芝路線を歩んできた馬と、地方競馬(特に門別)のダートでキャリアを積んできた馬が混在する点です。この「ダートから芝へ」のコース替わりは、馬券検討において極めて重要なファクターとなります。
今年のメンバーでは、スターオブロンドンがダートの新馬戦を勝っているほか、ベラジオソニック、トーアサジタリウス、トリスティ、ウィルラウスといった地方所属馬は、キャリアの全てが門別のダートコースです 。一般的に、ダートで求められるパワーと、芝で求められるスピードや瞬発力は異なるため、この適応力が勝敗を分ける鍵となります。
ここで注目すべきは、各陣営のコメントや血統背景です。
これらのコメントは、ダート実績しかない馬の中に「隠れた芝巧者」が潜んでいる可能性を強く示唆しています。
さらに、門別のダート実績を安易に軽視してはなりません。特にJRA認定競走が行われる門別の2歳戦はレベルが高く、タフな馬場での厳しいレースを経験してきた馬たちは、精神的にも肉体的にも鍛え上げられています。JRAの新馬戦を一度勝っただけの馬(例えばドルチェミスト)と比較して、レース経験の「量」と「質」で上回るケースも少なくありません。
門別の深いダートで力強い走りを見せる馬は、パワーを要する洋芝、特に開催が進んでややタフになった札幌の芝コースへの適性が高いことが往々にしてあります。血統的な裏付けがあり、陣営が手応えを感じている馬であれば、ダートからの参戦というだけで評価を下げるのは早計です。むしろ、それが過小評価につながり、高配当の源泉となる可能性を秘めているのです。
2歳戦の予想において、キャリアの評価は非常に難しい問題です。キャリアの「質」を重視すべきか、それとも「量」を重視すべきか。今年のクローバー賞は、その両極端な馬たちが揃いました。
ここで過去のクローバー賞の結果を振り返ると、必ずしも「質」の高いキャリアを持つ馬が順当に勝っているわけではないことがわかります 。前述の通り、近年は人気薄の馬が激走し、波乱の決着となるケースが目立ちます。
この事実を踏まえると、2歳戦の、特に夏場のレースにおいては、「GIIIでのレース経験」という実績が過大評価されている可能性があります。函館2歳ステークスは7月20日に行われたレースであり、若駒にとっては心身ともに大きな負担となった可能性があります 。その証拠に、
スターオブロンドンの最終追い切りは評価「C」で、「伸び一息」とのコメントが付いています。競馬ブックの調教解説でも「前走の方が良かった」と指摘されており、状態面に一抹の不安が残ることは否定できません 。
一方で、ストームサンダーのように、未勝利戦を使いながら一戦ごとに着実にパフォーマンスを上げ、前走でついに勝ち上がった馬は、まさに今が充実期と言えます。このような上昇度の高さは、一度ハイレベルなレースを経験した馬の「格」を上回ることがあります。
また、ベラジオソニックのような地方馬が持つ4戦のキャリアは、単なる出走回数の多さ以上の価値を持ちます。馬群での立ち回り、騎手の指示への反応、そしてゴール前での勝負根性など、実戦でしか養えない「レース勘」は、キャリア1、2戦のJRA所属馬に対する大きなアドバンテージとなり得ます。
キャリアの「質」という聞こえの良い言葉に惑わされず、現在のコンディションや成長曲線、そして実戦で培われた経験値を正当に評価することが、この難解なレースを的中させるための最後の鍵となります。
| 馬名 | ポイント1: 距離延長 | ポイント2: 芝適性 | ポイント3: 実績/キャリア | 総合評価 |
| 5. スターオブロンドン | ◎ (血統的に絶好) | △ (ダート勝ち) | JRA重賞経験も状態面に疑問 | 人気ほどの信頼は置けない |
| 2. ドルチェミスト | ◯ (センスで克服可) | ◎ (新馬戦で証明) | 1戦1勝の素質馬 | 上昇度と鞍上で有力 |
| 4. エスカレイト | ◎ (陣営が強気) | ◎ (芝で勝利) | JRA重賞経験と良化気配 | 巻き返し濃厚 |
| 6. ストームサンダー | ◎ (前走で証明済み) | ◯ (距離延長で良化) | 4戦のキャリアと上昇度 | 勢いはメンバー随一 |
| 1. ベラジオソニック | ◯ (血統からこなせる) | △ (未知数も陣営は期待) | 地方4戦の経験値 | 芝適応なら一発の可能性 |
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1番人気が確実視されるスターオブロンドンですが、分析の3つのポイントに照らし合わせると、いくつかの危険な兆候が見えてきます。 強み: 血統背景は今回のメンバーで随一です。父タワーオブロンドン、母父Sea The Starsという配合は、1500mという距離への適性が極めて高いことを示しており、「ポイント1: 距離延長」の観点からは絶好の評価となります 。また、函館2歳ステークス(GIII)というハイレベルなレースを経験している点も、キャリアの「質」として評価できます 。
弱み: 最大の懸念材料は「ポイント3」で指摘した状態面です。最終追い切りの評価が「C」で「伸び一息」という内容は、人気馬としては看過できません 。競馬ブックでも「前走の方が良かった」と評価されており、GIIIを戦った後の疲れが抜け切れていない可能性が考えられます。また、「ポイント2: 芝適性」に関しても、デビュー勝ちがダートであり、芝のGIIIでは7着(勝ち馬から1.0秒差)に敗れているという事実は、絶対的な芝巧者とは言い切れないことを示しています 。血統的な魅力は大きいものの、現在のコンディションと実績を冷静に判断すると、人気ほどの信頼は置きづらい一頭です。
キャリア1戦1勝。その唯一のレースが、今回の舞台と同じ札幌芝1500mの新馬戦でした。 強み: 小栗師が「センスのいい走り」「着差以上の強さだった」と絶賛するように、レース内容が秀逸です 。好位でスムーズに折り合い、直線で楽に抜け出す姿は、高いレースセンスを感じさせました。既にコースと距離への適性を証明している点は、他の有力馬に対する大きなアドバンテージです(「ポイント1」クリア)。鞍上にトップジョッキーの横山武史騎手を確保している点も心強く、調教評価も「B」の「出来安定」と、万全の態勢で臨めることがうかがえます 。
弱み: 唯一の懸念は「ポイント3」で触れたキャリアの浅さです。新馬戦はあくまで同レベルの未経験馬が相手であり、今回のようにキャリア豊富な馬や重賞経験馬が混在する中で、同じパフォーマンスを発揮できるかは未知数です。特に、地方で揉まれてきたタフな牡馬たちを相手に、牝馬である同馬がどこまで戦えるか、真価が問われる一戦となります。
前走の函館2歳ステークスでは11着と大敗しましたが、陣営は完全に巻き返しムードです。 強み: 小栗師が「千二は忙しい」と語るように、陣営は敗因を距離と明確に分析しており、「ポイント1: 距離延長」は最大のプラス材料と見ています 。父ロードカナロア×母父Tapitという血統も、この条件にぴったりです。さらに特筆すべきは調教内容。評価は「B」の「動き良化」で、競馬ブックの解説には「古馬を大きく追走し鋭く伸びて追いついた」とあり、状態が前走時から数段アップしていることが示唆されています 。これは「ポイント3」におけるコンディションの重要性を裏付けるものであり、軽視は禁物です。
弱み: 前走1.6秒差の11着という結果は、いくら距離が敗因とはいえ、やや負けすぎの感は否めません 。発馬に課題があるようで、後方からの競馬を余儀なくされると、小回りの札幌コースでは致命的になる可能性があります。五分のスタートを切れるかどうかが、好走への絶対条件となるでしょう。
キャリア4戦目にして、前走で待望の初勝利を挙げました。その勢いは本物です。 強み: この馬の最大の武器は、メンバーで唯一、近走で1500m戦を勝利しているという実績です(「ポイント1」)。樋口助手が「距離を延ばして内容が良くなってきた」と語るように、明らかに距離延長でパフォーマンスを上げたタイプであり、適性は証明済みです 。デビューから一戦ごとに着順を上げており、その成長力は「ポイント3」の観点から高く評価できます。
弱み: 最終追い切りの評価が「C」で「良化遅い」という点が気になります 。ただ、これは中1週での出走ということも影響している可能性があり、レースでの上昇度を信じる手もあります。全体的な持ち時計やスピード能力という点では、上位陣に一歩譲る可能性は考慮すべきでしょう。
これまでの分析を踏まえ、人気は無くとも馬券に絡む可能性を十分に秘めた「妙味ある穴馬」を推奨します。その筆頭候補が、門別からの刺客ベラジオソニックです。
2025年クローバー賞の分析をまとめます。
これらの分析から、レースの焦点はいくつかの問いに絞られます。状態面に不安のある人気馬スターオブロンドンを信頼できるのか? ドルチェミストの非凡な才能は、経験不足を補って余りあるものなのか? 状態急上昇のエスカレイトが、前走の敗戦から見事な巻き返しを見せるのか? そして、ベラジオソニックをはじめとする地方の叩き上げたちが、中央の芝でサプライズを起こすのか?
以上の分析を踏まえ、私が最終的にどの馬を本命に推し、どの馬を穴馬として狙うのか。そして、具体的な馬券の買い目についての最終結論は、以下のリンク先で公開しています。あなたの馬券検討の最終的な後押しとして、ぜひご覧ください。
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