1. はじめに
1.1 スマート出馬表とは
スマート出馬表は、著名な競馬評論家であり、「血統ビーム」理論の提唱者である亀谷敬正氏がプロデュースする、革新的な競馬予想支援ツールです 。従来の出馬表が提供する基本的なレース情報に加え、独自のデータ分析や視覚的な工夫を取り入れることで、競馬ファンに新たな視点を提供することを目的としています。
1.2 コンセプトと目的
このツールの根底にあるのは、亀谷氏が長年にわたり提唱してきた「血統ビーム」理論です 。スマート出馬表は、この理論に基づき、専門紙やスポーツ紙では通常掲載されない独自の血統分類(例:サンデーサイレンス系のP型/T型分類、国系統分類など)や、ペース分析に関する詳細なデータ(例:テンP、上がりP、テン1Fタイムなど)、レース状況を評価する指標(例:双馬メモ、評価)などを豊富に搭載しています 。これらの情報は、色分けや記号を用いて視覚的に分かりやすく表示され、「今までにない競馬の見方」を広めることを目指しています 。
本レポートは、このスマート出馬表が提供する多岐にわたる機能、独自のデータ項目の詳細な読み解き方、そしてそれらを実際の競馬予想にどのように効果的に活用できるかについて、包括的に解説することを目的とします。
亀谷敬正氏という特定の理論家と、その独自の方法論である「血統ビーム」に明確に結びついている点は、一般的なデータ提供サービスとは一線を画します。これは単なるブランド戦略に留まらず、提供されるデータの種類(例:血統のP/Tタイプ分類や国系統 )やその提示方法に直接影響を与えています。つまり、スマート出馬表は、亀谷氏の競馬分析哲学を具現化し、その思考プロセスを利用者がアクセスしやすく、適用できるように設計されたツールと言えます。中立的なデータ提供というよりは、特定の分析的視点を推奨し、利用者をその枠組みへと導く意図がうかがえます。
2. スマート出馬表の入手先とアクセス方法
2.1 提供元とアクセス
スマート出馬表は、主に以下のウェブサイトを通じて提供されています。
- 血統ビームオフィシャルサイト (k-beam.com): 亀谷敬正氏の公式サイトであり、スマート出馬表に関する情報やヘルプページなどが掲載されています 。
- スマート出馬表 専用サイト (smartrc.jp): スマート出馬表のメインとなるプラットフォームです 。
これらのサイトへは、PC(パソコン)およびスマートフォンのウェブブラウザからアクセス可能です 。特別なアプリケーションのインストールは不要で、開催されるレースを選択することで、該当レースのスマート出馬表が表示されます 。
また、スマート出馬表は亀谷氏が主宰するオンラインサロン「亀谷競馬サロン」と密接に連携しており、サロンメンバーはより高度な機能やデータを利用できます 。
2.2 無料版とプレミアム版
スマート出馬表には、無料で利用できる範囲と、有料の「亀谷競馬サロン」会員向けに提供されるプレミアム機能が存在します。
- 無料版:
- JRA(日本中央競馬会)が開催する全レースのスマート出馬表が、基本的な機能を含めて無料で提供されています 。
- これには、独自の血統カラーリングや各種データ表示に加え、後述するIPAT(JRAのインターネット投票サービス)連携機能も含まれています 。
- プレミアム版 (亀谷競馬サロン会員向け):
- 提供内容: 無料版の機能に加え、NAR(地方競馬全国協会)のレースへの対応、より詳細な「国系統評価」などの限定データ、AI予想コンテンツ「亀AI」の利用、その他サロン限定の機能や情報へのアクセス権などが付与されます 。通常版と比較して、掲載内容や搭載機能が強化されています 。
- アクセス: 「亀谷競馬サロン」への入会が必要です。サロンには「プレミアムコース」(30日間10,800円)と「レギュラーコース」(30日間999円)があり、選択するコースによって利用可能なスマート出馬表の機能や、その他のサロンコンテンツの範囲が異なります 。
この無料版とプレミアム版の二層構造(フリーミアムモデル)は、戦略的な目的を持っていると考えられます。まず、広く一般に認知されているJRA(中央競馬)のレースを対象とした無料版を提供することで、多くの競馬ファンをユーザーとして獲得します 。そして、より熱心な競馬ファンや、地方競馬に関心がある層、あるいは高度な分析ツールを求めるユーザーに対して、NAR(地方競馬)対応や国系統評価、高度なAI機能といったプレミアム機能を有料の「亀谷競馬サロン」メンバーシップを通じて提供します 。これにより、無料ユーザーを有料会員へと転換させる流れ(ファネル)を構築しています。これは単なる機能差だけでなく、亀谷氏が構築した情報エコシステムへの段階的なアクセスを提供するビジネスモデルと言えるでしょう。
3. スマート出馬表の画面構成と基本情報
3.1 画面レイアウト
スマート出馬表は、ウェブブラウザ上で動作し、出走馬に関する様々な情報が整理された表形式で表示されます 。PCとスマートフォンでは、画面サイズに合わせて最適な表示となるよう、デフォルトで表示される情報のタブなどが異なる場合がありますが、提供される情報項目自体は基本的に同じです 。
画面は主に以下の要素で構成されていると考えられます。
- ヘッダー部: 画面上部には、レース名、開催日、競馬場名、コースの種類(芝・ダート)、距離、レース番号といった、そのレースを特定するための基本情報が表示されます 。また、IPAT連携機能を利用するための「IPAT投票」ボタンや「IPAT照会」ボタンもこの領域に配置されています 。
- メイン表示部: 画面の主要部分を占め、出走する各馬の情報が横一列に表示されます。馬番、馬名、騎手名などの基本情報から、独自の分析データまで、多数の情報項目がカラム(列)として並びます 。利用者は、この表をスクロールしながら各馬の情報を比較検討します。
3.2 表示される標準的な情報項目
スマート出馬表には、一般的な競馬新聞や出馬表で提供される標準的な情報も網羅されています。これにより、従来の出馬表に慣れ親しんだユーザーもスムーズに利用を開始できます。主な標準情報項目は以下の通りです 。
- 馬に関する基本情報: 馬番、枠番、馬名、性齢(性別と年齢)。
- 負担重量・騎手・厩舎情報: 斤量(負担重量)、騎手名、調教師名、所属(美浦・栗東など)。
- オッズ情報: 単勝オッズ、複勝オッズ(リアルタイムで変動)。
- 馬体重: レース当日に発表される馬体重と、前走からの増減。
- その他: 父、母、母の父といった基本的な血統情報(ただし、スマート出馬表ではこれらを独自の系統分類と合わせて表示)、生産者名、馬主名など。
これらの標準情報に加え、スマート出馬表の真価は、次章で詳述する独自のデータ項目にあります。注目すべきは、これらの独自データ(例:推定人気、人気ランク、血統系統など )が、単勝オッズや騎手名といった標準的な情報と同じ表の中に自然に組み込まれて表示されている点です 。これにより、利用者はこれらの独自指標を、従来の予想ファクターと同列に扱って分析することを自然と促されます。二次的な情報として別ページを参照するのではなく、主要な分析画面で常に目に入るように配置することで、その重要性を暗に示し、日常的な予想プロセスへの組み込みを意図しているデザインと言えるでしょう。
4. 独自のデータ項目とその読み方・解釈
スマート出馬表の最大の特徴は、亀谷敬正氏の理論に基づいた独自のデータ項目が豊富に搭載されている点です。これらのデータを正しく理解し、解釈することが、スマート出馬表を効果的に活用する鍵となります。以下に主要な独自データ項目を解説します 。
4.1 主要な独自データ項目の解説
- 人気関連 (Popularity Related):
推定人気 (Estimated Popularity)
: 専門紙の印やオッズ傾向などを分析し、コンピュータが算出した人気順位の予測値。当日の実際の人気順位との誤差が±1以内になる確率は90%以上とされます(障害レースを除く)。人気ランク (Popularity Rank)
: 全競馬新聞のデータなどから予測される当日の予想オッズをAからEまでの5段階でランク付けしたもの。Aは当日ほぼ1番人気になるような馬(平均複勝率75%程度)、Eは当日ほぼ人気薄となる馬(複勝率5%程度)を示します。実際のオッズと比較することで、異常な投票(過剰人気や過小評価)を見抜く手がかりにもなります。出馬表上では、人気サイドのA・B・Cランクに背景色が付けられ、視認性が高められています。
- ローテーション・経験関連 (Rotation/Experience Related):
ロ (ローテパターン - Rotation Pattern)
: 今回のレースと前走の距離を比較し、「延」(距離延長)、「同」(同距離)、「短」(距離短縮)のいずれかで表示されます。異種 (Different Surface Experience)
: 今回のレースが芝であればダート経験、ダートであれば芝経験を示します。「異種/経」は近2走以内に異なる馬場経験がある馬、「異種/実」は現クラスと同等の異種レースで好走(5着以内)または勝利経験がある馬に「〇」が表示されます。
- ペース・走破タイム関連 (Pace/Time Related):
テンP (Pace Pattern - Start)
: 近走のスタートから3ハロン(約600m)の走破タイム順位を、距離ごとにパターン化した指標。「15」「30」「50」といった数字で表示され、これはそのパターンが出現する割合を示します。数字が小さいほど、近走で先行する競馬をしている、つまり先行力が高いタイプであると判断できます 。テンT (Pace Time - Start)
: 近3走のテン3ハロンタイムに独自の補正を加えた上で、最も速いタイムを表示します。括弧内の数字は出走メンバー中での順位(最大7位まで)を示します。タイムの数値が小さいほど、近走で速いペースを経験していることを意味します 。上がりP (Pace Pattern - Finish)
: 近走のラスト3ハロン(上がり3F)のタイム順位をパターン化した指標。「15」「30」「50」といった数字で表示され、数字が小さいほど、近走で速い上がりタイムを記録している、つまり末脚(終いの脚)が鋭いタイプであると判断できます。上がりT (Pace Time - Finish)
: 近3走の上がり3ハロンタイムに独自の補正を加えた上で、最も速いタイムを表示します。括弧内の数字は出走メンバー中での順位(最大7位まで)を示します。タイムの数値が小さいほど、近走で鋭い末脚を使っていることを意味します。テン1F (First Furlong Time)
: スタートから最初の1ハロン(約200m)の走破タイムに補正を加えたもの。「過去」欄には過去最速タイム、「前走」欄には前走のタイムが表示されます。括弧内の数字はメンバー中での順位です。数値が小さいほどダッシュ力が高いことを示します 。
- 血統関連 (Bloodline Related):
血統系統カラーリング (Bloodline System Coloring)
: 父、母父、父母父、母母父などの血統(小系統)を、その特性に応じて色分けして表示します 。特にサンデーサイレンス系は、その適性に応じて「P型(スピード型)」「T型(スタミナ型)」「D型(ダート型)」「L型(ローカル型)」などに細分化され、異なる色で示されます 。これにより、一目でその馬の血統的な背景や得意な条件を推測しやすくなります。国系統 (Country System)
: 各種牡馬の血統的背景を分析し、日本の競馬への影響度に基づき「日(日本型)」「米(米国型)」「欧(欧州型)」に分類して表示します 。国系統評価 (Country System Evaluation)
: 父、母父、母母父の国系統タイプとその影響力を組み合わせ、各馬の総合的な国系統評価を「A」または「B」で示す指標です(例:米国評価A、欧州評価B)。米国評価Aなら米国主流血統の影響が強いタイプ、欧州評価Aなら欧州主流血統の影響が強いタイプと判断できます。このデータは亀谷競馬サロンのプレミアムコース会員限定で提供されます。
- レース状況・評価関連 (Race Circumstance/Evaluation Related):
双馬メモ (Futatsuma Memo)
: 競馬予想家・双馬毅氏が記録する、前走で受けた不利を示すデータ。「☆枠不利」「☆馬場不利」「☆脚質不利」「☆ローテ不利」の4種類があり、前走で能力を発揮できなかった可能性を示唆します 。評価 (Evaluation)
: 競馬予想家・馬場虎太郎氏による、各馬の前走レース内容評価。AからEまでの5段階評価で、Aはそのレースで最も不利を受けた(=次走巻き返す可能性が高い)馬、Eは最も恵まれた馬を示します 。TB (Track Bias)
: 馬場虎太郎氏による、前走レースのトラックバイアス判定。「☆コース取り(内有利/外有利など)」「☆位置取り(前有利/差有利など)」で示されます 。シェア (Share)
: ダート戦全般、または芝・ダートの1400m以下戦における、各種牡馬の産駒が獲得している賞金シェアを1~8の8段階で数値化したもの。数値が大きいほどその条件下での獲得賞金比率が高い(=適性が高い)ことを示します。出馬表上では、ダート戦でダートシェアが低い種牡馬、芝の短距離戦でダートシェアが高い種牡馬など、本来の適性が低いと考えられるパターンに着色されることがあります 。
- 馬券購入補助関連 (Betting Aid Related):
合成オッズ (Synthetic Odds)
: 特定の買い方(例:3連単1着総流し、馬連総流し、ワイド総流しなど)で、どの目が的中しても払戻金額がほぼ均等になるように資金配分した場合の実質的なオッズを表示します 。複雑なフォーメーション馬券などを購入する際に、リスク管理や資金効率を考える上で役立ちます。
これらの多種多様で詳細な独自データ項目群は、スマート出馬表の設計思想を反映しています。一般的な指標だけでは捉えきれない、競走馬の能力や適性、レース展開に関わる微細な側面を数値化・可視化しようという意図がうかがえます。ペースをスタート、道中、終いと細分化し 、血統を系統だけでなく国やタイプ別に分類し 、レース中の有利不利といった主観的になりがちな要素を専門家の評価として取り入れる 。これらは、競馬予想において勝利へのエッジ(優位性)は、こうした具体的な詳細情報の分析の中に見出されるという信念に基づいていると考えられます。スマート出馬表は、これらの要素を体系的に分析するためのツールを提供し、感覚的な評価をデータに基づいた判断へと転換させることを目指していると言えるでしょう。
4.2 スマート出馬表 独自データ項目一覧
項目名 (Item Name) | 記号/表示 (Symbol/Display) | 簡単な定義 (Brief Definition) | 解釈のヒント/活用ポイント (Interpretation Hint/Application Point) |
---|---|---|---|
推定人気 | 数字 | コンピュータ算出の人気順位予測 | 当日の人気動向の目安。 |
人気ランク | A, B, C, D, E | 予想オッズに基づく5段階の人気評価 | Aほど人気、Eほど人気薄。実オッズとの乖離で妙味判断。 |
ロ (ローテパターン) | 延, 同, 短 | 前走との距離比較 | 距離変更への適性判断材料。 |
異種 | 〇 (経/実) | 芝⇔ダートの経験有無・実績 | 馬場替わりでのパフォーマンス変化予測に。 |
テンP (ペースパターン – Start) | 15, 30, 50 | 近走テン3F順位パターン | 数字が小さいほど先行力上位。レース展開予測に重要。 |
テンT (ペースタイム – Start) | タイム (順位) | 補正済み近3走最速テン3Fタイム | 数値が小さいほど速いペース経験あり。追走力判断。 |
上がりP (ペースパターン – Finish) | 15, 30, 50 | 近走上がり3F順位パターン | 数字が小さいほど末脚上位。差し・追い込み馬評価に。 |
上がりT (ペースタイム – Finish) | タイム (順位) | 補正済み近3走最速上がり3Fタイム | 数値が小さいほど鋭い末脚経験あり。決め手勝負での評価。 |
テン1F | タイム (順位) | 補正済みテン1Fタイム (過去最速/前走) | 数値が小さいほどダッシュ力上位。スタート直後の位置取り予測。 |
血統系統カラーリング | 色分け | 父・母父などの小系統を特性別に色分け | 視覚的に血統構成と適性を把握。P/T/D/L分類も含む。 |
国系統 | 日, 米, 欧 | 血統ルーツの分類 | コースや距離、馬場状態への適性判断(例:米国型はスピード、欧州型はスタミナ)。 |
国系統評価 (プレミアム限定) | A, B | 父・母父・母母父の国系統組み合わせ評価 | より深い血統適性の判断材料。 |
双馬メモ | ☆枠不利, ☆馬場不利 etc. | 双馬毅氏による前走不利記録 | 前走敗因分析と今走での巻き返し期待度判断。 |
評価 | A, B, C, D, E | 馬場虎太郎氏による前走レース内容評価 | Aは最も不利(次走注目)、Eは最も恵まれた馬。 |
TB (トラックバイアス) | ☆コース取り, ☆位置取り | 馬場虎太郎氏による前走トラックバイアス判定 | 前走の有利不利を把握し、今走の評価に反映。 |
シェア | 1~8 | 特定条件での種牡馬産駒獲得賞金比率 | 数値が大きいほどその条件での適性が高い。逆に着色で不適条件での好走注意喚起も。 |
合成オッズ | オッズ値 | 特定の買い方での均等払い戻しオッズ | 多点買い時の資金配分効率化、リスク管理。 |
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Table 1: スマート出馬表 独自データ項目一覧 (Smart Race Card Unique Data Items Summary)
この表は、スマート出馬表が提供する独自の専門用語や指標を一覧化し、その基本的な意味と活用ポイントをまとめたものです。ユーザーがこれらの特殊なデータを解読し、その意味を理解するための参照点として機能します。これにより、ユーザーは各指標を戦略的に活用するための基礎知識を得ることができます。
5. カスタマイズと絞り込み機能
スマート出馬表は、単に情報を表示するだけでなく、利用者がデータを能動的に分析するための機能も備えています。
5.1 ソート機能
出馬表の表示順を、特定のデータ項目に基づいて並べ替える機能です 。例えば、「テンP」でソートすれば先行力が高い順に、「上がりT」でソートすれば近走で速い上がりタイムを出した順に、「人気ランク」でソートすれば人気順に、馬をリストアップできます 。これにより、特定の能力や特徴を持つ馬、あるいは特定の分析視点(例:ペース重視、血統重視)に合致する馬を素早く特定することが可能になります 。
5.2 傾向集計機能
JRA(中央競馬)の全コースについて、過去5年間のレース結果を様々なファクター(要因)別に集計し、その傾向を表示する機能です 。集計可能なファクターには、枠番、騎手、調教師、種牡馬、父の小系統、母の父、前走ローテーション、父の国系統などが含まれます 。
この機能を活用することで、特定の競馬場・コース・距離・馬場状態といった条件下で、どのような血統背景を持つ馬が走りやすいのか、どの騎手が好成績を挙げているのか、どの枠番が有利なのか、といった傾向をデータに基づいて客観的に把握できます。例えば、小倉競馬場の芝1200m戦において、ロードカナロア産駒が3着内に入る回数が多い、といった具体的な傾向を発見し、予想に役立てることが可能です 。
5.3 表示カスタマイズ
スマート出馬表には「環境設定」の項目があり、ここでIPAT連携に関する設定などを行うことができます 。しかし、出馬表に表示される情報項目自体をユーザーが自由に追加・削除したり、表示順を完全にカスタマイズしたりする機能については、提供されている情報からは限定的です 。ヘルプページには「環境設定」という項目が存在するため 、今後機能が拡張される可能性はあります。
「傾向集計」のような機能や柔軟なソート機能は、スマート出馬表が単なる情報提供ツールに留まらないことを示しています。これらは、利用者が亀谷氏自身の予想や見解を受け取るだけでなく、ツール内で独自の調査や分析を行うことを可能にします。特定のレース条件に関連する過去のデータトレンドに基づき、自分自身の仮説を検証したり(例:「この騎手はこのコースが得意か?」)、特定の条件下で好成績を収める種牡馬を自ら発見したりすることができます(例:ロードカナロア産駒の事例 )。これにより、受動的な情報消費ではなく、能動的な分析プロセスが促進されます。
6. 連携ツールと予想支援機能
スマート出馬表は、他のツールやサービスと連携することで、競馬予想から馬券購入までのプロセスをよりスムーズかつ効率的に行うための機能を提供しています。
6.1 IPAT連携機能
スマート出馬表は、JRA(日本中央競馬会)の公式インターネット投票サービス「IPAT」と連携する機能を搭載しています 。
- 設定: 利用するには、まずスマート出馬表内の利用規約に同意し、自身のIPATアカウント情報(INET-ID、加入者番号、P-ARS番号)を入力する必要があります 。セキュリティ上の理由から、これらの情報はアカウントには紐付けられず、ブラウザごとに(例:PCとスマートフォンそれぞれで)入力・設定する必要があります 。
- 利用方法: 設定完了後、各レースの出馬表画面ヘッダーにある「IPAT投票」ボタンをクリックすると、投票画面が表示されます。ここで券種(単勝、複勝、馬連、3連単など)を選択し、購入したい馬番や組み合わせ、金額を入力して投票を実行できます。操作はマークシートを塗るような直感的なインターフェースで設計されており、普段からIPATを利用しているユーザーであれば違和感なく使えるでしょう 。
- 購入確認: 購入した馬券の内容は、「IPAT照会」ボタンから確認できます。スマート出馬表経由で購入したものだけでなく、他のサイトやアプリから同じIPATアカウントで購入した馬券も一覧で表示されます 。
- 意義: この連携機能により、スマート出馬表でレースを分析し、購入する馬券を決めた後、別のサイトやアプリに移動することなく、シームレスに馬券を購入できます。分析から実行までの一連の流れを円滑にし、利便性を大幅に向上させます 。
6.2 亀AI (Kame AI)
亀谷競馬サロンの会員向けに提供されているAI(人工知能)による予想コンテンツです 。『うまく当たる「亀AI」推奨馬』といった形で、AIが注目する馬がリストアップされることがあります 。プレミアムコース会員は、より詳細なAI分析データにアクセスできる可能性があります 。スマート出馬表で分析した血統傾向やペース適性、馬場バイアスなどに合致する馬が、同時に亀AIでも推奨されている場合、その馬への信頼度を高める、といった複合的な活用が考えられます 。
6.3 合成オッズ機能
フォーメーション馬券や総流し馬券など、複数の組み合わせを購入する場合に役立つ機能です。選択した買い方(例:軸馬1頭から相手総流し)において、どの組み合わせが的中しても払戻金額がほぼ均等になるように、各組み合わせへの最適な購入金額(資金配分)を算出し、その結果としての実質的なオッズ(合成オッズ)を表示します 。
これにより、特に多点買いを行う際に、無駄な買い目を減らし、資金効率を高めることができます 。どの目が当たっても一定のリターンが見込めるように資金を配分することで、リスク管理にも繋がります。この機能の具体的な活用法は、関連する電子書籍などでも解説されています 。
6.4 亀谷競馬サロンとの連携
スマート出馬表は、亀谷敬正氏が主宰するオンラインコミュニティ「亀谷競馬サロン」と深く結びついています。
- プレミアム機能: サロン会員(特にプレミアムコース)は、スマート出馬表のプレミアムバージョンを利用でき、地方競馬(NAR)への対応や、「国系統評価」などの限定データにアクセスできます 。
- 情報共有と学習: サロン内の非公開Facebookグループなどでは、亀谷氏本人や他のサロンメンバーがスマート出馬表のデータを用いて行ったレース分析、注目馬、具体的な活用方法などが活発に共有されます 。レース当日のライブ配信で、亀谷氏がスマート出馬表のデータ(例:テンT)を解説しながら予想を披露することもあります 。
- 開発へのフィードバック: スマート出馬表は、サロンメンバーからの意見や要望を取り入れながら、日々進化していると述べられています 。メンバー限定の新機能やコンテンツが先行公開されることもあり、ユーザーコミュニティがツールの発展に寄与する仕組みがあります。
IPAT連携 、合成オッズ計算 、そしてAI予想(亀AI) の統合は、競馬予想と馬券購入のアプローチが、よりデータ駆動型で体系的な方向へとシフトしていることを示唆しています。単に「どの馬が勝ちそうか」を選ぶだけでなく、その馬券をどのように構成し(合成オッズ)、効率的に実行するか(IPAT連携)、さらにはアルゴリズムによる推奨(亀AI)も参考にするといった、より洗練されたプロセスをサポートするものです。これは、近年他の分野でも見られる定量的アプローチ(クオンツ)の考え方を競馬に取り入れようとする動きを反映しているのかもしれません。
7. スマート出馬表の効果的な活用戦略
スマート出馬表が提供する独自のデータと機能を最大限に活用することで、競馬予想の精度を高め、より戦略的な馬券購入を行うことが可能になります。
7.1 独自データを活用した予想戦略
- 血統分析の深化:
国系統(日/米/欧)
やサンデー系のタイプ分類(P/T/D/L)
を活用し、出走するレースのコース、距離、馬場状態(芝・ダート、良・重など)への適性を深く分析します。例えば、スプリンターズステークスのような短距離戦では欧州の主流系統(ノーザンダンサー系)の影響が強い馬 、オークスのような牝馬クラシック長距離戦では欧州型のスタミナ血統を持つ馬 、有馬記念ではダンチヒ系の血を持つ馬 が好走しやすい、といった具体的な傾向分析が可能です。血統系統カラーリング
を利用すれば、出走馬全体の血統的な偏り(バイアス)を一目で把握できます。
- ペースと展開の予測:
テンP
、テンT
、テン1F
のデータを比較検討し、各馬の先行力やダッシュ力を評価します。これにより、どの馬がハナ(先頭)を主張しそうか、先行集団がどの程度のペースで形成されそうかを予測します。上がりP
、上がりT
で各馬の末脚の鋭さを評価し、レース終盤の追い込みが利きそうか判断します。- これらの情報を総合し、レース全体のペースが速くなりそうか(ハイペース)、遅くなりそうか(スローペース)を予測し、それぞれの展開で有利になる脚質(逃げ・先行有利か、差し・追い込み有利か)を見極めます。
- 妙味馬(穴馬)の発掘:
人気ランク
と実際の単勝・複勝オッズを比較します 。人気ランクに対してオッズが過剰についている(=世間の評価以上に売れている)馬は避け、逆に人気ランクの割にオッズが高い(=過小評価されている)馬に妙味を見出します。双馬メモ
や評価
(特にA評価)に注目し、前走で不利を受けて能力を発揮できなかった可能性のある馬を探します 。これらの馬は、今回条件が好転すれば、人気薄でも本来の能力を発揮して好走する(巻き返す)可能性があります。カセノダンサーの事例 はその典型です。- 血統的にそのコースや距離への適性が高いにも関わらず、近走成績などから人気になっていない馬を発掘します。
- コース・馬場適性の見極め:
傾向集計
機能 を活用し、レースが行われる特定のコースにおいて、過去に有利だった枠順、好成績を収めている騎手や種牡馬、有利な脚質などのデータを参照します。TB(トラックバイアス)
のデータや、当日の馬場状態(例:雨の影響、凍結防止剤の散布状況 など)を考慮し、馬場状態がどの馬に有利に働きそうか判断します。異種
データ を参考に、芝からダートへ、あるいはダートから芝へ替わる馬(馬場替わり)の適性を評価します。ブルーサンの事例 では、血統背景と合わせてダート替わりでの好走を予測できました。
- 複合的な分析:
亀AI
の推奨馬と、スマート出馬表の各種データ(血統適性、ペース適性、馬場バイアスなど)が示す好走条件が合致する馬は、特に信頼度が高いと考えられます 。サクセスローレルとロードレイラインの事例 では、このアプローチで万馬券を的中させています。- 複数の注目馬が見つかった場合、
合成オッズ
機能 を活用して、それらを組み合わせたフォーメーション馬券などを効率的に、かつリスクを管理しながら購入する戦略を立てます。
7.2 高配当獲得に向けた活用例
スマート出馬表は、高配当馬券、いわゆる「万馬券」や、時には「100万馬券」クラスの的中を目指す上でも活用されています。
- 100万馬券獲得のヒント: 関連書籍や情報では、「スマート出馬表の1か所を見れば簡単に獲れるレースだった」といった表現が見られます 。これは、特定のデータパターンや条件に合致した場合に、高配当に繋がる激走馬が出現しやすい、という経験則やルールが存在することを示唆しています。具体的なパターンについては、亀谷氏の著作 などで解説されている可能性があります。
- 特定のペースパターン活用: 例えば、「テンP15」(先行力が非常に高いタイプ)に該当する馬が1頭しかいないようなレースでは、その馬、もしくは「テンT」(補正済みテンタイム)で1位の馬が、展開的に恵まれて好走しやすく、期待値が高いと考えられます 。
- サロンでの実践: 亀谷競馬サロン内では、メンバーがスマート出馬表のデータを駆使し、亀谷氏自身の推奨やメンバー間の議論も参考にしながら、実際に高配当馬券を的中させた事例が報告されています 。
スマート出馬表を用いた効果的な予想プロセスは、単一の指標に頼るのではなく、複数の異なる種類のデータを組み合わせる多層的な分析に基づいていると考えられます。血統(長期的な適性やポテンシャル)、ペース(レース展開の力学)、レース状況(近走の運不運や外的要因)、そして過去の統計データ(コース傾向)といった異なる角度からの情報を統合することで、より強固で、ニュアンスに富んだ予測を構築することが可能になります。各種の活用事例 が示すように、例えば「傾向集計と血統辞典」、「双馬メモと評価とローテと亀SP」、「傾向速報とテンPと亀AI」、「血統とテンPとテン1Fと双馬メモとコースデータ」 といった形で、複数のデータポイントを組み合わせることが推奨されています。スマート出馬表の真価は、単一の「魔法の弾丸」的な指標にあるのではなく、これらの多様な分析的視点を構造化し、統合的に活用できる点にあると言えるでしょう。
8. まとめ
8.1 スマート出馬表の核心的価値
スマート出馬表は、競馬評論家・亀谷敬正氏が提唱する「血統ビーム」理論を具体的なツールとして具現化したものです。その核心的な価値は、従来の出馬表にはない、血統、ペース、レース状況に関する独自の詳細なデータを提供し、それらを視覚的に分かりやすく提示する点にあります。専門紙などでは得られない情報を可視化し、IPAT連携による分析から馬券購入までの一貫したプロセスを提供し、さらに合成オッズ機能によって戦略的な馬券構築を支援することが、このツールの強みと言えます。
8.2 効果的な活用によるメリット
スマート出馬表を効果的に活用することは、単に情報を得る以上のメリットをもたらします。それは、体系的な分析フレームワークを提供し、データに基づいた客観的な判断を促すことです。これにより、主観や印象に頼りがちな予想から脱却し、人気に左右されずに潜在的な能力や適性を持つ馬、すなわち妙味のある馬や高配当に繋がりうる馬を発見する手助けとなります。結果として、競馬予想の精度向上と、より戦略的で根拠のある馬券購入が可能になることが期待されます。
8.3 今後の展望
スマート出馬表は、2024年12月から2025年1月を目処に、大幅なリニューアルが予定されています 。このリニューアルにより、機能の拡張やインターフェースの改善など、さらなる使いやすさの向上が期待されます。
8.4 最終的な推奨
スマート出馬表の利用を検討している場合、まずは無料で提供されているJRA版から試用し、基本的な機能と独自のデータ項目に慣れることから始めるのが良いでしょう。より深い分析を行いたい、地方競馬のレースも対象にしたい、あるいは亀谷氏や他のユーザーとの情報交換を通じて学びを深めたいと考えるならば、「亀谷競馬サロン」への参加(プレミアム版の利用)を検討する価値があります。スマート出馬表は多機能であり、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、関連書籍を読んだり、サロンでの情報交換に参加したりするなどして、継続的に活用方法を学んでいくことが重要です。
最終的に、スマート出馬表は、競馬分析における特定の「流派」や「考え方」を体現するツールであると言えます。それは、血統、ペース、馬場バイアスといった要素を定量的なデータに基づいて重視するアプローチです。このツールを真にマスターするということは、単に機能の使い方を覚えるだけでなく、その根底にある亀谷敬正氏の分析哲学を理解し、自身の予想プロセスに取り入れることを意味します。今後のリニューアル も、この特定の分析的アプローチをさらに洗練させ、深化させる方向で進められる可能性が高いと考えられます。
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