夏のダート王決定戦!エルムSは「追い切り」が勝負の鍵を握る
北の大地の夏を彩るダート重賞、第30回エルムステークス(G3)が2025年8月9日、札幌競馬場ダート1700mを舞台に開催されます 。秋のG1戦線を見据える実力馬たちが集うこの一戦は、単なる夏競馬の重賞にとどまらない重要な意味を持ちます。昨年2着の雪辱を期すG1馬ドゥラエレーデ、ダート界の猛者ウィリアムバローズ、そして新興勢力のロードクロンヌなど、今年も豪華なメンバーが顔を揃えました 。
このレースを予想する上で、極めて重要なファクターとなるのが「追い切り」です。札幌ダート1700mは、正面スタンド前からスタートし、コースを1周強するレイアウト。最後の直線は約264mと短く、コーナーも緩やかであるため、統計的にも先行馬が圧倒的に有利なコースとして知られています 。そのため、一瞬のキレ味よりも、高いスピードを持続させる能力が問われます。
各馬が本州からの長距離輸送を経て、北海道の気候にどれだけ順応できているか。そして、この特殊なコース形態にマッチした状態に仕上がっているか。そのすべてが追い切りの動きに凝縮されて表れます。本記事では、各メディアの報道や専門家の見解を統合し、全出走馬の追い切りを徹底的に診断。状態の良し悪しをS・A・B・C・Dの5段階で評価し、馬券検討の核心に迫ります。
【エルムS 2025】追い切り評価ランキング一覧
詳細な分析に入る前に、まずは各馬の最終的な追い切り評価を一覧でご確認ください。どの馬が絶好の状態で、どの馬に不安が残るのか。この一覧が、あなたの予想の第一歩となるはずです。
エルムS 2025 追い切り評価・最終ジャッジ
馬名 | 総合評価 | 追い切り評価 | 注目ポイント | 調教拠点 |
ロードクロンヌ | S | S | 前走以上、万全の仕上がり。陣営も強気 | 函館 |
ヴァルツァーシャル | S | S | 休み明けも豪快な動き。いきなり能力全開 | 札幌 |
ドゥラエレーデ | A+ | A | 昨年比で調教量・質ともに向上。雪辱へ | 函館 |
ブライアンセンス | A+ | A | 併せ馬で圧倒。マーチS快勝時に状態酷似 | 函館 |
ウィリアムバローズ | A | A | 北の大地で乗り込み十分。好調キープ | 函館 |
ペリエール | A | A | 前走快勝の勢いそのまま。北海道適性あり | 函館 |
テーオードレフォン | A | A | 使い詰めの疲れなし。昨年激走の再現も | 札幌 |
ペイシャエス | A- | A | 連覇へ昨年同様の調整も、鞍上に一抹の不安 | 札幌 |
マテンロウスカイ | B+ | A | ダートでの動きは素軽い。本格化の兆し | 函館 |
トロヴァトーレ | B | A | 動きは悪くないが、初ダート・調教内容に疑問符 | 函館 |
ショウナンライシン | C | B | 使い詰めの影響か、動きに覇気なし | 函館 |
スレイマン | C | B | 調教本数不足が顕著。変わり身は期待薄 | 函館 |
ミッキーヌチバナ | C | B | 休み明けで本数少なく、本調子には一歩手前 | 函館 |
ワールドタキオン | D | B | 不振続きで、追い切りでも強調材料なし | 函館 |
Google スプレッドシートにエクスポート
【S評価】最高評価は2頭!文句なしの仕上がりを見せる最有力候補
今回の追い切り診断で、他馬を圧倒する動きを見せたのは2頭。いずれも重賞タイトル獲得へ向けて、万全の状態にあると判断できます。
ロードクロンヌ:前走以上のデキ、悲願の重賞初制覇へ視界良好
追い切り評価で最高の「S」を与えたいのがロードクロンヌです。2週前のCW(ウッドチップコース)で終い11.3秒、7月27日には終い10秒台をマークするなど、北海道入り前から非常に意欲的な調教を消化 。最終追い切りでも手応え抜群の動きを見せており、陣営の期待の高さがうかがえます 。
特筆すべきは、その状態が前走・平安S(2着)を上回る可能性が高い点です。前走時も好走しましたが、追い切りでは併せ馬に遅れる場面も見られました。しかし今回は、そうした不安要素が見当たらず、まさに心身ともにピークの状態にあると言えるでしょう 。マーチS(3着)、平安S(2着)と重賞で連続好走し、本格化の軌道に乗った今、悲願の初タイトル獲得は目前です 。騎乗する藤岡佑介騎手も「デキは今回もいいレンジには入っています。何とかタイトルを」と力強いコメントを残しており、自信を持って本番に臨みます 。
ヴァルツァーシャル:長期休み明けを微塵も感じさせない豪快な動き
もう一頭のS評価馬は、マーチS以来の休み明けとなるヴァルツァーシャルです。長期休養明けは割引材料となりがちですが、その不安を払拭する圧巻の動きを見せました。札幌ダートコースでの最終追い切りでは、終い11.6秒という鋭い末脚を披露。前を走っていた併走相手をあっさりと抜き去る様は、この馬の能力の高さを改めて証明するものでした 。
この動きから、休み明けでもいきなり能力を全開にできる状態にあると分析できます 。一方で、興味深い点もあります。追い切りを高く評価する専門家がいる一方、騎乗した古川吉洋騎手からは「軽く気合をつけて少しもたついた」というコメントも出ています 。これは、馬自身がまだレースモードに入りきっていない可能性を示唆しますが、一度エンジンがかかれば非常にパワフルであることの裏返しとも取れます。レース本番でスムーズに流れに乗れれば、その豪脚が炸裂する場面が見られるかもしれません。2024年のマーチS勝ち馬であり、G3レベルでは実績上位の存在。そのポテンシャルを軽視することはできません 。
【A評価】好配当の使者も?甲乙つけがたい好調馬たちを徹底分析
S評価の2頭に続くA評価グループも、好調馬が目白押し。それぞれが勝ち負けに加わるだけの状態にあり、レース展開次第では主役の座を奪う可能性も十分にあります。
ドゥラエレーデ (A+):昨年2着の雪辱へ。調教量・質ともに大幅アップ
昨年のエルムSで2着に敗れたドゥラエレーデが、雪辱を期して万全の態勢を整えてきました。函館ダートでの最終追い切りは5ハロン70.2秒、終い11.4秒とシャープな動きを披露。騎乗した松山弘平騎手も「反応はしっかりしていたし、しまいの動きも良かった」と好感触を伝えています 。
最大の強調材料は、昨年の調整過程との比較です。昨年は約4ヶ月の休み明けで追い切りはわずか5本と、やや急仕上げの印象は否めませんでした。しかし今年は、約5ヶ月の休み明けながら追い切り本数は9本と大幅に増加 。量だけでなく質も高く、今年は単なる叩き台ではなく、本気でタイトルを獲りにきたという陣営の意気込みが感じられます 。一部ではその動きの良さから最高評価(SS)を与える専門家もおり、2022年ホープフルS(G1)を制した地力の高さは健在です 。コース適性も証明済みで、リベンジの準備は整いました 。
ブライアンセンス (A+):併せ馬で圧巻の動き。マーチS快勝時に状態酷似
平安S(9着)ではスローペースに泣いたブライアンセンスですが、巻き返しへ向けて絶好の状態にあります。この中間は「良い動きを連発している」と評され、特に最終追い切りでは併走相手のワールドタキオンを全く寄せ付けない圧巻の動きを見せました 。
専門家の間では「駄目だった前走というより重賞を勝った2走前(マーチS)に近い状態」との見方が支配的で、これは非常に心強い材料です 。今回初めてコンビを組む丹内祐次騎手も、2週にわたって追い切りに騎乗。「動きも良かった。いいイメージで(レースに)いけそう」とコメントしており、乗り替わりの不安もありません 。展開さえ向けば、重賞ウィナーの力を見せつける可能性は高いでしょう。
ウィリアムバローズ (A):北の大地で入念な乗り込み。好調キープ
ダート戦線のトップクラスで活躍を続けるウィリアムバローズも、順調な仕上がりです。早めに函館競馬場に入り、ウッドチップコースで7本から8本という豊富な本数を消化 。この入念な乗り込みが功を奏し、最終追い切りでは5ハロン68.1秒、終い12.5秒をマークし、「活気十分」と評される動きを見せました 。
陣営からは「夏負けしている様子もない」「太め感はない」といった頼もしいコメントが聞かれ、心身ともに充実している様子がうかがえます 。その動きは時計以上に素軽さを感じさせるもので、G1・かしわ記念2着の実力は伊達ではありません 。能力を出し切れる状態にあることは間違いなく、ここでも主役級の走りを見せてくれるでしょう。
ペリエール (A):前走快勝の勢いそのまま。北海道適性の高さ光る
前走の大沼Sを快勝し、勢いに乗ってここに臨むペリエール。その好調ぶりは追い切りでも明らかで、1週前の併せ馬では楽々と先着するなど、前走時と遜色ない動きを見せています 。まさに「前走で勝った勢いそのまま」という評価がピッタリで、佐々木大輔騎手も「好調キープ」と状態の良さに太鼓判を押しています 。
新馬戦や前走の走りから、一部では「北海道が合っているタイプかもしれない」との声も上がっており、コース適性への期待も高まります 。2023年のユニコーンS(G3)勝ち馬が、北の大地で完全復活を遂げる可能性は十分に考えられます 。
テーオードレフォン (A):使い詰めの疲れなし。昨年激走の再現も
前走・マリーンS(2着)から中2週という短い間隔での出走ですが、テーオードレフォンに疲れの色は見えません。札幌ダートでの最終追い切りでは、6ハロン79.1秒という好時計をマーク。軽くムチを入れただけで併走相手を突き放す力強い動きを見せており、「好調キープ」と判断できます 。丸山元気騎手も「いいのではないかと思います」と手応えを感じており、昨年のような激走があっても不思議はない仕上がりです 。前走で同コースを経験している強みも活かせそうです 。
ペイシャエス (A-):連覇へ昨年同様の調整も、鞍上に一抹の不安
昨年の覇者ペイシャエスは、今年も連覇へ向けて万全のローテーションを組んできました。昨年と同じく中18週の休み明けで、追い切り本数も同じ10本 。1週前には札幌ダートで終い11.6秒の鋭い動きを見せるなど、パターン通りなら今年も好走が期待できます 。
しかし、今回は大きな懸念材料が浮上しています。騎乗した横山和生騎手が「緩さや硬さがキツく目立っている」と、馬のフィジカル面に極めて厳しいコメントを残しているのです 。この「勝者の調整パターン」と「鞍上の厳しい感触」という相反する情報は、この馬を今回のレースで最も難解な存在にしています。好走パターンを信じるか、鞍上の感触を重く見るか。馬券的には非常に悩ましい一頭であり、そのリスクとリターンを考慮して評価はA-としました。
【B評価以下】評価を下げた馬たちとその理由
馬券検討において、好調馬を見抜くことと同じくらい重要なのが、評価できない馬を的確に判断することです。ここでは、追い切り内容から評価を下げざるを得なかった馬たちとその理由を解説します。
マテンロウスカイ (B+):ダートでの動きは素軽い。本格化の兆し
追い切りの動き自体は素軽く、函館ダートで終い12.0秒をマークするなど「A」評価に値します 。ダートのみで調整されている点も好感が持てますが 、芝からの転向組でまだ実績が浅く、上位陣と比較すると一枚落ちる印象は否めません。
トロヴァトーレ (B):動きは悪くないが、初ダート・調教内容に疑問符
動き自体は悪くないものの 、今回が初のダート挑戦であるにもかかわらず、ダートコースでの追い切りを一本も消化していない点は大きな疑問符がつきます 。陣営も「初めてのダートでどんな競馬をするか」と手探りな様子で 、ここでは静観が妥当と判断しました。
ショウナンライシン (C):使い詰めの影響か、動きに覇気なし
最終追い切りではムチへの反応が薄く、「地味な動き」と評されています 。近走の使い詰めの影響が懸念され 、本調子にはないと見られます。
スレイマン (C):調教本数不足が顕著。変わり身は期待薄か
中10週で追い切り5本という本数の少なさが目立ちます 。その影響か、最終追い切りの動きも平凡で、近走の大敗続きから大きく変わった様子は見られません 。
ミッキーヌチバナ (C):休み明けで本数少なく、本調子には一歩手前
中15週で追い切り4本と、こちらも明らかに本数不足 。追い切りの動きもこの馬としては地味で、「休み明けという感じ」という評価が妥当でしょう 。
ワールドタキオン (D):不振続きで、追い切りでも強調材料なし
1週前の併せ馬ではブライアンセンスに全くついていけず、力の差は歴然でした 。近走の不振から脱する気配は追い切りからは感じられず、厳しい戦いが予想されます 。
追い切り評価まとめと最終見解へのステップ
ここまで全頭の追い切りを詳細に分析してきました。まとめると、ロードクロンヌとヴァルツァーシャルの2頭がS評価に値する絶好の仕上がりを見せています。それに続くA評価グループも、昨年からの上積みが著しいドゥラエレーデ、復調気配が著しいブライアンセンスを筆頭に、甲乙つけがたい好調馬が揃いました。
一方で、昨年の覇者ペイシャエスには「好走パターン」と「鞍上の不安コメント」という大きなジレンマが存在し、初ダートのトロヴァトーレは未知の魅力と準備不足のリスクを併せ持っています。これらの馬の取捨選択が、馬券の成否を分ける重要な鍵となるでしょう。
エルムS 2025の最終結論は、こちらのプロ予想でご確認ください
「追い切り」から各馬の状態を徹底分析してきましたが、最終的な印・買い目については、以下のリンクからご覧いただけます。S評価馬を軸にするのか、それともA評価の混戦模様から妙味を狙うのか。プロの最終結論をぜひあなたの馬券検討にお役立てください。
コメント