リードアーティスト、激戦のロッキンジステークスを制しG1初制覇 マーフィー騎手の手腕光る
2025年5月17日、英国ニューベリー競馬場で行われた4歳以上マイルG1のロッキンジステークスは、ジョン&サディ・ゴスデン厩舎のリードアーティストが、オイシン・マーフィー騎手を鞍上に迎え、人気馬ダンシングジェミニとの壮絶な叩き合いをクビ差で制し、待望のG1初勝利を飾りました。レース前のオッズでは伏兵扱いだったリードアーティストですが、市場の支持を大きく集めての勝利は、今後のマイル路線の勢力図を塗り替える可能性を秘めています 。
このレースは、アイルランド2000ギニー馬ロザリオンや英2000ギニー馬ノータブルスピーチといったG1ウィナーも顔を揃え、マイル路線の実力馬が集結する注目の一戦として期待されていました 。その期待に応えるように、レースは白熱の展開となりました。
レース展開:リードアーティスト、粘り腰で激戦を制す
馬場状態「Good to Firm」で行われたレースは、ファーレンエンジェルが序盤のペースを握りました。リードアーティストは好位を追走し、レースを進めます 。一方、前年のアイルランド2000ギニー馬ロザリオンや英2000ギニー馬ノータブルスピーチは中団から後方でレース序盤はやや行きたがる素振りを見せながらも、機を窺いました 。
直線に入り、残り1ハロン過ぎでリードアーティストが一旦先頭に立ちますが、外から鋭く伸びてきた1番人気のダンシングジェミニがこれを交わしにかかります 。一時はダンシングジェミニがリードアーティストを捉えましたが、オイシン・マーフィー騎手の巧みな手綱捌きに応え、リードアーティストが驚異的な粘り腰を発揮。ゴール前で差し返し、クビ差の接戦をものにしました 。勝ちタイムは1分35秒06でした。
当日のニューベリー競馬場は「Good to Firm」の高速馬場 。天候は「曇り時々晴れ」と報じられていますが 、ダンシングジェミニのロジャー・ティール調教師は「これまでに経験したことのない速い馬場だった」とコメントしており 、ジョン・ゴスデン調教師もリードアーティストが「夏の速い馬場を好む」と述べていることから 、この馬場状態が勝敗を分ける重要な要素となったことは明らかです。リードアーティストにとって有利に働き、ダンシングジェミニにとってはやや不向きだった可能性が示唆されます。
ロッキンジステークス (G1) 結果
着順 | 馬番 | 馬名 | 騎手 | 調教師 | 着差(馬身) | 単勝倍率(現地) |
---|---|---|---|---|---|---|
1着 | 3 | リードアーチスト | O・マーフィー | J&T・ゴスデン | 9.5 | |
2着 | 2 | ダンシングジェミニ | R・ムーア | R・ティール | クビ | 3.0F |
3着 | 7 | ロザリオン | S・レヴィー | R・ハノン | 2.25 | 3.25 |
4着 | 4 | ノータブルスピーチ | W・ビュイック | C・アップルビー | 短頭 | 4.5 |
5着 | 1 | チェックアンドチャレンジ | S・デソウサ | W・ナイト | 1.5 | 126.0 |
各馬のパフォーマンスと陣営の声
リードアーティスト(優勝): G1初制覇を飾ったリードアーティストは、一度は交わされながらも差し返す勝負根性を見せました。レース当日の朝には18倍の評価でしたが、最終的には8.5倍(日本でのオッズは9.5倍)まで支持を集めての勝利でした 。特筆すべきは、過去8戦全てで手綱を取ったキーラン・シューマーク騎手からオイシン・マーフィー騎手への乗り替わりです 。これは、シューマーク騎手がゴスデン厩舎およびジャドモントファームの主戦騎手の座から外れたことに伴うもので 、マーフィー騎手にとっては、本来騎乗予定だったタムファナではなくリードアーティストへの騎乗となりました 。この乗り替わりが、結果的に大きな成功へと繋がったと言えるでしょう。マーフィー騎手は、この勝利が自身にとってロッキンジステークス初制覇であり、ジャドモントファームにとっても初のG1勝利となりました 。騎乗についてマーフィー騎手は「素晴らしい気性の持ち主で、本当に乗りやすかった。陣営も自信を持っていたし、オッズがそれを示していた」と語り、ジョン・ゴスデン師も「マーフィー騎手の完璧な騎乗だった」と称賛しています 。
ゴスデン師はまた、リードアーティストの才能、速い馬場への適性(前走のサンダウンでは「泥に脚を取られた」とのこと)、そして生来のスピードを高く評価しています 。さらに、同馬が9ハロンでの勝利経験があることに触れ、そのスタミナが今回のマイル戦での粘り強い走りに繋がったと分析しています 。このスピードとスタミナのバランスこそが、リードアーティストの強さの源泉と言えるでしょう。血統的にも、父ドバウィ、母父フランケルのジャドモント自家生産馬であり、母オブリゲートはG2勝ち馬でG1でも好走、祖母は名繁殖牝馬ハシリという良血です 。
ダンシングジェミニ(2着): ロジャー・ティール調教師は「素晴らしい走りだったが、馬場が非常に速かった」と、馬場状態が影響した可能性を示唆しました 。前哨戦のベット365マイル(G2)ではリードアーティストを破っており 、G1級の実力は十分に示しました。ティール師は次走アスコットへ向かうことを明言しており、馬場状態次第では巻き返しも期待されます 。
ロザリオン(3着): 約1年ぶりの実戦となったロザリオン 。リチャード・ハノン調教師は「素晴らしい走りだった。ここを叩いてさらに良くなるだろう」と、次走での上積みに期待を寄せています 。一部のアナリストは、レース序盤でやや行きたがり、十分なカバーを得られなかった点を指摘しています 。実績馬だけに、一度使われた効果は大きいはずです。
ノータブルスピーチ(4着): 2024年の英2000ギニー馬も、これがシーズン初戦でした 。チャーリー・アップルビー調教師は、ウィリアム・ビュイック騎手が「いつもの熱意を示していた」とコメントしており 、こちらも次走以降の変わり身に注目が集まります。
レースの意義と歴史的背景
ロッキンジステークスは1958年に創設され、1995年以降G1レースとして施行されています 。英国チャンピオンシリーズの一戦であり 、古馬マイラーにとってシーズンの行方を占う重要な一戦と位置づけられ、特にロイヤルアスコット開催のクイーンアンステークスの前哨戦として注目度が高いレースです 。ゴドルフィンが9勝と最多勝オーナーであり、2023年にはモダンゲームズが勝利しています 。リードアーティストの勝利は、この名誉あるレースの歴史に新たな1ページを刻み、欧州マイル路線の新星誕生を印象付けました。
今後の展望:クイーンアンステークス、そしてブリーダーズカップマイルへ
ジョン・ゴスデン調教師によると、リードアーティストの次走はロイヤルアスコット開催のクイーンアンステークス(G1)が有力で、馬場が渋らなければ出走するとのことです 。アスコット競馬場のタフなマイルコースは同馬に合うと見られています 。この勝利により、リードアーティストのクイーンアンステークスでのオッズは33倍から6倍へと大幅に上昇しました 。ダンシングジェミニもアスコットへ向かう予定です 。ロザリオン(アスコット競馬場では2戦2勝 )とノータブルスピーチも、一度レースを使った上積みが見込めるため、クイーンアンステークスでの有力候補となるでしょう 。ロッキンジステークスの上位4頭が、そのままクイーンアンステークスの人気上位4頭を形成しており 、再戦への期待が高まります。
また、ロッキンジステークスはブリーダーズカップマイルへの「Win and You’re In」対象レースであり 、リードアーティストはこの勝利でブリーダーズカップマイルへの優先出走権を獲得しました。これにより、同馬の今後のローテーションに国際的な選択肢が加わることになります。
ロッキンジステークス総括
リードアーティストのG1初制覇という劇的な結果で幕を閉じた今年のロッキンジステークス。激しい叩き合いは記憶に残る名勝負となり、マイル路線の新たなスターホース誕生を予感させました。上位入線馬の実力も確かであり、ロイヤルアスコット開催のクイーンアンステークスを筆頭に、今後のマイルG1戦線での再戦から目が離せません。
ジャーナリズム、歴史的プリークネスステークスを制覇!リスポリ騎手は伊国籍初の快挙
2025年5月17日、米国メリーランド州ピムリコ競馬場で行われた第150回プリークネスステークス(G1)は、マイケル・マッカーシー厩舎のジャーナリズムがウンベルト・リスポリ騎手を背に、ケンタッキーダービー2着の雪辱を果たし優勝。リスポリ騎手はイタリア人騎手として史上初のアメリカ三冠レース制覇という歴史的快挙を成し遂げました。また、このレースは改修工事を控える「旧ピムリコ競馬場」での最後のプリークネスステークスとなり、幾重にも歴史が刻まれる一戦となりました 。
レース展開:ジャーナリズム、苦境を乗り越え栄冠掴む
ダート9.5ハロン(約1900メートル)で行われたレースの馬場状態は「Fast」[ユーザーデータ]。ジャーナリズムは序盤、中団6番手あたりでレースを進めました 。一方、クレヴァーアゲインが序盤から果敢にハナを奪い、レースを引っ張る展開となりました 。
勝負所の最終コーナーで、ジャーナリズムは進路を確保する際にゴールオリエンテッドとクレヴァーアゲインの間を割って入る際にもたつく場面があり、一時はマッカーシー調教師も勝利を諦めかけたほどでした 。しかし、直線で驚異的な闘志を見せたジャーナリズムは、先に抜け出したゴスジャー(クレヴァーアゲインを交わして先頭に立っていた)をゴール前で捉え、半馬身差で勝利を手にしました 。勝ちタイムは1分55秒47でした。
レースウィーク前半は雨に見舞われたものの、当日は天候が回復し、馬場が乾いたことがジャーナリズムにとってはケンタッキーダービーの「スロープ(不良馬場)」とは対照的に、好条件となったようです 。
プリークネスステークス (G1) 結果
着順 | 馬番 | 馬名 | 騎手 | 調教師 | 着差(馬身) | 単勝倍率(現地) |
---|---|---|---|---|---|---|
1着 | 2 | ジャーナリズム | U・リスポリ | M・マッカーシー | 2.0 | |
2着 | 9 | ゴスジャー | L・サエス | B・ウォルシュ | 0.5 | 16.5 |
3着 | 7 | サンドマン | J・ヴェラスケス | M・キャシー | 2.25 | 7.4 |
4着 | 1 | ゴールオリエンテッド | F・プラ | B・バファート | 9.0 |
各馬のパフォーマンスと陣営の声
ジャーナリズム(優勝): 直線での不利を跳ね除け、驚異的な勝負根性と身体能力で勝利を掴みました 。マッカーシー調教師は「この馬が持つ気概の証だ」と称賛 。サンタアニタダービー(G1)以来の勝利となりました 。ケンタッキーダービー馬ソヴリンティが不在の中、前評判通りの強さを見せつけました 。この勝利は、ジャーナリズムの類稀な能力と精神力の高さを改めて証明するものであり、「不可能を可能にした」と評されるほどの走りでした 。
ウンベルト・リスポリ騎手にとっては、イタリア人騎手として史上初のアメリカ三冠レース制覇という歴史的快挙 。リスポリ騎手は「20年間のキャリアが頭をよぎった」と感慨深げに語りました 。マイケル・マッカーシー調教師は、2021年のロンバウアーに続くプリークネスステークス2勝目となりました 。
ジャーナリズムは、プリークネスステークス以前の6戦で4勝、3着以内を外したのは一度だけという安定した成績を収めており 、ケンタッキーダービーでの力走と合わせて、既に世代トップクラスの実力を示していました。クラシックレースでの勝利、特にダービー2着後の厳しいレース展開を克服しての勝利は、同馬の評価をさらに高めるものです。
ゴスジャー(2着): 20倍の評価を覆し、直線で一旦は先頭に立つ見せ場十分のレースを展開。ブレンダン・ウォルシュ調教師は「馬に失望はしていない。まだ成長している」と、今後の飛躍に期待を寄せました 。長距離での活躍も期待される一頭です。
サンドマン(3着): ケンタッキーダービー(6着)からの参戦で3着と健闘 。ジョン・ヴェラスケス騎手は「3/8マイル地点では勝てると思ったが、その後集中力を欠いた」とコメントしています 。G1戦線での安定感はあるものの、頂点に立つにはもう一段階の成長が求められるかもしれません。
ソヴリンティ(ケンタッキーダービー馬): ケンタッキーダービー優勝後、陣営は休養とベルモントステークスへの照準を理由にプリークネスステークスを回避しました 。これにより、7年間で5度目となる三冠達成の可能性がないプリークネスステークスとなりました 。この事実は、アメリカ三冠路線のあり方についての議論を再燃させる一因となっています 。
レースの意義と歴史的背景
1873年に創設されたプリークネスステークスは、アメリカ三冠の第二関門として知られています 。今年は記念すべき第150回大会であり 、1909年以来(一部例外を除く)レースが開催されてきたピムリコ競馬場は、大規模改修工事を控えており、2025年大会が「旧ピムリコ」での最後の開催となりました。2026年大会はローレルパーク競馬場での開催が予定されています 。ウンベルト・リスポリ騎手のイタリア人初のアメリカ三冠レース制覇という快挙も加わり 、まさに歴史的な一戦となりました。
今後の展望:ベルモントステークスでの再戦、そして3歳牡馬チャンピオンの座へ
ベルモントステークス: ジャーナリズムとケンタッキーダービー馬ソヴリンティの再戦に大きな期待が寄せられています 。ジャーナリズムのベルモントステークス出走は、状態を見極めた上で決定される予定です 。その他、ケンタッキーダービー3着のバエザ、ピーターパンステークス勝ち馬のヒルロード、そしてゴスジャーやハートオブオナーなどもベルモントステークスの有力候補として名前が挙がっています 。ジャーナリズムとソヴリンティが共に出走すれば、三冠最終戦は事実上の3歳牡馬チャンピオン決定戦となる可能性があり、その注目度は計り知れません。
3歳牡馬チャンピオン争い: プリークネスステークス制覇により、ジャーナリズムは最優秀3歳牡馬のタイトル争いで大きく前進しました 。
三冠路線スケジュールに関する議論: ダービー馬のプリークネスステークス回避や、中1週という厳しいローテーションは、依然として三冠路線のスケジュール変更に関する議論の的となっています 。ジャーナリズムの勝利はレースを盛り上げたものの、三冠路線が抱える構造的な問題提起は続いています。
プリークネスステークス総括
ジャーナリズムの勇気ある勝利、リスポリ騎手の歴史的快挙、そしてピムリコ競馬場の新たな門出。様々な意味で記憶に残るプリークネスステークスとなりました。この結果は3歳牡馬戦線をさらに面白くし、ベルモントステークスへの期待を大きく膨らませるものとなりました。
イニシェリン、改称された1895デュークオブヨークステークスをムーア騎手の手綱で快勝
2025年5月14日、英国ヨーク競馬場で行われた3歳以上6ハロン(約1200メートル)の1895デュークオブヨークステークス(G2)は、ケヴィン・ライアン厩舎のイニシェリンがライアン・ムーア騎手を鞍上に迎え、G1馬の実力を見せつけ優勝しました 。前年のコモンウェルスカップ(G1)覇者であるイニシェリンにとって 、この勝利は復活を印象付けると共に、レース名が近年変更されたという点でも注目を集めました 。
この勝利は、イニシェリンがトップスプリンター戦線へ向けて順調な再スタートを切ったことを示しており、レース自体も新たな歴史的意義を帯びることとなりました。
レース展開:イニシェリン、スプリント戦を制す
馬場状態「Good to Firm」(一部Good in places)で行われたレース 。ナイトレイダーがレースを引っ張り、イニシェリンは初騎乗となるライアン・ムーア騎手の手綱で好位を追走しました 。ムーア騎手はイニシェリンをラチ沿いに導きました 。
残り2ハロンでイニシェリンが2番手に浮上。先行していたナイトレイダーは最終ハロン手前で失速します 。イニシェリンが先頭に立ちますが、外からフローラオブバーミューダが強襲 。ゴール前は激しい追い比べとなりましたが、ムーア騎手の叱咤に応えたイニシェリンがクビ差でフローラオブバーミューダを抑え込みました 。一部報道では、イニシェリンは「先頭のナイトレイダーが失速し右に寄れた際に、ラチ沿いにできたスペースを突く幸運にも恵まれた」とも伝えられています 。勝ちタイムは1分10秒67でした。当日の天候は「概ね晴れ」でした 。
高速馬場でのスプリント戦は、僅差の勝負となりやすく、ムーア騎手のラチ沿いを突く戦術と、イニシェリンの瞬発力が勝敗を分ける重要な要素となりました。
1895デュークオブヨークステークス (G2) 結果
着順 | 馬番 | 馬名 | 騎手 | 調教師 | 着差(馬身) | 単勝倍率(現地) |
---|---|---|---|---|---|---|
1着 | 2 | イニシェリン | R・ムーア | K・ライアン | 2.375F | |
2着 | 7 | フローラオブバーミューダ | P・マクドナルド | A・ボールディング | クビ | 15.0 |
3着 | 5 | ナイトレイダー | O・マーフィー | K・バーク | 3.75 | 5.0 |
4着 | 1 | エリートステータス | C・リー | K・バーク | クビ | 3.75 |
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各馬のパフォーマンスと陣営の声
イニシェリン(優勝): 一度は詰め寄られながらも、勝負強さを見せて勝利 。前年シーズンの終盤は不振でしたが、見事な復活を遂げました 。初騎乗となったライアン・ムーア騎手の手綱捌きも高く評価されています 。ケヴィン・ライアン調教師は、レース前に軽い呼吸器系の問題があり、天候の影響で調教も十分ではなかったことを明かし、安堵の表情を見せました 。次走はロイヤルアスコットへ直行する予定です 。血統は父シャマーダル、母アジュマンプリンセス 。この勝利は、前年の不振を払拭し、イニシェリンが再びトップスプリンターとしての地位を確立する上で非常に重要なものとなりました。
フローラオブバーミューダ(2着): 14倍の人気薄ながら素晴らしい走りを見せ、後方から鋭く追い込みましたが、僅かに及びませんでした 。道中では進路が狭くなる場面もありました 。この内容であれば、今後のG2・G1戦線でも有力な一頭となるでしょう。
ナイトレイダー(3着): 果敢にハナを奪いレースを作りましたが、最後の直線で力尽きました 。この経験が次走以降に活かされるか注目です。
レースの意義と歴史的背景
デュークオブヨークステークスは1895年8月に創設されました 。現在はダンテフェスティバルの初日に施行されています 。近年、「1895デュークオブヨークステークス」と改称されました。これは、レース創設時のヨーク公(後のジョージ5世)に敬意を表し、現ヨーク公アンドルー王子を巡る論争から距離を置くためとされています 。ヨーク競馬場は「ネーヴズマイア」の愛称で知られる英国主要競馬場の一つです 。このレース名の変更は、スポーツ界が現代社会の価値観や歴史解釈にどのように適応していくかを示す、文化的に意義深い出来事と言えるでしょう。
今後の展望:主要スプリントG1戦線へ
イニシェリンはロイヤルアスコットへ直行し、クイーンエリザベス2世ジュビリーステークス(G1)への出走が有力視されています(オッズは8倍程度)。ケヴィン・ライアン調教師は、シーズン後半にはヨーク競馬場で施行される新設G1シティオブヨークステークス(7ハロン)への出走も視野に入れているとコメントしています 。その他、ジュライカップ(G1)やスプリントカップ(G1)といった主要スプリントG1もターゲットとなり得ます。イニシェリンは過去にこれらのレースへの出走経験があります 。また、フランスのモーリスドゲスト賞(6.5ハロン)も選択肢の一つとして挙げられています 。イニシェリンのこの勝利は、彼をシーズンの主要なヨーロッパスプリントG1戦線のキープレイヤーとして位置づけるものであり、ロイヤルアスコットが当面の大きな目標となります。7ハロンへの距離延長の可能性も、今後の興味深い要素です。
1895デュークオブヨークステークス総括
G1級の実力馬イニシェリンが復活の狼煙を上げた、見応えのあるスプリント戦となりました。今後の主要G1レースでの活躍が大いに期待されます。また、レース名の変更は、この伝統あるレースの物語に新たな歴史的、現代的な側面を加えました。
プライドオブアラス、ダンテステークスで衝撃の勝利!ダービー戦線は大混戦へ 本命馬ザライオンインウィンターは6着に沈む
2025年5月15日、英国ヨーク競馬場で行われた3歳牡馬によるダービートライアル、ダンテステークス(G2)(芝1マイル2ハロン56ヤード)は、ラルフ・ベケット厩舎のプライドオブアラスがロッサ・ライアン騎手を背に、18倍の人気薄を覆す圧巻の走りで優勝しました 。一方、断然の1番人気に支持されたザライオンインウィンター(単勝1.7倍)は6着に敗れ、エプソムダービーの勢力図は大きく書き換えられることとなりました 。
この結果は、ダンテステークスがダービーへの重要な試金石であることを改めて証明するとともに、無名の伏兵が一躍クラシックの主役に躍り出るという競馬の醍醐味を凝縮した一戦となりました。
レース展開:プライドオブアラス、波乱を呼ぶ
馬場状態「Good to Firm」で行われたレース 。ザライオンインウィンターは序盤から力みが見られ、道中は行きたがる素振りを見せました 。デヴィルズアドヴォケートが一時大きくリードを奪う場面もありました 。プライドオブアラスは中団、または好位でレースを進めました 。
残り3ハロンあたりからプライドオブアラスは進出を開始。一時は進路を探す場面もありましたが、残り2ハロンで外に持ち出すとスムーズに加速し、先頭へ躍り出ます 。一方、ザライオンインウィンターは直線半ばで既に苦しい手応えとなっていました 。
直線に入るとプライドオブアラスの脚色は衰えず、残り1ハロン過ぎには後続を突き放し、最後はダミサスに1馬身1/4差をつけて快勝しました 。勝ちタイムは2分11秒56でした。当日の天候は「概ね曇り」でした 。
レース展開は、プライドオブアラスのような、鋭い末脚とスタミナを兼ね備えた馬が後方から効果的に追い込める流れとなりました。
ダンテステークス (G2) 結果
着順 | 馬番 | 馬名 | 騎手 | 調教師 | 着差(馬身) | 単勝倍率(現地) |
---|---|---|---|---|---|---|
1着 | 6 | プライドオブアラス | R・ライアン | R・ベケット | 19.0 | |
2着 | 2 | ダミサス | K・シューマーク | J&T・ゴスデン | 1.25 | 17.0 |
3着 | 11 | ウィンブルドンホークアイ | H・クローチ | J・オーウェン | 1.75 | 8.0 |
4着 | 3 | デヴィルズアドヴォケート | B・セイエット | J&T・ゴスデン | クビ | 81.0 |
6着 | 9 | ザライオンインウィンター | R・ムーア | A・オブライエン | 1.7 |
各馬のパフォーマンスと陣営の声
プライドオブアラス(優勝): キャリア2戦目にして、「洗練された力強い走り」でG2を制覇 。サンダウンでの未勝利戦からの劇的なステップアップを見せました 。クラスと距離の壁をものともせず、素晴らしい精神力も披露しました 。ロッサ・ライアン騎手は巧みな進路取りで勝利に導き、同馬の将来性に大きな期待を寄せました 。ラルフ・ベケット調教師にとっても、重要なダービートライアル制覇となりました。陣営の馬が最近目立った活躍をしていなかっただけに、この勝利は一層大きな意味を持ちます 。血統は父ニューベイ(2015年のダンテS勝ち馬 )、母パーネルズドリーム。オーナーブリーダーであるミスター&ミセス・デイヴィッド・エイクロイド氏の生産馬です 。母は1マイル半で勝利経験があり、半兄ペイシェントドリームはエプソムで勝利しています 。さらに遡るとワークフォースの血も引いています 。この勝利により、プライドオブアラスは一躍ダービーの有力候補へと名乗りを上げました。その軽いキャリアにもかかわらず、力強いフィニッシュと血統背景はダービーの距離への適性を示唆しており 、タイムフォーム社は同馬のパフォーマンスを今春の中距離クラシックトライアル優勝馬の中で最高評価(119ポンド)としています 。
ダミサス(2着): サンダウンでのトライアルから着実にステップアップし、2着と好走しました 。中団からしぶとく脚を伸ばしました 。ワドナーンレーシングはエプソムダービーへの出走を明言しており 、負傷療養中のジェームズ・ドイル騎手もエプソムでの騎乗に意欲を見せています 。ダービー戦線に新たな有力馬が加わったと言えるでしょう。
ウィンブルドンホークアイ(3着): 堅実な走りで3着を確保し、これまでの好調ぶりを裏付けました 。ジェームズ・オーウェン調教師は「非常に満足しており、馬の状態も素晴らしい」とコメントしています 。ダービーやその他の中距離G1戦線でも面白い存在となるかもしれません。
ザライオンインウィンター(6着 – 1番人気): 序盤から非常に力み、掛かり気味のレース運びとなりました。直線では見せ場なく後退 。前年8月以来の実戦で、春には頓挫もあった影響が大きかったようです 。エイダン・オブライエン調教師はレース前から「一度使われて大きく変わるだろう」と語っており 、レース後もライアン・ムーア騎手は「まだ前向き」で「大幅な良化が見込める」とコメントしています 。依然としてダービー出走も視野に入れています 。オブライエン調教師は、オーギュストロダンのようにトライアルで敗れた馬がダービーを制した例もあり、ザライオンインウィンターの今回の敗戦は、同馬のダービーでの可能性を完全に否定するものではありません。
レースの意義と歴史的背景
ダンテステークスは1958年に創設され、ヨークシャー調教のダービー馬ダンテにちなんで名付けられました 。エプソムダービーの最重要前哨戦の一つであり、過去にはデザートクラウン(2022年)、エコノミクス(2024年)など11頭のダンテステークス優勝馬がダービーを制しています 。2025年のダンテステークスは、予想外の伏兵をダービーの主役に押し上げ、その「キングメーカー」としての役割を劇的に果たしました。
今後の展望:エプソムダービーの行方
プライドオブアラス: ダービーでのオッズは50倍から一気に4倍まで急上昇しました 。キャリアの浅さは、このパフォーマンスで懸念材料ではなくなったと言えるでしょう 。タイムフォーム社の分析でも「最有力候補の一頭」と評価されています 。
ザライオンインウィンター: ダービーでのオッズは2.5倍から5~6倍へと後退しました 。陣営は大幅な上積みを期待しており、依然としてダービー出走の可能性は残されています 。
ダミサス: ダービーでのオッズは10倍 から12~16倍 程度となり、出走が明言されています 。
ウィンブルドンホークアイ: ダービーでは20~25倍程度の評価となっています 。
その他のダービー有力馬: エイダン・オブライエン厩舎のデラクロワがダービーの1番人気(3~2.75倍程度)に浮上し、英2000ギニー馬ルーリングコートも依然として有力視されています 。ラルフ・ベケット厩舎は、スタンホープガーデンズもダービー候補としています 。ダンテステークスの結果とザライオンインウィンターのパフォーマンスは、エプソムダービーをよりオープンな混戦模様にしました。デラクロワが最有力と見なされる一方で、プライドオブアラスという新たな脅威が出現し、他の馬たちにも十分にチャンスがある状況と言えるでしょう。
ダンテステークス総括
まさにダービーへの重要な岐路となるレースでした。プライドオブアラスという衝撃的な勝者が誕生し、これまでの有力馬に関する評価は大きく揺らぎました。エプソムへの道は興味深い展開を迎え、ダービーは非常に競争の激しいレースとなることが予想されます。
総括:激動の春、新たなスター候補の台頭とクラシック戦線の混迷
今回取り上げた4つの主要海外レースは、それぞれがドラマチックな展開と、今後のビッグレースへの期待を抱かせる結果となりました。
ロッキンジステークスでは、リードアーティストが並み居る強豪を打ち破り、マイル路線に新たなチャンピオン候補として名乗りを上げました。クイーンアンステークスでの再戦は必至で、世代交代をかけた戦いが注目されます。
プリークネスステークスは、ジャーナリズムの不屈の闘志とウンベルト・リスポリ騎手の歴史的快挙、そしてピムリコ競馬場の節目という、幾重にも記憶に残る一戦となりました。ケンタッキーダービー馬ソヴリンティとのベルモントステークスでの対決が実現すれば、3歳牡馬の頂点を決める大一番となるでしょう。
1895デュークオブヨークステークスでは、G1馬イニシェリンが復活の勝利を飾り、トップスプリンターとしての実力を改めて示しました。ロイヤルアスコット、そして新設G1シティオブヨークステークスと、今後のスプリント戦線での主役候補として期待が高まります。レース名の変更という背景も、このレースに新たな物語を加えました。
そしてダンテステークスは、無名の伏兵プライドオブアラスがエプソムダービーの最有力候補の一角へと躍り出るという、競馬の筋書きのないドラマを象徴する結果となりました。本命視されたザライオンインウィンターの敗戦と合わせ、ダービー戦線は一気に混迷の度を深め、本番での激戦を予感させます。
これらのレース結果は、各種牡馬の評価、特にリードアーティストの父ドバウィや、その母父フランケル(ブルードメアサイアーとしての評価も急上昇中 )、プライドオブアラスの父ニューベイといった種牡馬たちの価値を改めて浮き彫りにしました。
全体として、2025年の春の主要海外レースは、既存の勢力図に揺らぎが見られ、新たなスターホース候補が次々と登場するエキサイティングなシーズンとなっています。ロイヤルアスコット、アメリカ三冠最終戦、そしてエプソムダービーと、これから迎える頂上決戦から目が離せません。
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