序章:金沢3歳世代の頂点へ – 石川優駿とは?
金沢競馬における3歳世代の頂点を決める一戦、それが「石川優駿」です。かつては「石川ダービー」の名で親しまれ、全国的なダート競走体系の整備に伴い現在のレース名へと変更されました 。その名誉と格式は、金沢3歳クラシック路線の中核を成す最重要レースとしての地位を揺るぎないものにしています 。
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ダービーの名を継ぐ一戦の格式
優勝賞金1000万円を懸けて、サラブレッド系3歳の精鋭たちが金沢競馬場のダート2000mを舞台に激突します 。このレースは、トライアルである「北日本新聞杯」から始まり、「MRO金賞」「サラブレッド大賞典」へと続く金沢3歳4冠路線の中心に位置づけられており、ここで勝利することは、世代最強の称号を手にする上で避けては通れない道です 。馬主や調教師、騎手にとって、そのキャリアを左右するほどの大きな一戦と言えるでしょう。
攻略の鍵は「小回り・多コーナー」- 金沢2000mコース徹底解剖
石川優駿の予想において、まず理解すべきは金沢競馬場ダート2000mという極めて特殊なコース形態です。1周1200mのコースを約1周半、コーナーを実に5回も通過するレイアウトとなっています 。
最大の特徴は、ゴール前の直線距離がわずか236mと、中央競馬(JRA)の主要競馬場と比較して極端に短い点にあります 。この「短い直線」と「5つのコーナー」という組み合わせが、レースの性質を決定づけています。単に最高速度が速いだけでは勝てません。コーナーをロスなく回り、道中で有利なポジションを確保する器用さ(立ち回りの巧さ)と、勝負どころで機敏に動ける戦術眼が何よりも求められます。一度でも位置取りを悪くしたり、コーナーで外に振られたりすれば、短い直線で挽回することはほぼ不可能です。このコースは、スタートからゴールまで息の抜けない、高度な戦術が要求される舞台なのです。
過去の傾向から導く!石川優駿2025 予想の3大ポイント
この難解な一戦を攻略するため、過去のレース結果を徹底分析しました。そこから浮かび上がってきたのは、馬券検討に不可欠な「3つの鉄板法則」です。
ポイント1:『牝馬』が牡馬を圧倒!今年も歴史は繰り返されるか?
石川優駿の歴史を紐解くと、驚くべき傾向が見えてきます。それは、牝馬が牡馬を相手に互角以上の戦いを演じ、むしろ圧倒しているという事実です 。過去8回の開催で、実に5頭の牝馬が優勝を飾っています。
- 2023年:ショウガタップリ
- 2022年:スーパーバンタム
- 2020年:ハクサンアマゾネス
- 2019年:ロンギングルック
- 2017年:ヴィーナスアロー
この傾向をより明確に示すため、過去5年の3着以内に入った馬の性別と騎手を見てみましょう。
石川優駿 過去5年の結果と傾向 | 年 | 優勝馬(性別・騎手) | 2着馬(性別・騎手) | 3着馬(性別・騎手) | | :— | :— | :— | :— | | 2024 | ナミダノキス (牡・柴田勇真) | リケアマロン (牝・吉原寛人) | ロックシティボーイ (牡・堀場裕充) | | 2023 | ショウガタップリ (牝・吉原寛人) | ダイヤモンドライン (牝・中島龍也) | ノブノビスケッツ (牡・青柳正義) | | 2022 | スーパーバンタム (牝・青柳正義) | スターフジサン (牡・吉原寛人) | スタイルユアセルフ (牝・甲賀弘隆) | | 2021 | アイバンホー (牡・中島龍也) | ビルボードクィーン (牝・吉原寛人) | サブノタマヒメ (牝・青柳正義) | | 2020 | ハクサンアマゾネス (牝・吉原寛人) | フジヤマブシ (牡・平瀬城久) | カガノホマレ (牡・栗原大河) | 出典:
表が示す通り、毎年必ずと言っていいほど牝馬が馬券に絡んでいます。この背景には、牡馬57.0 kgに対して牝馬は55.0 kgという2kgの斤量差があります 。この斤量差は、平坦なコースでは些細なものに思えるかもしれません。しかし、5回もコーナーを回り、その都度減速と再加速を繰り返す金沢2000mにおいては、この2kgの差がスタミナの消耗度に大きく影響します。軽い斤量で器用に立ち回れる牝馬が、レース終盤で牡馬を上回る粘りを見せるのは、このコースならではの現象と言えるでしょう。
今年の出走メンバーでこの強力な追い風を受けるのは、ショウガマッタナシ、ジューンノールック、ビバロジータといった有力牝馬たちです。予想する上で、彼女たちの存在は決して無視できません。
ポイント2:金沢の”神”を背にする馬は黙って買い!名手・吉原寛人騎手の恐るべき支配力
地方競馬では、特定のコースを熟知した「コース巧者」と呼ばれる騎手の存在が、予想の重要なファクターとなります。石川優駿において、その筆頭に挙げられるのが吉原寛人騎手です。
過去8回の歴史の中で、吉原騎手は2017年、2018年、2020年、2023年と4度の勝利を挙げています 。さらに2021年と2024年には2着に入っており、実に8年間で6回も連対(2着以内)しているのです 。この驚異的な成績は、彼がこのレースをいかに得意としているかを物語っています。また、2022年の覇者である
青柳正義騎手も、このコースを知り尽くした名手の一人です 。
今年、この「吉原マジック」が予想をさらに面白くしています。吉原騎手が騎乗するのはビバロジータ。しかし、彼女はトライアルの北日本新聞杯で9着と大敗を喫しています。なぜ、このレースを知り尽くした名手が、前走で結果を出せなかった馬を選ぶのか。これにはいくつかの可能性が考えられます。
- 前走に何らかの明確な敗因(不利や体調など)があった。
- 1700mよりも2000mへの距離延長でこそ真価を発揮すると見込んでいる。
- 自身の騎乗技術で、馬の能力を最大限に引き出せると確信している。
いずれにせよ、吉原騎手が騎乗するという事実だけで、ビバロジータは単なる人気薄から一気に注目の存在へと浮上します。そして、2番人気に支持されるジューンノールックには青柳正義騎手が騎乗。有力馬とコースを知る名手の組み合わせは、まさに鬼に金棒です。
ポイント3:最重要ステップ「北日本新聞杯」の着順はワナ?距離延長がもたらす逆転劇
公式トライアルレースである「北日本新聞杯」(ダート1700m)は、石川優駿の行方を占う上で最も重要なステップレースです 。今年の勝ち馬は、圧倒的な強さを見せた
クリノチャールズでした。当然、彼が本番でも主役候補であることは間違いありません。
しかし、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。それは、本番で距離が1700mから2000mへと300m延長される点です。このわずか300mの差が、スタミナの優劣を浮き彫りにし、トライアルとは全く異なる結果を生み出すことが少なくありません。ここで重要になるのが、各馬の血統背景です。
- クリノチャールズ(北日本新聞杯 1着): 父はディープインパクト産駒のグレーターロンドンでスタミナの裏付けはありますが、母の父は日本競馬を代表する短距離王サクラバクシンオーです。この血統構成は、5つのコーナーを回るタフな2000m戦で最後までスタミナが持つかという点で、一抹の不安を抱かせます。
- ショウガマッタナシ(北日本新聞杯 2着): 彼女の母の父はハーツクライ。この名前は要注目です。ハーツクライはスタミナと底力を産駒に伝えることで知られ、2017年の石川ダービーを制したヤマミダンスの父でもあります 。1700mのトライアルで2着に入った能力に加え、距離延長が明確なプラスに働く血統背景は、逆転の可能性を強く示唆しています。
- ダンナイ(北日本新聞杯 10着): トライアルでは大敗しましたが、父はG1・宝塚記念(2200m)を制したミッキーロケット。その父は万能型のスタミナを誇るキングカメハメハです。血統的には明らかに距離が延びてこそ持ち味を発揮するタイプであり、前走の大敗だけで評価を落とすのは早計です。
このように、北日本新聞杯の結果を鵜呑みにするのは危険です。距離延長への適性、すなわち血統に秘められたスタミナこそが、逆転劇の鍵を握っているのです。
石川優駿 2025 有力馬徹底分析
これら3つのポイントを踏まえ、今年の有力馬を徹底的に分析します。
◎本命候補:ショウガマッタナシ
3つの鉄板法則に最も合致するのがこの馬です。
- ポイント1(牝馬): 該当。強力なデータの後押しがあります。
- ポイント2(騎手): 鞍上は金沢のリーディング上位騎手である栗原大河騎手。名手・吉原騎手ではないものの、確かな腕を持つ実力者です。
- ポイント3(距離適性): 最大の強み。母父ハーツクライという血統は、このレースでスタミナが問われる展開になった際に絶大な信頼を置けます 。1700mのトライアルで強敵相手に2着と好走した内容は、クラス上位の能力の証明であり、距離延長でさらなるパフォーマンス向上が見込めます。歴史的傾向と血統背景から、最も王座に近い一頭と評価します。
○対抗:クリノチャールズ
現在の完成度と勢いはメンバー随一ですが、乗り越えるべき課題も抱えています。
- ポイント1(牝馬): 非該当。牡馬である点は、過去のデータ上ではマイナス材料です。
- ポイント2(騎手): 鞍上の中島龍也騎手は、2019年と2021年にこのレースを制している実力者であり、心強い存在です 。
- ポイント3(距離適性): 最大の焦点。トライアルで見せたパフォーマンスは本物ですが、母方の血統からスタミナ面での不安は拭えません。先行してそのまま押し切るだけの力はありますが、最後の直線で脚が鈍る可能性も考慮すべきでしょう。
▲単穴:ビバロジータ
近走の成績からは推しづらいものの、それを覆すだけの魅力を持つ大穴候補です。
- ポイント1(牝馬): 該当。牝馬優勢の傾向に乗る一頭です。
- ポイント2(騎手): 該当。この馬を評価する最大の理由が、名手・吉原寛人騎手の騎乗です。トライアル9着からの巻き返しを鞍上がどう導くか、その手綱捌きに全てが懸かっています。
- ポイント3(距離適性): 父ヘニーヒューズはスピード寄りですが、母父コロナドズクエストはスタミナを補給する血統。未知の魅力はありますが、まずは前走からの変わり身が示せるかどうかが鍵となります。まさに、近走成績よりも「人」と「歴史」で買うべき一頭です。
△連下:ジューンノールック
JRAからの転入馬で、秘める能力は相当なものがあります。
- ポイント1(牝馬): 該当。
- ポイント2(騎手): 該当。鞍上は2022年の覇者・青柳正義騎手。馬の能力を最大限に引き出してくれるでしょう 。
- ポイント3(距離適性): 父リアルスティール(父ディープインパクト)は中長距離向きですが、母父Acclamationはスピード色が濃く、血統評価はクリノチャールズと似た部分があります。JRAで培った地力は魅力ですが、金沢のトリッキーなコースへの対応力が問われます。
☆注意:ダンナイ & タルバン
距離延長でパフォーマンスを大きく上げてくる可能性を秘めた2頭です。
- ダンナイ: トライアルは10着と振るいませんでしたが、父ミッキーロケットの血統背景はスタミナ勝負への適性を強く示唆しています。人気を落とすであろう今回は、馬券的な妙味が非常に大きい一頭です。
- タルバン: 父は同じくディープインパクト系のダノンバラード。トライアル7着からの上積みが見込める血統で、3連複や3連単のヒモとして押さえておきたい存在です。
結論と展望 – 3つのポイントから浮上する真の主役は?
最終結論への道筋
ここまで分析してきたように、2025年の石川優駿は非常に興味深い構図となりました。トライアルを圧勝し、現在の勢いで他を圧倒するクリノチャールズ。しかし、過去のデータは「牝馬」であり「スタミナ血統」を持つ馬に微笑んできました。
レースの行方を左右するのは、間違いなく1700mから2000mへの距離延長というファクターです。この300mが、トライアルの着順を覆し、新たなヒーロー、あるいはヒロインを誕生させる可能性を十分に秘めています。現在の「勢い」を取るか、それともレースの本質を突く「データと血統」を取るか。馬券戦略が大きく分かれる一戦となるでしょう。
最終的な印・買い目はレース当日に公開!
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