熱戦を制したのは伏兵スピリットオブセントルイス!
1月25日、ガルフストリームパーク競馬場にて開催されたペガサスワールドカップターフ招待ステークス (G1) は、波乱の結末となりました。ニューヨーク州産馬のスピリットオブセントルイスが、最後の直線で力強い末脚を繰り出し、並み居る強豪を退けて優勝しました。
レース概要
ペガサスワールドカップターフ招待ステークスは、アメリカ合衆国フロリダ州のガルフストリームパーク競馬場で行われるG1競走です。4歳以上のサラブレッドが出走できる招待レースで、芝1 1/8マイルで行われます。総賞金は100万ドル。 2019年に創設され、ペガサスワールドカップデーのメインレースとして定着しました。
本レースは、創設当初は「ガルフストリームパークブリーダーズカップハンデキャップ」という名称で、フロリダダービーのアンダーカードとして、3月上旬に開催されていました。 ブリーダーズカップの協賛により、創設当初から注目を集めるレースとなりました。 翌年にはダートコースでの開催となり、その後もバドワイザーの協賛を受けたり、距離が1 3/8マイルに延長されたりと、幾度かの変遷を遂げています。 1990年にはG3に、翌年にはG2に昇格。 1994年には再びダートコースに変更され、距離も1 1/4マイルとなりました。 2007年以降はブリーダーズカップの協賛が終了し、「ガルフストリームパークターフハンデキャップ」と改称。 2009年には現在の距離である1 1/8マイルに短縮されました。 そして2019年、ペガサスワールドカップシリーズの創設に伴い、「ペガサスワールドカップターフ招待ステークス」として新たなスタートを切りました。 初年度は各馬の関係者が50万ドルのエントリーフィーを支払う形式でしたが、2020年からは招待レースとなり、エントリーフィーは廃止されました。
レース条件としては、斤量は123ポンドですが、牝馬と南半球産3歳馬には5ポンドの減量措置が設けられています。
過去の優勝馬には、2019年の年度代表馬ブリックスアンドモルタル、2021年と2022年に連覇を果たしたコロネルリアムなどがいます。 また、アインシュタインが2006年と2008年に優勝し、最多勝利記録を保持しています。 騎手ではジェリー・ベイリーが7勝、調教師ではウィリアム・モットが5勝と、それぞれ最多勝利記録を持っています。
歴代優勝馬の中には、日本でも馴染みのある馬もいます。2000年に優勝したラーイは、同年のジャパンカップで2着に入線した実績を持つ馬です。
コースレコード
距離 | タイム | 馬名 | 年 |
---|---|---|---|
1 3/16マイル | 1:51.60 | Zulu Alpha | 2020 |
1 1/16マイル | 1:39.60 | Youmadeyourpoint | 1990 |
1 1/8マイル | 1:44.45 | Warm Heart (IRE) | 2024 |
1 3/8マイル | 2:10.73 | Yagli | 1999 |
2025年のレースは、バカラがスポンサーを務めました。
出走馬
2025年のペガサスワールドカップターフ招待ステークスには、以下の12頭が出走しました。
馬番 | 馬名 | 騎手 | 斤量 | 単勝倍率 | オッズ |
---|---|---|---|---|---|
8 | スピリットオブセントルイス | T・ガファリオン | 123ポンド (55.7キロ) | 8.9 | 20-1 |
5 | インテグレーション | L・デットーリ | 123ポンド (55.7キロ) | 4.8 | 3-1 |
12 | チェイシングザクラウン | E・ザイアス | 123ポンド (55.7キロ) | 65.7 | 20-1 |
3 | ミハーマノラモン | L・サエス | 123ポンド (55.7キロ) | 7.5 | 8-1 |
13 | フォートワシントン | J・アルヴァラード | 123ポンド (55.7キロ) | 40.6 | 20-1 |
6 | メジャーデュード | I・オルティスJr | 123ポンド (55.7キロ) | 6.8 | 6-1 |
4 | ウィンフォーザマネー | D・デーヴィス | 123ポンド (55.7キロ) | 14.9 | 12-1 |
11 | グランドソナタ | J・ヴェラスケス | 123ポンド (55.7キロ) | 32.0 | 20-1 |
7 | ネーションズプライド | W・ビュイック | 123ポンド (55.7キロ) | 3.5 | 2-1 |
9 | バルニコフ | O・マーフィー | 123ポンド (55.7キロ) | 30.8 | 15-1 |
10 | バトルオブノーマンディ | J・オルティス | 123ポンド (55.7キロ) | 11.9 | 20-1 |
2 | フォーミダブルマン | U・リスポリ | 123ポンド (55.7キロ) | 13.0 | 15-1 |
レース展開
レースは、フォーミダブルマンとウィンフォーザマネーが先行し、インテグレーションがそれに続く展開となりました。 スピリットオブセントルイスは中団に位置取り、道中はやや馬群に包まれる場面もありましたが、騎乗したタイラー・ガファリオン騎手は冷静に馬を誘導し、虎視眈々とチャンスを伺っていました。
第3コーナーを回ると、インテグレーションが先頭に立ち、そのまま押し切るかに思われました。 しかし、最後の直線でスピリットオブセントルイスが外から鋭く伸びてきて、インテグレーションをゴール寸前で捉えました。
3着には、64倍の大穴チェイシングザクラウンが追い込んで入線しました。
レース結果
着順 | 馬名 | 騎手 | 斤量 | 着差 | 配当 |
---|---|---|---|---|---|
1 | スピリットオブセントルイス | T・ガファリオン | 123ポンド | $17.80 | |
2 | インテグレーション | L・デットーリ | 123ポンド | クビ | $8.40 |
3 | チェイシングザクラウン | E・ザイアス | 123ポンド | 1 1/4馬身 | $6.00 |
4 | ミハーマノラモン | L・サエス | 123ポンド | 3/4馬身 | |
5 | フォートワシントン | J・アルヴァラード | 123ポンド | アタマ | |
6 | メジャーデュード | I・オルティスJr | 123ポンド | 3/4馬身 | |
7 | ウィンフォーザマネー | D・デーヴィス | 123ポンド | 3/4馬身 | |
8 | グランドソナタ | J・ヴェラスケス | 123ポンド | クビ | |
9 | ネーションズプライド | W・ビュイック | 123ポンド | 1馬身 | |
10 | バルニコフ | O・マーフィー | 123ポンド | アタマ | |
11 | バトルオブノーマンディ | J・オルティス | 123ポンド | アタマ | |
12 | フォーミダブルマン | U・リスポリ | 123ポンド | 7 3/4馬身 |
勝ちタイム:1分44秒50
スピリットオブセントルイスは、これがG1初制覇となりました。 騎乗したタイラー・ガファリオン騎手は、「直線に向いて進路が開いたとき、この馬ならやってくれると確信しました」と語りました。 調教師のチャド・ブラウンは、2019年のブリックスアンドモルタルに続く、自身2度目のペガサスワールドカップターフ制覇となりました。 ブラウン調教師は、「この馬は常に成長を続けています。今日は最高の走りを見せてくれました」と喜びを語りました。
各馬の走り
スピリットオブセントルイス: 道中は中団を追走し、最後の直線で外から鋭く伸びて優勝。重賞初制覇をG1で飾るという快挙を成し遂げました。 スピリットオブセントルイスはニューヨーク州産馬で、チェスター&メアリー・ブロマン夫妻によって生産されました。 ちなみに、スピリットオブセントルイスという馬名は、1927年に大西洋単独無着陸飛行を成し遂げたチャールズ・リンドバーグの愛機「スピリット・オブ・セントルイス号」に由来しています。 2023年のキーンランド4月セールにおいて、マイケル・ダブ氏が28万ドルで落札しました。 2017年のブリーダーズカップフィリー&メアスプリント (G1) の勝ち馬であるバーオブゴールドの全弟にあたります。 父はダーレーで7万5000ドルの種付け料で繋養されているメダリアドーロ。 スピリットオブセントルイスはこの勝利で、メダリアドーロ産駒のG1勝ち馬としては28頭目となりました。
インテグレーション: 3番人気に支持され、レースを引っ張る積極的な競馬を見せましたが、惜しくも2着。 昨年もこのレースに出走しており、5着という結果でした。
チェイシングザクラウン: 64倍の大穴ながら3着に好走。道中は後方からレースを進め、最後の直線で末脚を伸ばしました。
ネーションズプライド: 2番人気に支持されたものの、9着と敗退。 今回は本来の力を発揮することができませんでした。 北米でのレースは今回で8戦目。 2023年のカナディアンインターナショナル (G1) 、2022年のサラトガダービー招待 (G1) 、ジョッキークラブダービー招待 (G3) で勝利するなど、北米でも活躍を見せていました。 今回は距離が短かったことが敗因の一つと考えられます。
メジャーデュード: トッド・プレッチャー厩舎の期待馬。6着と健闘しましたが、上位進出はなりませんでした。
フォーミダブルマン: 4歳馬ながらG1に挑戦。ウィリアム&スザンヌ・ウォーレン夫妻が所有し、父は2019年のペガサスワールドカップ (ダート) を制したシティオブライト。 母はカーヴィーレイディー。 先行しましたが、最後は力尽きて12着。
まとめ
2025年のペガサスワールドカップターフ招待ステークスは、スピリットオブセントルイスが優勝し、波乱の決着となりました。ニューヨーク州産馬が国際的な強豪相手にG1を制したことは、大きな驚きであり、今後のアメリカ競馬界に新たな風を吹き込む可能性を秘めています。
スピリットオブセントルイスの勝利は、先行馬有利と思われた展開を覆す、鮮やかな差し切り勝ちでした。 これにより、同馬は一躍トップホースの仲間入りを果たし、今後の活躍に大きな期待が寄せられます。
一方、敗れたネーションズプライドやインテグレーションも、まだまだトップレベルで活躍できる力を持っています。 今後の巻き返しに期待したいところです。
全体的には、ハイペースで先行馬が苦戦する中、差し馬が台頭するレースとなりました。 ペガサスワールドカップターフ招待ステークスは、今年も多くのドラマを生み出し、競馬ファンの記憶に残る一戦となりました。
今後の展望
スピリットオブセントルイスは、この勝利をきっかけに、さらなる飛躍が期待されます。
一方、敗れたネーションズプライドやインテグレーションも、まだまだトップレベルで活躍できる力を持っています。今後の巻き返しに期待したいところです。