序章:夏の函館を占う重要レース、巴賞とは
夏の北海道開催が開幕し、競馬ファンの視線は北の大地に注がれています。その中でも、函館競馬のクライマックスであるGIII函館記念へと続く重要な一戦が、今回分析する「巴賞」です 。函館競馬場の芝1800mを舞台に行われるこのオープン特別競走は、単なる一レースに留まらず、本番の函館記念の行方を占う上で極めて重要なステップレースとして位置づけられています 。レース名の「巴」は、函館湾の巴(ともえ)の形に由来しており、まさに函館を象徴する名物レースと言えるでしょう 。
この記事では、単なる直感や印象論に頼るのではなく、過去10年間の膨大なレースデータを徹底的に分析。そこから導き出された「3つの鉄板ポイント」を基に、2025年の巴賞を論理的に攻略していきます。
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第1部:2025年巴賞 全出走馬とレース展開の展望
まずは今年の出走馬を確認し、レース全体の流れを予測することから始めましょう。どのような展開になるかを想定することは、的中への第一歩です。
2025年 巴賞 出走馬一覧
枠 | 馬 番 | 馬名 | 性齢 | 斤量 | 騎手 | 厩舎 | 予想 オッズ |
1 | 1 | セットアップ | 牡4 | 57.0 | 浜中 | 鹿戸 | 19.5 |
2 | 2 | マイネルブリックス | 牡4 | 57.0 | 丹内 | 黒岩 | 22.4 |
3 | 3 | ドナベティ | 牝4 | 55.0 | 武豊 | 矢作 | 8.4 |
4 | 4 | ケイアイセナ | 牡6 | 57.0 | 藤岡佑 | 平田 | 3.8 |
5 | 5 | グランスラムアスク | 牝6 | 55.0 | 古川奈 | 矢作 | 37.0 |
5 | 6 | ソリダリティ | 牡6 | 57.0 | 佐々木 | 西園翔 | 11.6 |
6 | 7 | コンクシェル | 牝5 | 57.0 | 横山武 | 清水久 | 13.8 |
6 | 8 | ディオスバリエンテ | セ7 | 57.0 | 鮫島駿 | 堀 | 21.9 |
7 | 9 | カヨウネンカ | 牝6 | 55.0 | 黛 | 斎藤誠 | 33.4 |
7 | 10 | コントラポスト | 牡5 | 58.0 | 横山和 | 菊沢 | 2.4 |
8 | 11 | サムハンター | 牡7 | 57.0 | 斎藤 | 高橋康 | 44.1 |
8 | 12 | ウインシュクラン | セ7 | 57.0 | 松岡 | 鹿戸 | 16.0 |
レース展開の鍵を握る馬たち
今年のメンバー構成を見ると、レースの主導権を握りたい馬が複数存在します。
- ケイアイセナ: 勝利した大原Sや福島民報杯で見せたように、ハナを奪って自分のペースに持ち込むのが理想の形。平田師の「自分のペースで行ければ」というコメントも、その戦法を示唆しています。
- ウインシュクラン: 阿武隈Sを逃げ切り、福島記念でも大逃げを打った生粋の逃げ馬。鹿戸師が「自分の形に持ち込めればしぶとい」と語る通り、今回も積極策に出ることは間違いありません。
- コンクシェル: 洛陽SやディセンバーSなど、先行して粘り込む競馬で結果を残しており、前々のポジションを狙ってくるでしょう。
ペース予測:スローからの持続力勝負が濃厚
複数の先行馬がいますが、これが必ずしもハイペースに繋がるとは限りません。その最大の理由は、函館芝1800mのコース形態にあります。スタートから最初の1コーナーまでの直線距離が約276mと非常に短いため、序盤から無理に競り合うとスタミナを消耗し、外枠の馬は大きなロスを強いられます 。
このため、各騎手はまず有利なポジションを確保することを優先し、序盤のペースは自然と落ち着く傾向にあります。過去のデータを見ても、テンの3ハロンが遅くなるスローペース戦が多発しています 。
レースがスローで流れれば、問われるのは一瞬のキレ(瞬発力)ではありません。コーナー4つの小回りコースをいかにスムーズに立ち回り、最後の長い直線でバテずに脚を伸ばし続けられるか、という「持続力」が勝敗を分ける重要な要素となります。軽い芝向きのスピード馬よりも、力の要る洋芝を苦にしないスタミナとパワーが求められるのです 。
第2部:過去10年のデータが暴く!巴賞を的中させるための3つの鉄則
ここからは、過去10年間のレース結果を基に、巴賞を攻略するための3つの重要な法則を解説します。
鉄則1:『前有利』は絶対!ポジション争いを制する脚質が勝敗を分ける
函館芝1800mという舞台において、脚質は極めて重要なファクターです。データは「先行」がいかに有利であるかを明確に示しており、このコースの先行馬の複勝率は32.0%に達します 。
過去10年の勝ち馬を振り返っても、この傾向は明らかです 。2023年の勝ち馬アラタは道中4番手から、2020年のトーラスジェミニと2015年のマイネルミラノに至っては一度も先頭を譲らない逃げ切り勝ちを収めています 。2022年のホウオウピースフル(通過順6-8-6-6)のように中団から勝利した馬もいますが、それでも4コーナーでは勝ち負けできるポジションまで押し上げていました 。
この背景には、前述したコース形態が大きく影響しています。短い直線とタイトなコーナーが続くため、後方の馬が追い上げるには、コーナーで外を回らされる距離ロスが生じやすく、前でスムーズにレースを進めた馬が圧倒的に有利になるのです 。
【2025年の出走馬への応用】
- 高く評価できる馬: ケイアイセナ、ウインシュクラン、コンクシェルは、このレースの定石に最も合致する馬たちです。また、前走の府中Sを2、3番手から進めて勝利したソリダリティも、この流れに乗れる可能性は十分にあります。近走不振のセットアップも、ラジオNIKKEI賞を2番手から押し切った実績があり、戦法を戻せば一変も考えられます。
- 割引が必要な馬: ドナベティは、阪神牝馬S(13-13)など、一貫して後方からの末脚に賭ける競馬をしています。その切れ味は確かですが、スローペースが濃厚なこのレースでは持ち味を活かせず、不発に終わる危険性をはらんでいます。
鉄則2:血統は嘘をつかない!時計のかかる洋芝で輝く『スタミナ血統』
函館の芝は、中央の他の競馬場で使われる野芝とは異なる「洋芝」です。この洋芝は根が深く、クッション性が高い反面、走るのにパワーを要する「力の要る馬場」として知られています 。したがって、高速馬場でのスピード勝負を得意とする血統よりも、タフな流れでこそ真価を発揮するスタミナ豊富な血統が狙い目となります。
過去10年の好走馬の血統を分析すると、この傾向は顕著に表れています 。サンデーサイレンス系の中でも、特にスタミナと持続力に優れた
ステイゴールドやハーツクライの系統が抜群の成績を収めています。また、スピードとパワーを兼ね備えたキングカメハメハ(Mr. Prospector系)とその産駒であるルーラーシップなども、この舞台で高い適性を示しています 。重要なのは、特定の種牡馬の名前ではなく、タフなレースを最後まで走り抜く「スタミナ」や「底力」を伝える血統のタイプを見抜くことです。
【2025年の出走馬への応用】
- 高く評価できる馬:
- コントラポスト: 父はキングカメハメハ系のルーラーシップ、母の父はサンデーサイレンス系のフジキセキ。まさにこのレースで最も成功している2大血統を併せ持つ、理想的な配合と言えます。
- ソリダリティ: 父はスタミナ血統の代表格であるハーツクライ。タフな流れになればなるほど、この血が活きてくるでしょう。
- カヨウネンカ: 父はステイゴールド産駒で、自身も洋芝の鬼として鳴らしたゴールドシップ。典型的な洋芝巧者の血統背景を持ち、持久力勝負はお手の物です。
- 評価が分かれる馬:
- ケイアイセナ: 父は偉大なディープインパクトですが、産駒はどちらかと言えば高速馬場を得意とする傾向があります。母父Smarty Jonesの血が米国のタフさを補ってはいますが、ペース次第では脆さを見せる可能性も否定できません。
- セットアップ: 父デクラレーションオブウォーは、マイル路線での活躍が目立つWar Frontの系統。スタミナが問われる1800mの舞台で、どこまで踏ん張れるかが鍵となります。
鉄則3:内枠絶対有利!1枠の驚異的な勝率を見逃すな
コース形態がレース展開に大きな影響を与えることは既に述べましたが、それは枠順の有利不利にも直結します。そして、巴賞において最も注目すべきは「1枠」の圧倒的な強さです。過去10年で、1枠に入った馬は実に33.3%という驚異的な勝率を誇ります 。
この理由は極めて論理的です。スタートから最初のコーナーまでの距離が短いため、内枠の馬は最短距離でインコースを確保でき、道中の距離ロスを最小限に抑えることができます 。一方で外枠の馬は、前に出ようとすれば脚を使わされ、控えれば外々を回らされるリスクを負います。この序盤の小さなアドバンテージが、ゴール前の大きな差となって表れるのです。
もちろん、6枠や8枠も複勝率では健闘しており、外枠が全く来ないわけではありませんが 、1枠の勝率の高さは、他のどの要素よりも優先して考えるべきデータと言えるでしょう。
【2025年の出走馬への応用】
- 最大の恩恵を受ける馬:
- 1枠1番 セットアップ: まさに「黄金の枠」を引き当てました。近走の成績は振るいませんが、この枠順を活かして楽に先行、あるいはインの好位を確保できれば、軽視は禁物です。この枠こそが、彼にとって最大の武器となります。
- 3枠3番 ドナベティ: 絶好の内枠を引きました。しかし、彼女の後方待機策ではこの枠の利点を活かしきれない可能性も。名手・武豊騎手が、いかにして普段より前のポジションを取れるかが、全ての鍵を握ります。
- 枠順に泣かされる馬:
- 8枠12番 ウインシュクラン: 逃げ馬にとって、大外枠は非常に厳しい条件です。ハナを奪うまでに相当なスタミナを消耗する可能性が高く、最後の直線で脚が上がってしまう懸念があります。
- 7枠10番 コントラポスト: 有力馬ですが、やや外目の枠に入りました。横山和生騎手の手腕で、いかにロスなく好位を確保できるかが問われます。
第3部:有力馬の最終診断 – 調教・厩舎コメントから探る本音と状態
データ分析に、各馬の「今」の状態を加味して、有力馬を最終診断します。
- 10番 コントラポスト 予想1番人気(2.4倍)に推される中心的存在。血統背景は鉄則2にパーフェクトに合致し、ダービー卿CT2着など重賞でも実績は上位です。菊沢師の「ここを目標にいい状態で臨める。函館も合いそう」という強気なコメントや、調教での「キビキビ」とした動きからも、万全の状態であることが窺えます。唯一の懸念は7枠10番というやや外目の枠順だけでしょう。
- 4番 ケイアイセナ 鉄則1である「前有利」の展開を最も味方にできる馬。4枠4番という好枠から、すんなりと主導権を握れそうです。平田師の「ここを目標に順調な仕上がり」というコメントは、メイチ勝負(陣営が最も力を入れているレース)を強く示唆しており、好感が持てます。調教評価も「動き軽快」と上々。ディープインパクト産駒の血統が、タフな洋芝にどこまで対応できるかが唯一の焦点です。
- 3番 ドナベティ 非常に興味深い一頭。3枠3番の絶好枠、鞍上はレジェンド武豊騎手。宮内助手の「相性のいい鞍上に代わるのもプラス。一変を期待」というコメントからは、陣営の大きな期待が伝わってきます。調教の動きも「軽快」で状態は良さそうです。しかし、彼女の脚質はコースの傾向とは真逆。武豊騎手が魔法のような騎乗で彼女を前目に導けるかどうかに、全てが懸かっています。ハイリスク・ハイリターンの存在です。
- 1番 セットアップ 最大の「穴馬」候補。近走の不振から人気はありませんが、統計的に最も有利な1枠1番を引きました。過去には重賞を先行策で勝利した実績もあります。鹿戸師の「最後まで集中して走れれば前進は可能」というコメントは控えめながらも、変わり身の余地を示唆しています。かつての走りが戻れば、この枠順を武器に波乱を巻き起こす可能性を秘めています。
- 6番 ソリダリティ 強力な伏兵。父ハーツクライという血統は理想的で、先行できる脚質もこのレースにぴったりです。調教の動きも良く、西園翔師も「格上相手にどこまで」と力試しに意欲を見せています。データ上の好走条件をほぼ満たしており、人気馬をまとめて負かすだけの資格は十分にあります。
結論:最終的な印と買い目はこちらから
2025年の巴賞を制するのは、**「先行できる脚質」「力の要る洋芝に適性のあるスタミナ血統」「有利な内目の枠順」**という3つの条件を高いレベルで満たした馬である可能性が極めて高いでしょう。そして、そのデータ分析に、各馬の調教や陣営のコメントから読み取れる「現在の状態」という最後のピースをはめ込むことで、的中の確率はさらに高まります。
上記の分析を踏まえた、最終的な印(◎○▲△)と具体的な買い目については、以下のリンクからご確認ください。専門家の最終結論をお見逃しなく!
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